特集・シリーズ

平成27年度予算に見る今後の都心整備

神戸市の平成27年度予算案が発表されました。神戸の都心開発に重点を置いた配分ということで、今回はその内容をまとめてみました。来年度、都心の再整備に費やされるのは22億57百万円です。

○三宮駅周辺のターミナル機能強化

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-ターミナル集約化の適地検討
ターミナル集約化とは周辺域に拡散しているバスターミナルを主に指すものだと思いますが、将来的には後述するLRTやBRTが導入される場合、これらの新交通手段との連絡も見据えた構想にしなければなりません。この適地を検討するということですが、限られている駅前土地面積を考えると、立体的に活用せざるを得ないのが現状です。もしくは県道21号線の駅前を完全に封鎖して駅前広場と兼ねてターミナル化を図る位の荒療治が必要かもしれません。第3案は駅北側正面の雑居ビル街を再開発して高層集約化することでターミナル用の土地を捻出するか。

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-3層ネットワーク具体化検討
前述のターミナル集約化と密接に絡んでくるのが3層ネットワークの再構築です。昨年、神戸経済同友会から発せられた駅前開発構想案としてほぼ駅南側の上空全てを覆う人工地盤の構築という構想がありましたが、この実現性を検討するということも考えられます。もしくは車は立体的に地下へ誘導し、地上部は広場にしてしまうという方法も考えられます。

27nendo05.jpg ※写真は広島市の路面電車

-新たな交通手段(LRT・BRT等)導入可能性検討
LRTの導入は街のテーマパーク化的な要素も含んでいる他、ウォーターフロントをはじめとする都心エリア全体への回遊性を高める働きが期待できます。現在、多くの都市がLRTとしての路面電車再導入を検討していますが、その中で神戸が一番乗りを果たせるよう進めて欲しいと思います。今年度内に民間事業者から事業計画案が提出される予定です。

○回遊性向上の具体化推進

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-東遊園地活性化調査
東遊園地は由緒ある日本最古の都市公園としてだけでなく、都心最大のオアシスですが、使い勝手の良い公園とは言い難く、憩える公園という雰囲気はあまりありません。その大きな要因の一つは芝生広場の無い事だと思われます。芝生広場の導入検討も視野に今回の活性化調査が実施されるようです。世界の都市で人を集める公園を参考に改修を進めるべきかと思います。

-三宮地下公共空間にぎわい創出
地下鉄海岸線開通に伴い整備された三宮中央通の地下空間・通路ですが、正直言えばこの空間の整備目的がはっきりしません。またここに賑わいを創出する事にあまり意味合いも感じません。地上部の活性化にもっと注力すべきかと思います。

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-葺合南54号線の再整備
すでに明石町筋等で導入している車線の減幅と歩道拡張+再整備の手法で葺合南54号線をリニューアルする計画です。今年度から着手するということでしょうか。駅前から南北を結ぶ都心軸として重要な案件かと思います。このリニューアルを機にこの道路沿いの賑わいを高め、磯上モータープールやアイング三宮パーキング等の周辺地域にある大規模駐車場の再開発に弾みが付けばと思います。

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-都心・新神戸駅周辺の回遊性向上検討
これは範囲が広過ぎてどう検討しようとしているのか不明瞭です。新神戸の活性化が必要なのは理解できますが。新神戸は北野との連携をどう改善していくか、新神戸駅とオリエンタルシティC3をどうやってうまく融合するかに焦点を絞るべきかと思います。

-都心・ウォーターフロントにおける総合的な交通施策の推進
これは前述のLRT・BRT導入と重複している気もしますが、これらも含めた総合的な施策ということでしょうか。

○行政施設立地あり方、活用検討調査

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-行政施設の集約等による種地の創出
中央区役所と勤労会館を市庁舎2号館に集約して再開発を進める案は私もこのブログ上で何度も提唱してきたことですが、ようやくその方向で神戸市も検討を始めるようなので嬉しい限りです。市は更に3号館の集約も考えているようですね。問題は生まれたこの「種地」をどう活用するかです。北側の老朽化するサンパルと一体開発できることが最善です。しかしこの建物も区分所有型の再開発ビルです。全国でも区分所有型の再開発ビルが老朽化しており、課題になっています。区役所跡をバスターミナルという案も考えられなくはないですが、敷地サイズ的に中途半端である事、駅からの距離が微妙で他交通機関との接続が悪い事等、最適地ではありません。ただ交通の要衝が駅の東にできる事で三宮東エリアの活性化に繋がるというメリットもあります。

