姫路

姫路 -既存商業施設・周辺地域への波及-

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姫路市の都心再開発・再整備計画であるキャスティ21の進捗に伴い、姫路駅の高架化、旧駅ビルの解体、新駅ビルの新設、駅前広場の再構築と大手前通りのトランジットモール化、コアゾーンに複数の再開発ビル建設等が続き、姫路駅周辺は劇的な変化を遂げました。この大きな流れは周辺エリアの商業施設や商店街をも飲み込みました。これを勝機と捉えて積極投資を行う施設、煽りを受けて閉店に追い込まれる施設とその対応・状況は一様ではありません。

駅前から姫路城を結び550mを南北に貫くみゆき通りは姫路一の賑わいを誇る商店街です。駅前整備に伴い、商店街もリニューアルが行われました。

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十二所前線以南のみゆき通りの160mに渡り、老朽化が目立ったアーケードや路面を完全に改装しました。姫路城をモチーフとした和のデザインで統一。正面には姫路城大手門をイメージしたエントランスゲートも設置。

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国道2号線の上にも和風の屋根が掛けられた他、エントランスもリニューアル。

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改装によって姫路城への参道のような雰囲気に生まれ変わりました。また通り沿いでは一部のビルは建替えを進めており、商店街にも再開発が熱気が波及しているようです。

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駅や新駅ビル、新しく整備された駅前広場と直結している地下街も大規模リニューアルと再編が行われ、「グランフェスタ」として生まれ変わりました。

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約7,000平方メートルに51店が集う複合商業施設として地下街としてもかなりの規模です。

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駅ビルに新設に伴って高架下の商業施設も改装。駅エントランスの一番目立つ場所に観光案内所が設けられています。

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高架下も駅ビル「piole(ピオレ)姫路」の一部「ヤング館」として稼働。

駅に直結する地下街、商店街は駅前再開発に連動して一新されたことにより、新たに姫路を訪れる観光客に与える印象も大きく異なることでしょう。

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一連の大型開発に対して既存の商業施設はどう対応しているのでしょうか。姫路市中心部では最大の商業施設である山陽百貨店。5億円を投じて昨年から大規模改装と増床を実施し、この荒波を乗り切ろうとしています。

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以前から業績不振に喘いでいたヤマトヤシキ姫路本店。「piole(ピオレ)姫路」の開業の煽りをまともに受け、今や会社自体が債務超過に陥り、私的整理の一種である「事業再生ADR」による経営再建の真っただ中にあります。今後、投資ファンドの下で老朽化した姫路店を大幅改装し、巻き返しを図る予定です。

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ジャスコの起源となり、1987年から現在まで姫路フォーラスとして稼働中の商業ビルについては親会社のイオンリテールが閉店を決定しました。同店は東館と西館に分かれていますが、西館の建物を所有するエミス(旧・山陽企業)はビル内に映画館を運営しています。同社は駅前に関西初の4DXを採用したシネコンを中核とする大型商業施設「テラッソ姫路」を開業したばかり。西館の映画館の閉鎖も検討している他、老朽化した同ビルの活用についても方針は未定です。

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大手前通り沿いには姫路OSビルがあり、ここにも3スクリーンを備えた映画館があります。テラッソに開業したシネコンの影響がどれくらいのインパクトを与えているのかは分かりませんが、古い劇場はシネコンには太刀打ちできません。

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駅周辺の大規模な再開発と平成の大修理によって生まれ変わった姫路城を擁し、姫路の街はまさに過渡期にあると言えます。まだこれから新たな再開発ビルの建設も予定されており、更に商業床も増えます。新駅ビルや再開発ビルの誕生は周辺地域を巻き込んで新たな再開発や既存施設の改装を誘発し、競争力のない施設は閉鎖に追い込まれ、跡地が更に再開発されるという開発循環期を生み出します。姫路はまさにそのシナリオ通りの状況へと移行していると言えるでしょう。古い街が失われてしまう事に異を唱える意見もあるかとは思いますが、再開発の連鎖によって街には活気が生まれ、人が集まるようになり、街に勢いが出ると更に開発が進むという好循環ができます。街とは常に動いていないと衰退していく生き物のようです。姫路は姫路城修理と再開発の時期がシンクロしたことで相乗効果を得た他、外国人観光客の増加も背景に街の再生を図る最大で最後の機会をうまく捉えていると言えます。岡山と神戸・大阪に挟まれ、県都でもない地方都市の姫路が生き残っていくには世界遺産・姫路城を活用して外から人を呼び込みつつ、域外への流出を最小限に留めるしか方法はありません。魅力的な中心部への改造は姫路にとって必至であり、明確な危機感と目的を持って、開発に取り組んでいる姿勢が見えます。

姫路で起こっている事は将来的にそのまま神戸に置き換える事が可能な気がします。ただ神戸には姫路城のように明確なシンボルがありません。海、山、異国情緒等、的を絞り切れていないので市の開発の方向性も総花的でぼんやりとして結局、市自身も何がしたいのか分からなくなっているのが現実です。姫路の開発手法に全く問題がないとは言いませんが、神戸よりは遥かに何をすべきかをはっきり認識しているという差が表れているのはではないかと思います。



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POSTED COMMENT

  1. 夢想家 より:

    最近知ったのですが、あの北陸新幹線で沸く金沢(46万人)より姫路(53万人)のほうが人口多いんですね。
    金沢以外でも姫路より人口の少ない県庁所在地も結構有りますから、もっと発展する余地は有るかもしれません。
    ただ取材の写真を見る限り、人が少ないですね。曜日や時間帯にもよると思いますが、特に駅前の横断歩道や地下街など、一昔前の正月の都心かと思えるほどです。
    また一般車が規制されているせいかもしれませんが、バスだけが目立つ大通り。
    デパートが苦戦するのも頷けます。姫路城景気(?)が落ち着いたときに、大丈夫かなとちょっと危惧します。
    立派な器はできました。ただそこに盛り付けられた料理が「姫路城」というメインディッシュだけでは、いづれ飽きられます。今後計画されてる施設や政策が、さらに彩りを添えてくれることを期待します。
    私自身、久しく姫路には行っておりませんでしたが、今回の一連の記事を拝見し是非近いうちに自分の目で確かめたくなりました。

  2. とま より:

    姫路が再開発されてから近郊住人は神戸や大阪に買い物に行く回数が減ったと聞きます。
    西宮や宝塚や尼崎の人の多くは三宮でなく大阪に行ってしまいます。
    神戸は県都な訳ですから大阪のベッドタウンに成り下がることなく姫路以上の再生を果たしてほしいですね。
    その為には選択と集中ですよ。
    神戸市は優し過ぎて色んな意見を聞きすぎるとも思っています。
    それが再開発を遅らせている一因にもなっているのではないでしょうか。

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