今週22日に久元神戸市長が行った会見にて、神戸市によるウォーターフロントグランドデザインの策定が発表されました。内容的には既に当ブログでも取り上げた神戸市港湾局が作成した予算案資料に示されていた構想やイメージを公式化したという形ですが、一部局の案から市の基本方針に格上げされた格好です。
ウォーターフロントでは、メリケンパークやポートタワーのリニューアル、新港町エリアの再開発が進み、神戸を象徴する港の活性化に活気が生まれつつあります。
神戸市は矢田前市長時代の2011年にウォーターフロントが目指す将来像として「港都・神戸 グランドデザイン」を策定し、主に新港突堤とその基部一帯における再開発の方向性を示しました。
その内容は、現在、進行している再開発とは相違している部分はありますが、交流人口を増やし、賑わいをもたらすという基本路線は堅持されています。
そして2022年には策定されたグランドデザインに修正を加えた「神戸ウォーターフロントビジョン」を発表。
今回のグランドデザインは更にこれまでの内容から進化させると共に更に一歩踏み込んだプランにブラッシュアップされています。
海、山、空を感じ、みなとまちの歴史と未来をつなぐ、新たな価値創造」を全体コンセプトに変えてとし、「移動・回遊」、「緑とオープンスペース」、「夜景・ナイトタイムエコノミー」、「民間投資によるまちづくり」という4つの戦略を軸としています。
計画としては、ウォーターフロントを中突堤、京橋、新港突堤西という大きく3つのエリアに分け、それぞれに機能と役割を持たせる内容です。
中突堤エリア

中突堤エリアでは、「みなとまちを感じるエンタテインメント空間」をテーマとし、以下のプロジェクトが盛り込まれました。
1️⃣回遊性の向上: 高浜岸壁と中突堤を結ぶ海上デッキを建設
ハーバーランドとメリケンパークの回遊性向上については、モザイク2階とかもめりあを結ぶデッキが稼働中ですが、海上デッキを設ける事により、ダイレクトに二つのエリアが繋がり、往来が更に増す事が予想されます。
また観光クルーズ船の船着場が海上デッキの南側に移設される事によって、デッキの内側に内海ができ、ここで憧れの巨大噴水ショーが常時開催できる場が生まれます。ノートルダム神戸にも噴水ができましたが、残念ながら観光客を呼び寄せられるような規模ではありませんでした。
ラスベガス、ドバイ、マカオ等、世界に名を馳せる観光地では巨大な噴水ショーが見物になっています。世界クラスの噴水ショーを中突堤で展開して欲しいですね。
2️⃣中突堤中央ビル再整備
既に南館が解体された中突堤中央ビル。北館についても解体が計画されています。両館の跡地で進められる再開発では、商業・観光拠点施設の建設が想定されています。ノートルダム神戸が建設されたかもめりあ横の土地はミッドポートプロジェクトとして、ユーミンのプロデュースするホテルと商業施設から構成される建物が基礎工事まで進んでいましたが、リーマンショックで計画が頓挫しました。この幻の計画を受け継ぐ内容で、中突堤中央ビルの再開発が進められる事に期待です。
3️⃣かもめりあ周辺再整備
中突堤中央ターミナル「かもめりあ」とその背後にあるロータリーと駐車場を含めると、かなり大きな敷地となる為、中突堤周辺の開発用地として貴重な存在である事を当ブログでも幾度となく述べてきましたが、ようやくこの開発が本格的に検討されるようです。既に隣接して、ラスイート神戸ハーバーランドが立地していますが、新たなシティリゾートホテルの開発用地として、うってつけなのではないかと思います。
京橋エリア

京橋エリアでは、「回遊・賑わいをつなぐウォーターフロントのエントランス」をテーマとし、既存の船溜まりを埋め立てる事で海岸線を南下させ、メリケンパークと新港エリアの距離を縮める共に、ウォーターフロントに生まれる新たな緑地に集客施設を誘致し、旧居留地と親水エリアのエントランスゾーンとしての機能を持たせる計画です。
ここに生まれる土地には神戸市が検討を続けるLRTの運行が構想されています。ウォーターフロントと都心の間のアクセスと回遊性の課題解決が叫ばれてきましたが、LRTはこの問題を解消する切り札です。
新港エリア

現在、最も再開発が顕著に進められている新港地区。第1・2突堤やその基部の再開発が完了し、今後2年でマリーナの整備も行われます。このエリアでは「リゾート気分をあじわえる空間/新たな感動や熱狂が生まれる場所」をテーマとした整備・開発が進められます。
1️⃣海軍操練所遺構を活用した施設導入
京町線沿いの阪神高速道路 管理本部 神戸管理・保全部の西隣の旧国有地。遺構発掘調査が行われ、勝海舟が設立に寄与し、坂本龍馬も加わった海軍操練所跡地は、遺構を活用したミュージアムを併設した施設が想定されています。かねてから私は神戸地方合同庁舎をここに建設するべきと提唱してきました。旧居留地と波止場町に分かれた第1、第2庁舎の土地の売却益を活用して、両庁舎の機能を高層化した新庁舎に集約が可能となります。二つの庁舎跡地にも新たな開発用地が生まれる事にとなります。土地を再び市から国に再売却が必要となりますが、低層部に遺構ミュージアム、中高層部は庁舎で、可能であれば、展望ロビーがあるとベストです。
2️⃣宿泊・商業施設の導入
現在はまだエリアには不足している宿泊、商業施設の機能を第2突堤基部の住友倉庫跡地や神戸税関の南で暫定緑地化された川西倉庫跡地に導入する計画です。特にマリーナ前となる住友倉庫跡はリゾート感が高まり、世界的外資系ホテルの進出地としては申し分ない立地と言えます。税関前の倉庫跡地は今後の東側の再開発の内容や需要次第でニーズが判明していくでしょう。
3️⃣海のエントランス機能強化
ポートターミナルや神戸三宮フェリーターミナルから構成される第3、4突堤。老朽化したポートターミナルの建て替えも視野に入れられているようです。現状、フェリーターミナルや第3突堤の利活用の状況が中途半端なので、より活気の生まれる施策が必要かと思います。
15年後の2040年を想定した神戸港を描いたイメージ。都心との回遊性を最大限に高めて、神戸の観光と経済を牽引する重要な要素となり、訪日客も国内客も惹きつける魅力的なウォーターフロントを形成して欲しいと思います。やはり新港エリアの東地区にも何らかの目玉となる中核集客施設が必要でしょう。老朽化が進み、建て替えが必要な神戸国際展示場を、ホテルとセットでこの場所に建設する事は検討できないでしょうか。第3突堤も上手く活用して、香港コンベンション&エキシビジョンセンターのような施設があると、エリアの集客力は大きく引き上げられるでしょう。ウォーターフロントは神戸の潜在力を引き出す特別な存在と言えます。
京橋エリアを埋め立てた上で、敷設が計画されている
ウォーターフロントを横断するLRTの軌道敷内は芝生で緑化
されており、フランスのトラムを彷彿とさせます。
その姿は新たな神戸の都心風景として全国から羨望の
眼差しを集められる存在になり得ますね。
神戸は古くから異国情緒を売りとした港町なので、
外国人から見た日本的な魅力要素は京都などと比べて薄く、
観光面では分が悪いのも頷けます。
故にこれまで通り、神戸は神戸らしく国際交流やイノベーション創出、更には国内の若年世代にとって魅力的な活躍の場の
提供を推進し、その先にある新たな国際都市神戸のあるべき
姿を追求すべきかもしれません。
円安の折、インバウンド需要の取り込みは勿論重要ですが。