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P&G移転後のRICとその移転先について考える

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今回は六甲アイランドから市内の別のエリアへ移転を予定しているP&G移転後の六甲アイランド、そして同社の移転先について考えてみたいと思います。このブログを始めて、実は六甲アイランドを取り上げるのは今回が初めてとなります。

六甲アイランドの業務地区にある中核企業として存在する米国のグローバル企業P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)の神戸テクニカルセンター。地上30階 地下1階 延床面積43,500㎡の超高層オフィスビルです。1993年の竣工以来、日本本社としての機能と研究開発部門を備え、約1,500人の従業員が働く企業ビルです。国際企業らしく外国人従業員の数も多く、六甲アイランドが国際都市として機能する為の要的な存在を果たしてきました。しかしながらアジアの中心であった日本の経済がこの20年間停滞し続けたことを受け、同社はより成長力と将来性の高いアジア地域に対して、地理的にも、税制上的にも、環境的にも有利なシンガポールにアジアのグローバル拠点としての機能を神戸から移管することを決定。すでに研究開発部門やアジア事業の戦略立案部門の移管を開始し、現在、建物の3割は使用されていない状況です。もはや日本本社の機能だけでは建物規模が不釣り合いとなり、同社はビルの売却と本社の移転を検討。昨年9月までに移転先を決定するとしていましたが、年が明けた現在も未だ沈黙を保ったままです。

もしP&Gが六甲アイランドを去った場合、地域に与えるインパクトは計り知れません。

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六甲アイランドにはグローバル企業の社員とその家族の住居の受け皿として外国人向けの高級賃貸住宅が多く存在します。RICセントラルタワーもそんな賃貸マンションの一つです。地上32階 総戸数150のタワーレジデンスでジ・アンタンテと銘打ち、プール付のフィットネスクラブやチャイルドケア施設、日本庭園まで備える高級住宅です。短期滞在用のサービスアパートメントにも対応しています。P&Gの外国人社員の多くも利用してきたようです。シンガポールへの部門移管と日本本社移転後、利用率の低迷や空室率の上昇が懸念されます。また建物低層部の商業施設や周辺エリアに存在する飲食店の売上に対する影響も不安視されています。

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六甲アイランドのシンボルロードであるリバーモール。近未来的な街中に外国人の子供達がはしゃぎ回る姿がこれまでの日常でした。P&Gの移転後、賑わいの低下が懸念されますが、この他にもエリアには問題点が複数存在します。

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六甲アイランド内では最大の複合商業施設である「Rink神戸ファッションプラザ」。地上19階 地下2階 延床面積91,502㎡の規模を誇り、UFOが着陸したような特徴的なデザインの建物内には物販・飲食の店舗、シネコン、美術館、多目的ホール、ホテルが備わります。エリア初の元祖シネコンであったMOVIX六甲を中核とした商業フロアは、週末を中心に島内だけでなく阪神エリアから広く集客していましたが、近年、阪神地域に次々とシネコンを併設した巨大なショッピングモールが進出。競争の激化によってMOVIX六甲は採算が取れずに撤退。その後、一時的に映画館が復活するもやはり売上は低迷し敢無く閉館。集客の要を失ったファッションプラザの物販・飲食フロアは賑わいを失い、昨秋、1-2階と3階の一部を除く施設の大部分を閉鎖しました。ホテルと美術館は稼動を継続しています。

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神戸初の外資系高級ホテル「神戸ベイ・シェラトンホテル&タワーズ」。地上21階 276室の高層ホテルで、昨年、ホテル運営権及び土地と建物がロースターグループからホテルニューアワジに売却されました。神戸の都心部でホテル数が増加。大阪市内も次々と新しい外資系ホテルが進出し、競争激化の中、経営不振に陥っていたといいます。

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ニューアワジはホテル名称の変更は行わずに、黒字化を目指して現在、改装を進めています。再生計画の目玉は天然温泉。現在、敷地内で温泉の採掘工事が行われています。シェラトンブランドに和のテイストをプラスし、きめ細かなもてなしを提供するシティリゾートホテルへと生まれ変わる予定です。