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各庁舎等の集約によって2号館は必然的に高層化されることになります。1号館とデザインを合わせたツインタワーとするのかそれとも敷地を目一杯活用して南北に長い壁型ビルになるのか。また3号館跡は立地上、ホテルやオフィスビルになるのが手堅いですね。

○新港突堤西地区の再開発の推進

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-新港第1突堤
平成27度12月(予定)の施設開業に合わせた周辺整備
・緑地整備、アクセス道路改良等

ホテルとコンベンション施設が建設中であり、12月に開業することから、周辺地域の整備を実施します。施設周辺は緑地整備を行い、施設へのアクセス路も整えます。27年度内では難しいかもしれませんが、第一突堤とメリケンパークとの連絡もできるよう事業を進めて欲しいと思います。

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-新港突堤基部
にぎわいを創出するウォーターフロント再開発の事業化のための取組み
・国有地取得、調査・計画等

突堤基部は国有地や民間企業の倉庫群で占有されています。突堤部の開発は一部進んでいますが、都心と突堤との緩衝帯である基部の活用法が未だ明確ではありません。エリアをどう再開発していくか明確に方向付けが必要となります。市のイメージ図では解体された倉庫跡地に高層ビルが描かれています。

○都心の景観高質化戦略

-デザインコードの策定
-三宮駅周辺のガイドライン案検討
看板規制や案内板の統一は街並みに統一感を生み出す事に奏功すると思いますので反対ではありませんが、必要以上の過度の規制は活性化の足枷に繋がります。その見極めが大事かと思われます。ガイドラインとしては既存ビジネスや施設も含めて三宮駅南側は用途、建物規模に規制を課すべきかと思います。少なくとも現状は150万政令市の表玄関として不合格です。

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-デュオこうべ浜の手リニューアル事業
現在進行中のデュオこうべ浜の手リニューアル事業は第一期を平成26年度中に完成させ、第二期を平成27年度予算に盛り込んで実施します。umie(ウミエ)の集客力を活用して地域で更なる活性を高めていって欲しいと思います。周辺地域の居住人口増も後押ししています。

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-企業拠点(本社機能)移転補助制度の創設
神戸市と兵庫県が都心エリアの再開発ビルへ移転する大企業に税制優遇措置を設ける制度を施行しましたが、これまでに制度の利用は三宮ビル北館へ移転予定のP&G一社に留まっています。政府は東京一極集中是正と地方創生の名の下、大企業の地方移転促進を進めるつもりですが、移転先に神戸を含む三大都市圏は含まれていません。神戸市は独自の補助制度を設けるという事ですが、現状の制度より更に踏み込んだものになるのかどうか。そして積極的に東京や海外に出向いて移転を検討する企業へ売り込み営業を掛ける必要があります。次の適用が考えらえるのはJRや阪急の新駅ビルに設けられるオフィスに入居する企業でしょうか。できれば駅ビル以外の再開発ビルにも期待したいところです。

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-鯉川筋等における新たな回遊拠点づくりにけて、道路空間のあり方の検討を実施
昨年、車線規制を伴う社会実験を実施した鯉川筋。大丸前のスクランブル交差点からJR元町駅までは都心内でも三宮に並ぶ通行量と賑わいのあるエリアです。ただ通行量に対して十分は歩道空間が確保されているとは言えません。旧居留地、元町商店街、南京町、乙仲通、メリケンパークを繋ぐ結節点として、銀泉神戸ビル跡地の再開発も絡めた鯉川筋の活用を検討して貰いたいですね。

