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なぜ神戸にはガラスカーテンウォールを身にまとったタワーマンションが建たないのか

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この10年で神戸の都心部を初め各エリアに多くの超高層マンションが建設され、神戸のスカイラインは一変しました。遡れば神戸には70年代からすでに20階を越える高層住宅が公団によって建設され、80年代にはポーアイに民間業者による分譲タワーマンションが幾つも出現しました。90年代に入ってからはいよいよ100mを越える超高層建築が六アイや西神等の新都心エリアに登場。震災以降は復興開発によって主要JR駅前にタワーが林立しました。そして2000年年以降は都心回帰によるタワマン建設ラッシュを迎えました。

しかしながら新たにタワーマンションが計画されてそのデザインが公表される度にある種の期待を持ち、その度にその期待が裏切られてきました。そしてある疑問が浮かび上がってきました。

その疑問とその答えが明らかになるきっかけは現在、三宮で建設の進む神戸一の高さとなる予定のシティタワー神戸三宮でした。

疑問とは「なぜ神戸にはガラスカーテンウォールに身を包んだタワーマンションが建たないのか」ということです。もしくはそれに準じたオフィスビルのような外観を持つ高層レジデンスの存在もほとんどありません。

洗濯物を外に干す習慣からバルコニーがあることが日本の共同住宅の基本型であったことや消防法も恐らく関連しているのではないかと思いますが、今世紀に入るまでは超高層タワーと言えども、ほぼ必ずバルコニーをほぼ全周に渡って併設していることが常でした。1999年に黒川紀章氏が北九州市の門司で手掛けた門司港レトロハイマートが恐らく国内で初めてこの法則を打ち破った超高層住宅が誕生となったのではないかと思います。

その後、高層オフィスビルの上層階を住宅とした建物も増え、必ずしもバルコニーがあることが住宅建築の常であるということは無くなりました。住友不動産のシティタワーシリーズはその動きに拍車を掛けた言っても過言ではありません。

旭通4丁目の再開発によって神戸一の高さとなる超高層棟を住友不動産が手掛けることが判明した際、いよいよ神戸にもシティタワーが誕生することに胸を踊らせましたが、ご承知のように全周バルコニーを伴った建物となりました。

さて、ここで神戸市の消防条例(神戸市火災予防条例)の一部を抜粋します。


第49条 令別表第1に掲げる防火対象物の避難対策は,火災が発生した場合に人命に危険が生じないよう配慮しなければならない。

2 令別表第1(5)項及び(6)項に掲げる防火対象物並びに同表(16)項に掲げる防火対象物のうち同表(5)項又は(6)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分の新築,増築,改築,移転,大規模の修繕又は大規模の模様替えをする者は,二方向避難経路(居室から出入口等を経由して避難することができる主たる経路のほかバルコニー等を経由して避難することができる経路をいう。)を確保しなければならない。ただし,次の各号のいずれかに該当するときはこの限りでない。

(1) 延べ面積が6,000平方メートル未満の防火対象物について有効にスプリンクラー設備を設置するとき。
(2) 令別表第1(5)項ロに掲げる防火対象物(高齢者専用部分又は身体障害者専用部分を含むものを除く。)で次のいずれかに該当するものを設置するとき。
ア 令第21条に規定する基準を満たす自動火災報知設備(防火対象物の階数が2であるときに限る。)
イ 屋外の階段(防火対象物の延べ面積が150平方メートル未満であるときに限る。)

2 神戸市防災計画指導指針(抜粋)
(二方向避難)
第21 条  火災予防条例第49 条第2項の二方向避難におけるバルコニーの幅員は、車椅子利用者等の避難を考慮して80cm以上とすること。
2  消防法施行令別表第1(6)項に掲げる建築物及び60mを超える高層建築物の二方向避難については、居室等を経由することなく、バルコニーから直接、階段室(附室)に到達できるものとすること。


延べ面積が6,000平方メートル以上の大規模建築物で就寝を伴う施設(ホテルや住宅等)には各部屋に二方向の避難路を確保する必要があり、これを実現するには全周にバルコニーもしくは避難経路に相当する軒を設置しなければなりません。最近の高層マンションのトレンドは角は外壁と面を合わせた窓を設置し、中央部をにバルコニーを設ける建物が急増していますが、神戸ではこの形も皆無です。「バルコニーから直接、階段室(附室)に到達できるものとする」という条例がこうしたデザインの採用の妨げになっています。

