JR三ノ宮新駅ビル

26年度予算に見る都心・ウォーターフロント整備と神戸経済界の三宮整備提言案

平成26年度の神戸市予算が議会決定しました。新年度の予算案前文に示されたのは新しい街造りに対する意気込みです。三宮再開発がいよいよ始動する中、神戸の都心再整備に本腰を入れて取り組もうという姿勢が伺える反面、有効打を打ち出せていないもどかしさも感じられます。

世界に誇れる夢のある街の実現

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『人・物・情報の交流がさかんな都心を活性化し、全市への経済波及効果を創出するため、神戸のさらなる飛躍に向けた都心の再生を推進します。

鉄道事業者による駅ビル再整備計画の進展など、都心の再生に向けた機運の高まりを確実に神戸の発展へとつなげていくため、三宮周辺地区・ウォーターフロント地区を大胆に活性化する将来ビジョンを策定し「神戸未来都市創造プロジェクト」の実現に向けた取り組みを強力に推進します。

三宮周辺地区の再整備では、平成 26 年度内の将来ビジョンの策定に向けて、地域団体、地元企業、交通事業者などと一体となり、交通結節機能や商業・文化交流機能のあり方などを検討するとともに、JR三ノ宮駅前をはじめとした周辺地区の基本構想を策定します。

都心の道路空間のリデザインとして、三宮周辺地区の人を中心とした高質な道路空間を形成するための整備方針や、歩行者ネットワークのあり方を検討します。

また、ウォーターフロントの魅力をさらに向上させるため「港都 神戸グランドデザイン」の実現に向けた取り組みを進めます。ホテル事業者が進出する新港第1突堤において、魅力あふれる親水空間を創出するとともに、新たに宮崎港とのフェリー航路が就航する新港第3突堤において、歩道改良などの周辺環境の整備を進めます。

また、JR貨物神戸港駅跡地において、自転車・歩行者道の整備を公民連携により進めるとともに、三宮とウォーターフロントを南北に結ぶ葺合南 54 号線の再整備を進めるほか、ハーバーランド地区では、デュオこうべ浜の手のリニューアルを進めます。 』

まとめると下記に重点を置いた予算編成となっているようです。

△駅ビル建替による駅周辺の再整備
-これは最重要課題と言っても良いでしょう。神戸都心活性化の最大の起爆剤です。

△駅周辺の歩行者空間整備
-電柱の地中化や現在21号線沿いで進めている歩道整備を含めているのでしょうか。

△新港第1・3突堤の整備
-ラスイート、フェリーターミナルの整備ですが、一帯を含めたもっと面的で広がりのある構想が必要です。

△JR貨物駅跡東側の整備
-アシックスと共同でランニングコースの整備を検討しているようです。

△葺合南54号線の再整備
-通り沿いには都心の重要な施設が林立しているにも関わらず、現状、裏通り的であまり魅力を感じない通りです。居留地並の美しい通りに整備して魅力を高めたいですね。

△デュオこうべ浜の手のリニューアル
-ハーバーランド活性化の伏線ですね。神戸駅からの導線再構築はどうなったのでしょうか。umieが好調なので優先度が下がったのでしょうか。

神戸経済界の三宮整備提言案

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市の予算案よりも具体的で楽しいのが神戸商工会議所を中心とした地元経済界が集う「神戸海港都市づくり研究会」がまとめた三宮再開発の提言です。新聞各紙が報じましたが、提言が神戸市に提出され、そこで示された三宮駅前整備のイメージ図が公開されました。

同研究会の提言の主な柱は

△周辺ビルの2,3階をつなぐデッキ広場整備
△バスターミナルの再編・整備
△JR三ノ宮駅の東改札口の開設・西改札口の整備
△インフォメーションセンターの再整備

の4本柱が盛り込まれています。

これらは現状、三宮が抱える課題の克服に大きな主眼を置いているように思われます。

駅ビル建替の敷地にそれなりの面積を割いてしまうと、駅前広場のスペースは大幅に縮小されてしまいます。この問題の解消にはやはり人工地盤の整備による空間形成は有効です。広大な歩行者デッキは、駅周辺の全ての商業施設を連結して回遊性の向上や車歩分離の巨大な駅前空間の創造が可能になります。提言ではデッキを三宮センター街にまで延長し、歩行導線の確保を示しています。