これらの予算案から神戸市は神戸の都心が抱えている問題点や課題についてはよく分析し、把握していると推測できます。問題はこれまでこれらの課題に対して、言葉遊びの部分が多く、具体的で有効的な対策が実施されてこなかった事です。今回の案では都心の行政施設の集約による再開発の種地の創出をはじめ、具体的な構想が出てきた点は評価できます。ただ検討という項目が多いのも事実であり、実際に有効的且つ実行可能な施策を捻り出せるのかどうか。検討の進捗を逐次、報告して欲しいと思います。



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POSTED COMMENT

  1. JUNK より:

    いろいろ検討するのはいいことだと思いますが、あれこれいっぺんにやろうとして中途半端にはならないでほしいです。
    LRTの導入検討も、そもそも低迷している地下鉄海岸線の今後の立ち位置をどうするのかということと併せて考えていく必要があると思います。(もちろん考えているとは思いますが。。。)

    話は変わりますが、地下鉄三宮駅にホームドアが整備されるそうですね。昨日に産経WEB版で偶然記事を見ました。山手線全車両の更新も行うようです。

  2. sirokuma より:

    予算案要旨は見ましたが、正直がっかりしました。LRTもBRTも三宮駅前整備も具体性は感じられずアドバルーンを上げている程度に感じます。このスピード感では、お題目を並べるだけで終わり、我々が思い描くような駅前再開発はできそうにもありませんね。結局、民間任せで駅ビル開発は終わり、行政がその周辺の小手先の整備を行うだけで再開発は終わりそうです。官民バラバラな印象です。
    官民バラバラで税金を創出する機会を逸し喪失した例としては、中央大通の地下道が良い例だと思います。沿線ビル所有者に一定条件下で地下道への直結を許していたなら放っておいても地下街が整備形成されたと思います。官民が連動せずににぎわい創出の好機を逃した典型じゃないでしょうか?三宮に観光・ショッピングに来た人達があの殺風景な地下トンネルを利用しようと思ったのでしょうか?
    また今回の中央区役所等を種地にするという案などはアドバルーンの良い例です。市役所2号館等を整備して区役所を同居させて云々…いったい何年先の話をしているのやら。これらは駅前整備の言わば後段のものでしょう。
    行政としては、同友会の提案のように種地は都市計画変更等で新たに立体的に創出すればよいのです。このように、行政にしか出来ない事を将来を見据えて大胆にスピーディーに行って欲しい。

  3. 夢想家 より:

    「二兎を追う者は一兎を得ず」と言われますが、あまり風呂敷を広げすぎるのはどうかと思います。
    市長の任期は4年です。はや2年目に突入しておりますが、未だ市のビジョンすら示すことができておりません。
    市民の意見が想定以上に多すぎて、取りまとめに時間がかかっているとの事ですが、事前のリサーチ不足を露呈していると言わざるえません。
    市長が再選される保証は有りませんので、スピード感を持ってやらなければ、全ての計画が頓挫して民間の足を引っ張りかねません。
    とにかく市長の一期目は三宮駅周辺の整備に金も人も全てを注ぎ込んでほしいものです。
    阪急、JRの駅ビルが建て替わった場合、交通センタービルがあまりにも貧弱に思えます。
    一番の立地ですので、神戸の玄関に相応しい物に建て替える必要が有るでしょう。神戸市が優先的に取り組むべき課題だと思います。
    阪急と統一性のある開発ができればベストです。

  4. 北側 より:

    駅の北側の地下が決まらないので、全てが中途半端な印象です。
    もし阪急が地下化すれば、高架跡を有効活用して何らかの策が取れますし、
    北口を2層構造にして・・・ということも考えられます。
    完全に諦めるのなら、地下の構造は無視して好きに出来ます。

  5. 翔@KOBE より:

    三ノ宮駅の再開発の話が出てからもう何年もたつのに、未だに検討とかまだまだ時間がかかりそうな言葉が並んでいて、スピード感がないというか悲しいです。
    その中で唯一おお!となったのが地下鉄ホームドア設置と、西神山手線車両の更新ですね。最近何かと関東の鉄道を利用することが多いのですが、液晶モニターの車内案内板が充実しててびっくりです。JR東なんて色んな広告やニュースをやってて、乗ってて楽しいというか飽きないというか。羨ましい限りです。液晶モニターの案内板は関西でも阪急やJR西、大阪市営地下鉄も新型や更新車両で導入が進んでます。神戸もこの流れに乗ってほしいものです。