従って神戸に建設される超高層住宅はそのデザインに大きな制限を受けているということになります。そしてこれは住宅建築だけでなくホテルも対象となるのです。

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今春、竣工したばかりのプラウドタワー神戸県庁前。バルコニー設置のデザイン的制約を受けながらも美しいプロポーションと透明感を持った建物になりました。対策として住戸ではないエレベーターホールを整備した中央部に限ってガラスカーテンウォールを採用する工夫が施されました。

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神戸のタワーレジデンスで唯一、オフィスビルのような外観を持つ神戸芸術センターです。躯体にバルコニーを設置せず、中央部に最低限の軒を設けることで、外壁と窓ガラスが平面となっています。

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庇には簡易的な手摺が設置されています。いざという際にこの経路を使って避難するのは足がすくみそうですね。そうした非常時にはそんなことには構っていられないのでしょうけれど。

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宿泊施設に目を移します。こちらは三宮のユニオンホテルです。ご覧の通り、窓は奥まっています。

100mを越える超高層ホテルは新神戸のクラウンプラザホテルとホテルオークラ神戸ですが、この二棟もユニオンホテル同様にこうした軒があります。旧新神戸オリエンタル時代に宿泊した際、なぜ窓からダイレクトに景色が楽しめないのか疑問に思ったことを思い出しました。

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こちらは旧居留地のホテルトラスティの壁面です。躯体とは別にアルミルーバーによる後付けの形で避難経路が確保されています。ルーバー状にすることで、眺望への損ないを抑えると共に安全性とデザインへの配慮も同時に行なっている工夫です。

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こちらも同じく旧居留地にあるオリエンタルホテルの壁面です。こちらは躯体に軒を併設させた形ですが、手摺を水平方向のフレームとし、高層ホテルとして、眺望を妨げないように配慮がなされています。

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さて、こちらは神戸で初めての本格的な超高層ホテルとして1981年に開業した神戸ポートピアホテルです。地上31階 高さ111.4mの大型シティリゾートホテルですが、すでにお気づきかもしれませんが、これまで見てきた建物とは異なります。窓と外壁が完全な平面という訳ではありませんが、窓の外に避難経路は存在しません。

これは同ホテル開業の翌年に東京・赤坂にあったホテルニュージャパンの火災で多くの犠牲者が出た結果、消防法が大きく改正されたことに要因がありそうです。従って81年以前に建設された高層建築は、就寝を伴う施設であっても制限を受けていません。建築基準法でも二方向避難経路の確保は義務付られていますが、神戸市の条例はより厳しく制定されており、居室を通ることなく直接、階段室へのアクセスが必要になるので、ガラスカーテンウォールの採用やテラスやバルコニーを持たないホテルやタワーマンションを建設することは非常に困難を極めるのです。

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しかしながら抜け道もあるようです。プロメナ神戸は万葉倶楽部社によってリニューアルが行われましたが、旧オーガスタプラザ時代にオフィスであった高層階フロアは宿泊施設に改装されました。就寝を伴わない複合商業ビルだからこそガラスカーテンウォールを採用した建物であったはずですが、現在はホテルフロアを併設しています。どのような形で宿泊施設開業の許可を得たのでしょうか。構造上、居室を経ずに二方向の避難経路の確保は難しいはずですが、何らかの形でクリアできた理由があるはずです。眺望が良いこともあるので、その疑問を払拭する為に、ぜひとも一度、宿泊してみたいと思います。



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POSTED COMMENT

  1. 文京移民 より:

    特別避難階段は屋内でないといけないのに、そこに至る経路は屋外でないといけないというのも不思議な規定ですね。


    ただ、バルコニー(ベランダ)というものはまたコロニアル/居留地の建築様式の伝統でもあるので、結果的に「神戸らしさ」を継承しているような気もします。

  2. 文京移民 より:

    補足ですが、読む限りですと「勝手口」があればいいのでは?という気もします。
    主たる出入り口を経由する経路以外にもう一つ用意しろ、というだけなので。

    共用廊下は当然居室ではないので、「室2」を基準に絵を描くと、

    ←←←←←←←←←廊下→→→→→→→→→→→→→・・・・
    「室1」 ↑ 「室2」「室3」 ↑ 「室4」「室5」・・・・

    という平面にして、各室がメインの共用廊下に玄関と、枝状の共用廊下に勝手口と、
    2カ所づつに扉を設ければクリア出来るかもしれません。

    もちろん、こんなの消防に持って行って協議しないと決まらないと思いますけど(笑)

  3. 翔@KOBE より:

    2方向避難経路自体は例えばマンションならその階で違う方向に2つ以上経路(階段)があることじゃなかったでしたっけ? だから居室じゃない廊下に出て二つあればいいし、メインの階段と非常階段とかでも成り立つ的な感じだった気がします(習ったのがしばらく前なのであてにはしないでください。) だから必ずバルコニーをつけないとダメってよりは僕はコストの問題かなって思ってます。

    しかし、都心部のマンションは高さも外観もっと自粛してほしかった。色は落ち着いてますが、マンションって分かりやすい外観ですし、高さの規制は緩すぎやし。高層建築物が好きな人には大歓迎かもですが、賑わいの街としてはナンセンスです。都心回帰やオフィス需要とかの関係もありますが、三宮はベッドタウンじゃないんだから。
    神戸芸術センターって言うんですねあれ。あそこはまぁまぁデザインいいし、オフィスビルっぽくも見えますね。高ささえもっと低ければ神戸都心に似合うと思います。
    僕は「カーテンウォールがかっこいい」とかじゃなく、「オフィスビルっぽく見える」ってことは働き・遊ぶための都心を、市民や観光客にマンションタウンのような街と印象付けないためにも必要なことではないかなと思います。

  4. しん@こべるん より:

    文京移民さん、翔@神戸さん

    翔@神戸さんもコメントされていますが、建物内に二経路を確保できれば必ずしもバルコニー経由である必要はないのかもしれませんね。ただその分、床面積の専有が大きくなるのでコストパフォーマンスは下がります。デザイン性と商業性の両立は難しい所ですね。

    都心の住宅建設は賛否両論ありますが、職住接近によって常に街に賑わいを生み出す点ではコンパクトシティの発想を含めて今後の都市開発の主流にますますなっていくと思います。むしろ街区で街の機能を用途分けしてしまうのは旧態依然な考えです。NYやシカゴも高層建築が街の中心街を占めますが、その用途はオフィス、住宅、ホテル、商業施設と入り乱れて時間を問わない賑わいを生み出しています。

    ただ都心の住宅建設には低層部に商業フロアの導入は必須にするべきですが。

  5. スイートハート より:

    今晩は初めてコメントさせていただきます[i:63911]神戸活性化の疑問点がたくさんありますが今回二点だけかかせて下さい
    まずひとつは生涯未婚率が男性20パーセントを越え女性も10パーセンを越え尚且つ少子化で人口減少時代に入ってるのに結婚式場ばかりやたら多いみたいですね私の意見としては一部の関係者しか入れない施設じゃなくて神戸市民が楽しみくつろげるような施設をつくって欲しいですね私は西宮ガーデンズにいままで3年間で60回いきました アーティストのライブがすきでよく行きますね イオンモールがハーバーランドにできるのでぜひ歌手のイベント広場とCDショップを誘致してほしいですね あと垂水区か西区あたりにショッピングモールを誘致してほしいですね コストコなどの単一の店はできるのですが遺憾せん内陸部に是非モールほしいですね 北神戸イオンモールは三宮からでも40キロは遠すぎますね もうホテルや結婚式場はいらないと思います 長くなってすみませんね あなたの記事いつも興味深く拝見させていただいてます これからもどうぞよろしくお願いいたします

  6. しん@こべるん より:

    スイートハートさん

    コメントありがとうございました。

    結婚式場の集積は決して神戸にとって悪い事ではないと思います。ウェディングの街として全国や世界に認知されれば観光を含めて神戸を訪れる人の増加に繋がり、イメージの更なるアップにつながります。もちろん施設が一般の方も楽しめるものになれば言うことはありませんが、施設の性格上、誰もが自由に出入りできるというも難しいかもしれません。ただ最近のセントモルガンやノートルダムは建物を見て楽しむ事ができる他、ゴスペルコンサートの公開や噴水ショーの披露等、一般客への配慮もなされています。カフェ等、施設内一部の公開も今後は検討されるかもしれません。

    ライブ等、人々に魅力を供与するソフトの提供はどの商業施設も必要ですね。ただもう郊外型モールは神戸市内には作らないほうが良いと思います。関西の人口が減少している今、既存施設と新施設のパイの奪い合い状態が消耗戦を引き起こしています。ただでさえ大阪の百貨店戦争に引きずり込まれている状況で、更に市内にモールを誘致することは都心や既存施設の弱体化を招く自殺行為です。集客力のある都心の活性化を第一に進めるには、こうした流れを変えることが必要です。でなければ神戸も阪神地域と同じ大阪の郊外都市になってしまうでしょう。

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