またデッキ空間の活用によって地上部分の再構築が可能になることにより、現在駅周辺に分散して非常に分かりにくいバスターミナルを集約することが可能となります。

デッキを二層構造にして階段がある点やウッドデッキを採用した点も好印象ですし、親水空間があることも魅力的です。JR姫路駅前に整備中の広場やJR大阪駅北側の広場もぜひとも参考にして欲しいですね。

東口の開設は再開発を終えたばかりの旭通を中心とした地区の更なる活性化を促すことにも繋がり、新たな再開発を導く起爆剤になり得ます。西口は阪急の新駅ビルやリニューアルが図られるさんちかと接続する重要な結節点ですので、交通センタービルも含めた再整備も検討して欲しいものです。

インフォメーションセンターは現在、こじんまりとした施設がJR駅前にあるのみですので、外国人の訪問数増加を見据えて観光拠点となる神戸の玄関口に相応しい情報センターが必要とされます。

理にかなった面白い提案ではありますが、ただもう一歩踏み込みやインパクトが欲しい感もあります。斬新さやパンチ力のある、この場所に来るためだけにでも三宮に来たいと広域圏の人間に思わせる位、瞬発力のある仕掛けや観光名所が欲しいです。布引の滝ならぬ「三宮の滝」なんてどうでしょうね。JRの新駅ビルから広場の滝壺に落ちる落差40mの都会の滝。夜にはライトアップされて幻想的に光る滝になります。メンテやコストが大変ではあるかと思いますが…。

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この他、提言では大阪や京都、その他全国の大都市で展開されてきた駅ナカを中心とする駅ビルではなく、玄関口としての機能を保持し、神戸が元来より兼ね備えている「歩いて楽しい街」の強化を謳っています。駅ビル+百貨店というかつの勝利の方程式にも綻びが見え始めた昨今、神戸では駅だけに留まらない新たな駅ビルのビジネスモデル構築が必要という考えと駅だけが潤うというこれまでの巨大駅ビルの課題を克服したいということでしょう。但しこれは実際に駅ビルを建て替えるJRや阪急に利に反する可能性もあります。神戸では駅ビルと周辺エリアがWINxWINの関係を構築できるよう開発を進めるのが理想ですね。

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但し、提言の図で描かれているJR、阪急双方の新駅ビルは隣合うミント神戸(地上18階 高さ92m)と肩を揃える形で描かれています。以前にも新駅ビルは海や山の眺望を阻害するべきではない旨の談話が出ていましたが、90m級のビルでもすでに山や海を眺望を十二分に遮っています。都心の一等地というごくごく限定された場所では空中を有効活用することは当然のことです。駅ビルの規模を縮小させるべきではありません。

また中長期の課題として

△新神戸駅-神戸空港間の交通網整備
△神戸空港-関西空港間の地下鉄整備
△都心と臨海部を結ぶLRT整備

が挙げられました。

神戸空港-関西空港間の地下鉄整備はかなりぶっ飛んだアイディアです。非常に夢がありますが、夢で終わってしまうような案ですね。新神戸-空港間及びLRT整備にはまだ実現可能性は比較的高いかと思われます。

LRTの整備は今年度の市の予算でも導入の調査費が計上されました。全国各地でもLRTは注目されていますが、一度廃線とした路面電車を復活させた都市はまだありません。神戸が1番乗りを果たせるかどうか非常に注目されます。