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進出企業の島外移転や撤退による商業・業務地区の衰退が懸念されている六甲アイランド。なし崩し的な様相を呈し始めています。神戸市は六甲アイランド以外にも市内の複数地域にこうした新都心形成を進めてきましたが、それらのほとんどが現在、衰退傾向にあります。日本経済の縮小により、都市のトレンドは拡大から都心回帰に向かっており、こうした事態はすでに不可避の状態です。以前と全く同じ形に戻そうとする努力をしても、うまくはいかないでしょう。地域の特色を活かした再生への道を見つけるより他はありません。六アイは良質な住宅地区としては認知度が高い為、新規に大規模分譲マンションが次々と建設されており、居住人口はむしろ増加中です。また、湾岸線や港に直結したアクセス性の良さから物流拠点としてこの島の重要性も揺るぎないものになっています。中心街区の再生にはこうした背景と特色を踏まえた上でのビジョンが必要になってくるのではないでしょうか。

商業施設は暫くは現状の必要最低限の暫定利用を維持し、新たなデベロッパー誘致による開発を進めることで島の居住人口増加を促し、必要に応じて、商業施設の順次改装を進めていけば良いと思われます。中心業務地区の企業数が減少したとしても、島の外周エリアに進出する企業はひしめき合っています。こうした企業立地を活かさない手はありません。こうした企業の本社機能や拠点機能の誘致等を行ってはどうでしょうか。

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次にP&Gの移転先ですが、六アイには現本社の近接地に神戸ファッションマートという巨大な複合オフィスビルが存在します。島外移転という事でこの建物への入居は無いようですが、六アイにとってはこの建物への移転が最も望ましい選択肢ではなかったかと思われます。ただこの建物は会議場やホール等が備わっている為に不特定多数の人間の出入りが日常となっている他、SOHO等、小さな企業も多く入居しているので、P&Gのような企業の立地には不向きだったのかもしれませんね。

島外且つ神戸市内での移転を考慮すると、やはり最も移転先として相応しいエリアは都心部が考えられます。この場合、本社機能にどれだけの従業員が残るのかという点がポイントになってきます。以前の1,500人体制が仮にもし1,000人規模になったとしても、相応のオフィス面積が必要とされます。これを一棟の建物で賄うのか、それとも分散させて近隣エリアのオフィスに分かれて入居するのか。これまで同一建物内で完結していた業務が複数に分散されると、効率性が悪くなる可能性があります。市場ではオフィスの集約を進める企業が増加しています。問題は1,000人クラスを収めることができる空室を持つ建物が存在するのかどうか。

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エリア別に考えていくことにしましょう。まずは三宮駅前エリア。利便性やアクセス性は抜群です。ネスレジャパンや日本イーライリリー等の大手外資系企業もこのエリアに本社オフィスを構えています。P&Gの移転先としては申し分のない立地でしょう。問題は人気エリアだけに空室の少なさです。エリア内に大型ビルは複数存在しますが、これらのビルでもP&Gを抱えられるだけのキャパシティを持つ建物自体は限られてきます。ましてや人気エリアだけにそれだけの空室が無いのが現実でしょう。

エリア内の大型オフィスビル

-日本生命三宮駅前ビル
-三宮ビル南館
-マークラー神戸ビル
-神戸国際会館
-明治生命神戸ビル
-ヒューリック神戸ビル
-アーバンエース三宮ビル
-三宮セントラルビル
-オリックス神戸三宮ビル
-三宮インテス/三宮プラザビル
-三宮センタープラザ
-ニッセイ三宮ビル



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次に駅前エリアの東南に広がる磯上公園周辺エリア。このエリアにも大型オフィスビルが複数あります。そして駅からは多少離れている為、空室率も駅前エリアよりは高いはずです。まとまったオフィスフロアの確保には適した立地です。六アイ立地時と同様にミュージアムタワーのような高級賃貸タワーレジデンスも近隣に存在します。

エリア内の大型オフィスビル

-三宮国際ビル
-三宮グランドビル
-三宮中央ビル
-神戸商工貿易センタービル
-ワールド三宮ビル
-キリン神戸ビル
-コンコルディア神戸



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続いて旧居留地。大型オフィスビルも多くグローバル企業の立地には相応しいエリアです。ただどこまでの空室があるのかという点で疑問符が付きます。

