特集・シリーズ

今後の神戸のオフィスマーケットの展開 大中のプロジェクトが目白押し 今後の新規開発にも期待高まる



この10年の神戸都心の不動産マーケットを振り返ってみると、タワーマンションの建設ラッシュがひと段落付いた頃から、訪日客急増に伴うビジネスホテル建設ラッシュに移行し、更には空室率逼迫に伴って、オフィスビル開発へと移行してきました。

事業用不動産サービスの分野世界最大手のCBRE(シービーアールイー)の調査によると、神戸の22年6月期のオフィス空室率は3.9%と上昇傾向にあるようです。しかし数値としは、主要都市と比較しても遜色はなく、突出して高い訳ではありません。

震災後の復興ラッシュによって大幅にオフィス床が増えた後、金融機関の統廃合や不景気も手伝って一時は17%台まで上昇した空室率は、コロナ前には空前の1%台まで下落する程、オフィス需要は逼迫していました。

そこからの上昇が2%に抑えられているので、コロナ禍においてもオフィス需要は底堅い状況が継続していると言えます。これまでの常識では5%が需給のボーダーラインとされてきました。



現在、神戸は三宮の再開発に伴って、過去15年では類を見ないオフィス開発ラッシュが起きています。その皮切りは21年4月に完成した神戸三宮阪急ビル。4-15階にオフィスフロアを備えています。コロナ禍真っ只中の開業となった為、満室での稼働開始にはなりませんでしたが、徐々に入居は進み、現在はほぼ満室です。



続いて新港町のウォーターフロント再開発エリアに完成したのがジーラインオンアワーズビル。ジーライオングループの本社が最上階2フロアに入り、4-8階の5フロアが賃貸オフィスですが、こちらも当初はテナント集めに苦戦していたようですが、現在はこちらも満室のようです。



続いて今年2月に完成した関電不動産神戸三宮ビル。三宮中央通りの新ランドマークですが、3-12階が賃貸オフィスです。こちらはまだ数フロアのみのテナント入居に留まっています。しかしマーケットは活発化していますので、希少な新築ビルですので、多少の時間は掛かっても前述の2物件同様に空室は埋められるものと思われます。

ここまでは竣工済みの新築ビルです。



関電不動産神戸三宮ビルの近隣で建設が進む大和証券神戸ビル。3-10階が貸室となる新築オフィスビルは、神戸市のオフィスビル建設促進制度認定の第1号となりました。来年11月に竣工予定で、1年後に新たな新築ビルが誕生します。



来年2月に着工予定なのはWDB三宮ビル。旧居留地内で新規開発されるオフィスビルとしては約20年ぶりかと思われます。ただこのプロジェクトは自社ビルになるのか、賃貸フロアな供給があるのかは現状定かではありません。



同じく旧居留地内で開発される神戸旧居留地91番地プロジェクトもオフィスビル建設促進制度第2号に認定されました。神戸土地建物株式会社が地上11階 地下1階 延床面積約 7,771 平方メートルのオフィスビルを建設する計画で、完成予定は2025年4月末です。

 



自社ビルですが、ジーライオンアワーズビルと同じく新港町エリアに完成した通販大手フェリシモの新本社ビル。同社が長年入居していた神戸朝日ビルに二次空室が生じましたが、これもすぐに埋まる程、マーケットの需要は底堅いようです。

神戸三宮阪急ビルを除けば、これらの新築ビルは床面積が1万平方メートル強までの中規模ビルですが、今後、大規模再開発による大型ビルの供給も予定されています。



雲井通5丁目再開発のバスターミナルI期ビルは10万平方メートル級の大型ビルですが、このビルの11-22階を三菱地所が保有するオフィスフロアとなります。数万平方メートルの床が供給されるものと思われます。27年末の完成予定です。



そして市役所2号館跡地にオリックス不動産他が計画する複合ビルには、6-14階の9フロアに神戸でも最大級のフロア面積を誇るオフィスが生まれる予定です。開業は2029年。



そしてJR三ノ宮新駅ビルにもオフィスフロアが備わります。

今後も老朽化したビルの建て替えに伴う再開発やオフィスビルの供給は続く傾向に向かうでしょう。オフィスビル建設促進制度の利用も有利に働くものと思われます。神戸空港国際化と発着回数増加、大阪湾岸道路西伸部開通に等、神戸のビジネスポテンシャルを高めるプロジェクトも目白押しの中、今後のマーケットは明るさを増していく事になるでしょう。都市間競争を勝ち抜くには、更に都心の開発によるビジネス環境の向上が必須です。

関連記事
特集・シリーズ

神戸市が令和4年度の予算案を発表 Part1 三宮駅周辺における重点投資項目 駅前南側でプロジェクトが続々始動

2022年2月23日
こべるん ~変化していく神戸~
今年も2月16日(水)に久元市長が会見を開き、令和4年度の神戸市予算案について発表を行いました。世界各国で経済活動の再開が進み始め、 …
特集・シリーズ

神戸市営地下鉄と阪急との相互直通運転を逃した神戸市政の失態と先見性を持ったリーダーの必要性について

2021年7月15日
こべるん ~変化していく神戸~
昨春、神戸市と阪急電鉄が検討してきた阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互直通運転について、「投資に見合う効果を見込めない」と …

POSTED COMMENT

  1. S.Y. Kobe より:

    オフィスビルの計画や着工がここ数年急増してきたことは大都市神戸の反転攻勢が本格化してきた証ですね。そして神戸復権のキーワードは何といっても ‘交通インフラ‘ です。交通インフラは「道路・鉄道・港湾・空港」に区別されますが戦後の神戸経済を牽引し、企業集積の基となった神戸港に加え、基幹高速道路網の一部である大阪湾岸道路西伸工事の本格化や神戸国際空港の実現となれば今後の神戸経済を牽引出来るのは交通インフラ以外に無いと思います。

    神戸のオフィスビル需要は札仙広福などのように生保・損保が貸ビルを建て大企業の支店営業所が入居するいわゆる支店経済都市とは異なります。支店営業所需要は国内都市ネットワークの上でブロック拠点都市に劣る事は明らかです。神戸としては市内に本社もしくは重要拠点を自ら構える企業を集積する必要があります。外資系企業の日本法人なども有望なターゲットであり、都心至近の国際空港や国際港湾、国土幹線高速道路網こそが企業集積を促進出来ます。

S.Y. Kobe へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です