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また神戸新聞の記事には気になる情報が書かれていました。

抜粋『地元のビル関係者によると、JR三ノ宮駅東側一帯で、大手不動産会社などが大型ビル建設に向け調査を始めた。』


JR三ノ宮駅東側一帯が示すエリアとはやはりミント神戸の東側である雲井通、旭通地区を意味するのでしょうか。となると、やはりサンパルやサンシティ、東急インの入居するコスモビル、中央区役所、勤労会館を含んだ一帯を指すのでしょうか。はたまた御幸通や磯上エリアも含めた広範囲も対象なのかどうか。

駅ビルにオフィス機能を持たせるのかどうかも阪急は言及したものの、JRは慎重な姿勢を崩していません。商業施設とホテルの複合ビルになるのか、そこにオフィスフロアも兼ね揃えさせるのか。立地はこの上ない一等地です。梅田の阪急オフィスタワーもグランフロントも当初から満室稼働とはなりませんでしたが、目先の利益に囚われず、長期目線で見れば必ずテナントは埋まることは必然的であったが故での大型投資です。JRにも阪急にも長い目での投資をお願いしたいですね。

まあこれまではこうした類の話すら出てこなかった訳ですから、駅ビル建替によって引き起こされる周辺部へ再開発の波及効果は絶大です。大阪のターミナル再開発がひと段落を迎え、飽和感が否めない状況になり、企業や不動産開発の矛先は神戸に向き始めているのかもしれません。

久元新市長が公約に掲げた三宮再開発の検討会が発足しました。その名も「神戸の都心の『未来の姿』検討委員会」。この初会合が19日に開かれるようです。

こうした具体的な話が出てきていることは非常に頼もしく、そして期待感と想像力を膨らませてくれます。



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POSTED COMMENT

  1. asmski より:

    創造図はちょっとやり過ぎ(というか無茶)な感じもしますけど、JRの駅ビル建替えを気に北側を含めて一体的に再開発して欲しいですね。
    神戸に住んでた時には考えなかったけど、各鉄道やバスの乗り口はバラバラで外から来た人にはわかりにくいかもしれないですね。大阪駅の様に橋上駅を設けるのがベストでしょうか。

  2. 夢想家 より:

    いつもながら、こべるんさんの洞察力、分析力には頭が下がります。巷の経済新聞、業界誌以上に的を射た解説に敬服いたします。
    是非、「神戸の都心の『未来の姿』検討委員会」のオブザーバーとしてご参加ください。たぶん、この方面、業界に無関係の方ではないと、ご推察いたします。

    さて、今回の研究会の提言ですが、多くの市民にはその趣旨はおおむね受け入れられる方向性の物ではないでしょうか。
    ただ、実際の主たる開発者のJR西及び阪急と、地元経済団体とは「呉越同舟」とはまでは言わないまでも、「同床異夢」であることは間違いないと思います。
    研究会が、ライバルとなる商業施設の建設を望まないのは当然であり、一方開発者は収益を上げるためには、既存の施設の売上を奪ってでも集客したいのも本音です。
    そう言う意味では、地元経済団体が検討委員会の前のこの提言を行ったのは、開発者への先制のジャブといえるでしょう。
    しかしながら一番大事なのは神戸、三宮のパイが如何に広がるかどうかですので、その視点で議論をしてほしいと思います。
    えてして自治体のこの種の検討会では、地元経済界にも配慮、各種市民団体にも配慮等々で、何処にでも有る平凡、無難な計画になる事が多いですが、市長のリーダーシップで少なくとも今までの日本の駅前開発に無かった斬新で、五感に訴えるような計画にまとめてほしいものです。
    ミニ東京、ミニ大阪・梅田のような物だけにはしてほしくないですね。

  3. sirokuma より:

    いよいよ本格化してきましたね。これからいろんな意見が戦わされるのでしょうが、金太郎飴みたいな開発は御免です。
    その意味で、今回の提言は前向きに評価できます。他の大都市に比べスケールの面でかなり見劣りする三宮駅周辺地区の再開発を考える時、ミント神戸・交通センター・マルイ・そごうで囲む道路上の空間利用(人工地盤化)は必須だと思います。将来的には阪神高速以南まで伸ばし、東公園を経て旧居留地エリアとアクセスさせ2号線高速を超えてウォーターフロントへゆったりと遊び・食事をし・買い物をしながら散策できるような空間を創る位の事は考えて欲しいと思います。
    どうせお金を投下するのなら通過点ではなく、訪れる事が目的となるような集客性の高いエリア形成を目指して欲しいものです。旧居留地やセンタープラザ、ウォーターフロントや北野エリアへのハブ的な空間でありながらその空間自体が楽しい。エネルギッシュな路上ライブや街カフェなど市民自らも主役となり遊び寛げる自由な空間にすることが大事。ここに、LRTの起点を創るのも面白いそんな楽しい開発できないかなぁ?

  4. ジョー より:

    いかにも日本的な感じですね。
    今ある環境を犠牲にして人工地盤上に新たに空間を作るのは、ある意味スクラップアンドビルドに近い。もしくは臭いものには蓋を。
    もしこんな広範囲に中途半端な半地下のような空間をができたらと思うとゾッとします。
    地下街は本当の地下だけで十分。自然の光を大切にしましょう。

  5. 名無し より:

    人工地盤というと新宿を思い浮かべるのは私だけでしょうか。新宿の場合は人用の人工地盤というより道路が跨いでいるという感じですが、あのお陰でより多くの歩行空間が確保されています。
    駅前広場が確保出来ない神戸にとっては人工地盤の構築は有効な一手でしょう。私は賛成ですね。

  6. tet より:

    こんばんは。
    三宮周辺は「人間が中心」という意識を持って改造を行っていただきたい。
    JR三ノ宮駅からセンター街や市役所方面に出向こうとするとき、横断歩道や地下街などを利用して複雑に移動することなく自然光のもとで海を感じながら障害物が少なく直線的に歩いて行けるルートもありと感じてます。あくまで個人的な見解ですが。
    人工地盤のある駅前は、知っているところでは、仙台、新宿、柏、町田、藤沢などが思い起こされますが、人工地盤に覆われた地上は新宿以外は薄暗く、うらぶれた感じが否めないので、三宮にできるであろう人工地盤は明るくて活気のある構造を期待いたします。

  7. しん@こべるん より:

    asmskiさん
    私はこれ位インパクトのある物でないと、というよりもまだひねりが足りないと思っています。神戸に来る人が下りたった時に驚きを感じられる場所でないとなりません。他所と同じでは駄目だと。バスターミナルの集約は必須ですね。

    夢想家さん
    まさに仰る通りで、地元経済と鉄道会社の利害が合致している訳ではありません。もちろん民間であれ公共交通機関を担っているのですから、鉄道会社には一定の配慮が必要とされるのも事実ですが。JRはエキナカで実績を作りあげてますし、市もエキナカの拡充を図るために地下鉄駅へのコンビニ誘致等を積極化しています。ミニ梅田にはならないよう市のリーダーシップで関係各所をまとめていって欲しいですね。

    sirokumaさん
    都心とウォーターフロントの連動においてはLRTの導入は検討ではなく必須なのかもしれませんね。駅前の再開発が都心からウォーターフロントまでに拡大波及していくことで神戸全体の活性化が図られていくことぉ期待したいですね。

    ジョーさん
    確かに人工地盤下が暗くなってしまうのはデメリットではありますが、スペースに限りのある現状の駅前に広場を確保するには人工地盤が唯一の解決策です。地盤上にガラスブロック等を多用する等、地盤下にも太陽光が入るような工夫が必要かと思います。

    名無しさん
    地盤化もしくはバスターミナルの地下化でしょうか。西新宿もそんな感じだったでしょうか。

    tetさん
    やはり明るい人工地盤構築には工夫が必要ですね。地盤下でも自然光がさんさんと降り注ぐような工夫が。

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