エリア内の大型オフィスビル

-第一生命三宮ビル
-KDC神戸ビル
-三宮中央ビル
-クリエイト神戸
-神戸朝日ビル
-明海ビル
-海岸ビル
-三井生命三宮ビル



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都心立地の最後はハーバーランド。ハーバーランドセンタービル、ダイヤニッセイビル、神戸情報文化ビル、クリスタルタワー等の高層オフィスビルに賃貸フロアが存在します。このエリアでもタイミングが合えばまとまったフロア確保が可能だと思われます。P&Gが移転してくれば街の再生、活性化に大きなプラスとなるのではないでしょうか。

兵庫県知事の井戸氏は先日、企業立地支援の為に産業集積条例を改正する方針を明らかにしました。来月の県議会に改正案を提出するようです。これは今年、開業するJR大阪駅北側の大規模再開発事業であるグランフロント大阪に高層オフィスビルが竣工する事や大阪都心エリアで複数のオフィスビル計画が進行している事を受け、神戸や県内から大阪へのオフィス流出を食い止める為の狙いがあるようです。具体的には三宮等の中心市街地への進出する企業に助成金を設ける制度を検討するようで、P&Gの都心進出とこうした制度の整備によって神戸のオフィス街に新たな需要が生まれることを期待したいですね。

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都心地区ではフロアの確保が難しい場合、ポートアイランドも一つの選択肢になってくる可能性もあります。宿泊施設も多く来客対応にも対応できます。民間の賃貸オフィスビルは少ないエリアですが、神戸市の第三セクターが運営するオフィスビルは一定数存在します。P&Gが将来的に医療分野にも進出することを検討している場合、医療産業都市への進出することは同社にも地域にもプラスです。

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P&Gの移転が遅れているのはもしかしたら移転先との交渉や移転先既存テナントの退出に時間が掛かっている事が原因かもしれません。さて、同社移転後の現本社ビルについてですが、この巨大な建物を購入する企業もしくはファンドが現れるのでしょうか。勿論、売却交渉にはそれなりの目処が付いた上での移転計画を進めているものと思われますが、売却後、どんな企業が入居するのかにも六甲アイランドの業務地区の方向性が左右されるのではないでしょうか。進出企業によっては建物を解体して、再開発する可能性もあります(デザイン的にも優れたオフィスビルなのでこの可能性はあまり考えたくはないですが)。

既存の島内進出企業の拠点整備を後継案の一つとして前述しましたが、やはり理想は神戸市外から外資系企業が進出してくれる事が一番だと思います。神戸を拠点立地として評価する外資系企業は多いはずですし、勤務する社員にも神戸の環境は高評価を得ています。六アイは特にそうした部分に特化して開発されてきたので、企業には進出し易い条件が整っています。問題はこれだけの規模の建物を所有、稼動させる事ができる体力のある企業に限られてくるという事です。神戸市が介入して、進出企業誘致支援も必要ではないでしょうか。タイミング的には法人税減税と円安が後押ししてくれると海外企業の進出する環境はより整いやすくなります。

今回のP&G移転は日本経済そして神戸に対する警笛です。日本はグローバル企業の活動拠点としては居心地が悪いと感じさせてしまっているのです。これは制度上や環境上での問題なので、神戸市だけで対応するには大き過ぎる課題かもしれません。しかし海外で外国企業誘致を成功させている都市は国の支援制度以上に自治体が努力しています。医療産業都市への企業立地が進んでいる背景には市のソフト、ハード両面での施策が奏功しているからです。今回の件をきっかけとして、外国企業誘致も今以上に積極的に進めていくべきではないでしょうか。



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POSTED COMMENT

  1. 淀屋 より:

    衝撃的な結末、東京への移転ということにならないことを祈っています。
    理由はアジア本社との交通利便性と日本の取引先との関係重視です。

  2. しん@こべるん より:

    淀屋さん

    それは心配ないと思いますよ。関空からもシンガポール直行便は多いですし、これまでの経緯から関西の取引先も多いです。東京に出るメリットはP&Gの場合はあまりありません。大阪に戻ってしまうという可能性は無きにしもあらずですが・・・。

  3. hcthet より:

    神戸空港内は…ありえませんねorz

  4. MSA より:

    三宮中心部やハーバー、ポーアイから神戸空港までの近さはアジア諸国との物流が必要な企業には大きなメリット持たせることができると思います。神戸空港は旅客で苦戦してますが、せっかくの海上だから24時間にして貨物便をたくさん飛ばして、貨物ハブ空港で大成功してる那覇空港経由便増やせば、たとえは大阪市内から伊丹や関空使うよりはるかに早いと思います。

