神戸製鋼所新本社ビル

神戸を代表する企業の一つである神戸製鋼所。神戸製鋼もしくはコベルコの愛称で親しまれており、グループ連結売上高は市内に本社を置く企業の中でダントツの約1兆7000億円。まさに神戸経済の屋台骨を支えている大企業です。日本4大鉄鋼メーカーの一翼を担いますが、新日鉄と住友金属の経営統合により今後は3大メーカーの一つとなる模様です。

かつて神戸では神鋼の良きライバルであった川崎製鉄は日本鋼管と合併してJFEスチールとなり、新日鉄に次ぐ鉄鋼メーカーとなりましたが、本社は神戸から東京へと移ってしまいました。

神鋼も新日鉄、住金との連携を結んでおり今回の統合劇に飲み込まれる懸念もありましたが、これら巨大メーカーと比較すると鉄鋼事業の比率が低く、銅、アルミ、産業機械、エンジニアリング等の複合経営を特徴している他、鉄鋼事業も特殊用途鋼材に特化することで独自戦略を貫いており、あくまでも独立経営を続けるという意気込みが感じられます。市内でも神鋼不動産や神鋼ケアライフ、神鋼環境ソリューション等の関連会社が躍進しており、多角経営によるリスク分散が見て取れます。

そんな神戸製鋼がHAT神戸内の脇浜海岸通に新・神戸本社ビルを建設すると発表しました。



現在の神戸本社は関連会社の神鋼不動産が所有する神鋼ビルに神戸製鋼が賃借する形で入居していますが、賃貸契約期限が2013年3月に切れることを機に、周辺エリアに分散しているグループ各社を集約できる新本社ビルをHAT神戸の同社所有地に建設するとしています。

新本社ビルの予定地はHAT神戸の脇浜海岸通2丁目。南はレクサスHAT神戸、西はケーズデンキHAT神戸店に隣接した遊休地です。



建設予定地ではすでに地質調査のボーリングが開始されています。2013年3月の稼動を目指してまもなく着工されることでしょう。

＜神戸製鋼所 神戸新本社ビル 概要＞

場所：神戸市中央区脇浜海岸通2丁目
敷地面積 : 約6,700㎡
規模：地上9階 高さ約50m 延床面積 約22,000㎡
入居社数 : 神戸製鋼グループ12社
就業人約 : 約1,400名

神戸製鋼の神戸本社ビルを巡っては震災後、川鉄や神鋼の工場跡地を復興のシンボルとして再開発を行って誕生した東部新都心HAT神戸内に同地区のランドマークとして当初、地上30階 高さ140m 延床面積6万㎡という規模を想定。元同社会長及び神商議会頭の水越氏(当時同社専務)が委員長となって新神戸本社ビル建設検討委員会が設立されました。その後、具体的な実施設計が進み、以下の規模を決定していました。

＜神戸製鋼所 神戸新本社ビル 旧案概要＞

規模：地上25階 高さ約124m 延床面積 約50,000㎡
就業人約 : 約2,400名
総事業費：約170億円

私の記憶が正しければ大阪中之島の関電ビルを彷彿とさせるデザインだったと思います。

しかしながらその後の経済状況の変化により企業の東京への一極集中が加速化。同社も1999年には東京本社を品川のONビル(地上21階)に集約して強化。神戸の新本社ビル計画は縮小と延期が発表されました。着工は2000年にまで延期されましたが、その後も着手される気配はなく、予定地にはブルメール、ケーズデンキ、レクサス等の商業施設が次々と開業したので、もはや神鋼の神戸本社計画はすでに断念されたのだと思っていました。



最終的に超高層ビルと成り得なかったことは残念です。しかし新本社ビルが建設されることは歓迎すべきことです。神鋼本社ビル竣工によってHAT神戸の業務研究地区がようやく完成を迎えることになります。

今後も同ビルの着工から竣工までを追っていきたいと思います。

ちなみに大企業の本社が超高層ビルであるか否か、自社ビルなのかテナントビルに入居しているのか等を調べてみると意外に面白いものです。いずれ記事で取り上げてみたいと思います。