  6. ein より:

    そもそもバスターミナルの集約はそれほど優先度の高い事業なのでしょうか?まず、駅ビルをどうするかが先決だと思いますが。
    仮にバスターミナルを整備するとしても、JR三ノ宮駅とそごうの間の大通りの両サイドにバス停を並べ、両サイドで足りなければ、中央に島を設けてその両サイドにバス停を配置し、それらをデッキを架けて駅から雨にぬれずに渡れるようにしてやれば、簡単ではないかと思うのですが。
    このままでは何も形ができぬまま、任期満了を迎えるのではないかと懸念します。

  7. しん@こべるん より:

    JUNKさん
    海岸線の利用者を増やすには単純に沿線人口を増やすしかないと思います。和田岬エリアの開発と魅力アップが何より必須です。これには市場跡のイオンモール開業と二期地区に大型のマンション開発を進めて起爆剤にする必要があります。

    全てが中途半端になるという不安は皆さんが持っている懸念ですね・・・。

    sirokumaさん
    アドバルーンを上げている・・・。まさに言葉遊びの域を脱していない印象を受けたのは皆さん同じのようですね。中央通の沿線ビル所有者に一定条件下で地下道への直結の件、興味深いです。今からでも遅くはないのではないでしょうか。市役所2号館の件は時間が掛かってもようやくその方向で進めるという姿勢を公言したのは一歩前進かと思います。

    夢想家さん
    皆さんの苛立ちが市長に伝わるといいのですが・・・。交通センタービルは建替えの際、市から神戸地下街へ高層化の検討を打診したようですが、やはり予算の関係上、既存ビルの低層部に再度、継ぎ足すという最も低予算の方法で復活させました。もっとJRの資本が入れば、再々開発も見えてくる?土地が狭いのが難点です。

    北側さん
    阪急の高架部分で土地が増えてもバスターミナルの集約には寄与しないでしょう。それでも神戸では宝の土地が生まれることになりますね。

    翔@KOBEさん
    民間企業が絡んだ再開発ながら長期にわたって何も具体構想が出てこない例もまた珍しいかと思います。地下鉄ホームドア設置や西神山手線車両の更新も必要だとは思いますが、神戸の活性化にはもっと先にやることもあるような・・・。

    einさん
    21号線を使うのは一つのアイディアですが、現状のままでターミナル規模を増やすと渋滞が慢性化し、事故も増えるような気がします。ただ21号線の幅員を縮小して駅前の土地を増やすのも一案かと思います。

  8. Uターン より:

    サンパルと勤労会館などの行政をひとつの高層ビルにまとめて鈴蘭台駅前再開発のビルみたいにできないのかなと思ったんですがさすがに素人の考えなので無理過ぎですね。(^_^;)

    でもあのサンパル付近はどうにかしてほしいです。狭い道に大量の自転車が置いてあったりなにかとごちゃごちゃしてるイメージがあるのでサンパルと同じく変わることを祈ります。

  9. waraushi より:

    バスターミナルですが、博多のバスセンターのような形でバスターミナル兼複合型商業施設に出来ないものでしょうか?
    やはり土地が足りないでしょうか?地上レベルで歩行者動線が厳しいでしょうか?
    現在の駅前広場と駅ビルをすべて潰して高層化し、1Fを近距離バスのりば、
    2F/3Fを高速バス乗降場にして、4F以上の中層階を商業施設、高層部はターミナルホテル・・・といった整備は無理でしょうか・・・

    新港第二突堤の行方も気になります。
    現状は海上レストランとなっていますが、現実的には神戸に縁のある船舶を係留して
    レストラン船にするのが現実的でしょうか。

  10. しん@こべるん より:

    Uターンさん
    サンパルは区分所有型の再開発ビルなので、分譲マンションのように各区画が所有されているのです。従って建替え等には一定数の賛成がないと踏み切れません。あの一帯は駅至近でありながら有効活用されていない事が非常に勿体ないですね。

    Waraushiさん
    できない話ではないと思います。ただ広場としての解放感はなくなりますのでこれをどう見るかという話ではないかと思います。

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