  5. まさみつ より:

    やはり、地方に権限がないから日本経済が低調になるとこういう問題が日本全国で起こるんですよね。・・・シンガポールなんて淡路島ぐらいしかない小さな国だけど、国の意思決定がスピーディーだから活気がある。

    もう東京一極集中の時代が終わったことを認識して、もっと地方分権を進めていかないと、日本全体が倒れてしまいますね。

  6. 翔@KOBE より:

    分散している神戸の都心というか都市機能を集約できる機会という意味で三宮、あるいはハーバーに移転だといいなぁって思います。空港や港も遠くないですし。あとはちょっと遠くなるけど西神の工業団地とか。

    東京一極集中の時代ではないとはいえ、やっぱり東京東京なとこがあると思うので、今後の動きに注目ですね。神戸にある大きな企業の1つですので、できれば神戸に残ってほしいですが。

  7. 旅人 より:

    関西は大阪一極集中ですよね。
    現在関西の資本投入はほとんど大阪に向いています。

    神戸空港から国際便を飛ばすとか便数の制限を緩和するとかしないと近い距離だけに関西の中で足の引っ張り合いです。
    せっかく医療産業都市構想が進んできているんですから。

  8. tam より:

    六甲アイランドは作られた経緯からか,住民は良質な住環境を志向しているようです.
    阪神高速湾岸線延伸による六甲アイランド-ポートアイランド間のバス路線によって,ポートアイランドに進出した企業に勤務する人の住宅供給を行う場所にできれば一石二鳥です.
    ただ,肝心の阪神高速がいつになることやら.

  9. sirokuma より:

    ポーアイも六アイも悪くは無いんですが回遊性に乏しい街です。
    医療産業都市構想で将来性はポーアイにあるように思えますね。
    実際、理化学研究所の誘致に成功した効果はどんどんあらわれて来ていますね。でもポーアイも六アイ街の活性化と言う事になるといきなり???です。立地条件などを考慮すると、この島を民間に自由に再開発させたら大きく変わるんですけどね。
    残念ながら、この島の将来を閉ざしているのは都市計画・地区計画による様々な規制と人工島であるがゆえのしがらみ、縦割り行政による弊害だと思います。
    ただこれらはトップの考え一つで歯車を大きく動かすことが出来るのだと思います。
    今年は市長選の年、仕切り直しのチャンスの年になりますね。

  10. 匿名 より:

    hcthetさん

    新たに土地を購入して建物を建設するという選択肢は無いかと思われます。

    MSAさん

    そうですね。神戸空港の持つポテンシャルは非常に高いのに運用制度に規制されて有効活用されていません。伊丹・関空と今後どう調整していくのかが課題です。

    まさみつさん

    シンガポールは小さな国だからこそ統率が容易な面もありますが、やはり意思決定の速さと実際の行動が効果として表れていますよね。日本は利権やしがらみが複雑に入り組んで物事がなかなか進みません。

    翔@KOBEさん

    ハーバーへの移転はエリア活性化に大きく貢献するのではないかと思います。たぶん神戸には残ると思います。

    旅人さん

    その通りですね。大阪への一極集中に歯止めを掛けなければなりません。三空港の活性化にはやはり経営統合した上で、機能の分散と適合の振り分けが必要になるかと思います。

    tamさん

    13兆円の補正予算の中で湾岸線延伸の何らかの道筋が付けられたらと思います。

    sirokumaさん

    六アイは行政と積水ハウスの権限が強いですね。ただ今後は広くデベロッパーを募る等、これまでとは違った対応で臨まなければ島の衰退は避けられない環境です。どこを見ても日本の縮図のようですね。

  11. え? より:

    P&G移転は無いでしょう。詳しくは知りませんがあれは自社ビルかと思います。わざわざレンタル賃料まで払って移転する必要も無いかと。

  12. しん@こべるん より:

    え?さん

    P&G現本社売却と三宮移転は決定事項です。詳細は下記リンクを参照下さい。

    http://koberun.blog56.fc2.com/blog-category-63.html

  13. 熊谷グミ より:

    積水ハウス六甲アイランドマンション手抜き工事隠蔽
    4月15日発売フラッシュで隠蔽問題が暴露
    6月~解体工事着工か?

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