スポンサーリンク
鹿児島一の繁華街・天文館の再開発で昨年4月に開業した大型複合商業施設「センテラス天文館」。Part1では建物館外の様子をレポートしましたが、Part2では館内の内容をお伝えしたいと思います。
建物構成は上記の通りです。今回は商業施設、図書館、そして展望スペースの様子をレポートします。
初進出づくしの1-4階の商業施設
1-4階の商業施設は東京建物グループのプライムプレイスが運営を受託。同社のリーシング力と天文館の有するポテンシャルによって、全国初、九州初、鹿児島初の初物尽くしのテナントを多く集結させました。
内装は木目を基調とするナチュラルな素材を多用した今風の商業施設です。天井については、内装にも木材の格子を組み合わせて、薩摩切子のイメージデザインを採り入れています。
注目すべきテナントとして、ぐるなびが初めて手掛ける店舗開発事業として、全国初出店となる「ぐるなびダイニングパーク」があります。コンセプト設計から飲⾷店誘致、店舗構築、フロア運営まで総合的にプロデュースをする事業で、90席を設けて3店舗を誘致しています。
他にもEggs’ Things等、鹿児島初出店テナントも多く集めて、鹿児島中央駅前の駅ビル・アミュプラザ鹿児島に対抗しています。
民間商業施設内の公設図書館
4-5階は鹿児島市が取得し、公設図書館の「天文館図書館」を開設しました。商業施設内の図書館開館は、この鹿児島よりも前に神戸では名谷の大丸須磨店内に名谷図書館を開いています。しかし大丸須磨店の入る建物自体はそもそも神戸市の外郭団体が保有する建物だけに、市の図書館が入る事はある意味、自然な流れでした。明石市でも駅前の再開発ビルに図書館を入れる事で集客に成功しており、近年、商業施設と図書館の組み合わせはトレンドになりつつあります。
天文館図書館は2フロアで延床面積2,120平方メートルありますが、蔵書数は4万冊と比較的少なめです。
空間をゆったりと使っており、図書館の運営も市が行うのではなく、指定管理業者に委託する形を採っています。
図書館内は更にナチュラル色の強い内装仕様になっています。
圧巻はこの2フロアにまたがる傾斜の非常に揺るやかな大階段。図書館内に大階段が出現する意外性とその開放感は面白い組み合わせです。
非常に贅沢な造りです。イベントの開催スポットとしても活用されており、その際は階段がベンチに早変わりします。
神戸市も雲井通5丁目の再開発ビルに世界一美しい図書館を整備する計画ですが、それまでに全国の都市に新しい図書館が続々と開館しており、どのような形で世界一を目指すべきなのかを吟味する必要があります。
階段横にはギャラリーも備わります。
書架を詰め込まず、通路幅にも余裕があります。
図書館横にはカフェもあります。カルチュア・コンビニエンス・クラブが始めたブック&カフェは全国各地に広がりを見せていますが、公設図書館でもこの形はメジャーになりつつあるようです。
再開発ビルを建設した場合、フロアをすべて商業テナントのみで埋める事は難しくなってきました。特に地方都市の中心市街地では、再開発によって集客力を高めたい反面、オーバーストア化が著しさを増している為、商業以外で集客性を図る必要がある為、図書館に白羽の矢が立った訳ですが、これには奏功する事例が増えているので、これからも地方や郊外都市を中心に増えていく事でしょう。今後は図書館という切り口に対して更なる工夫も必要になってくるのではないかと思います。
15階 スカイビューセンテラス
センテラス内のメインエレベーターは商業、公共施設フロアのである1-7階及び15階のみに停止します。8-14階はホテルフロアの為、ホテル専用エレベーターが設けられています。
最上階の15階にある「スカイビューセンテラス」。
広々としたスペースが広がる展望スペースですが、ソファーやテーブル等は置かれていません。
民間施設にも関わらず無料で提供されている展望スペースなので贅沢は言えませんが、ベンチ等があると快適性は向上するのではないかと思います。
展望スペース階にはトイレも完備しています。
15階には城山ホテル鹿児島が直営プロデュースするレストラン「お肉とワイン 黒ノ壽(くろのす)」が営業しています。レストランから桜島を望みながら鹿児島の肉料理に舌鼓を打つのも最高でしょう。
神戸三宮阪急ビルの29階ビューラウンジは開業から2年経っても一般開放されません。コロナ禍中は致し方なかったとしても、5類移行を機に当初想定の一般開放を開始するべきです。それが建物東西幅を55mに緩和する条件だったのですから。
さてスカイビューから望む眺望に移ります。何と言っても、眺めのハイライトは東方面でしょう。
市街地と錦江湾の先に聳える雄大な桜島。快晴だったものの、水蒸気を噴き出しており、山頂付近は霞んでいました。
鹿児島電鉄の伸びる大通りと天文館エリアの繁華街。黒く大きな建物はエリアのもう一つのランドマークである鹿児島銀行本店ビル・よかど鹿児島(後日レポート予定)です。
南方面の眺めです。60万都市の鹿児島。九州においては福岡、北九州、熊本に次ぐ第四の都市ですが、福岡以外の2政令市とは感覚的な都市規模感は同等です。
右手の高層ビルは今春完成したばかりのキラメキテラス(後日レポート予定)、左手の頂部に二つの装飾が両サイドに並ぶ建物は鹿児島県庁です。
北方面です。奥に市街地に接する城山が横たわります。山頂の城山公園から望む市街も見応えがありますが、センテラス天文館の完成によりこれまでよりも気軽に来れる展望スポットが生まれました。
山頂左手にある茶色の建物が、展望レストランを運営する名門・城山ホテルです。城山というと歴史好きの方にはどうしても西郷最期の地というイメージが強いかもしれません。
当初計画の高さ110mだったとすれば、倍近い高さの展望スポットになっていた筈ですが、現在の天文館には高い建物は無いので、60mの高さでも十分な広がりと高さを感じる事が出来ます。
西側にもエレベーターを備えます。
繁華街・天文館のど真ん中で進められた再開発
千日町1・4街区市街地再開発は、競争力を失った老朽商業施設の建て替えを機に進められたプロジェクトです。繁華街一等地にある再開発地区内にあった28棟もの建物を集約し、地権者が研究会を発足させてから10年でビルを完成させるというスピード開発は、力を付ける鹿児島中央に対する危機感によってもたらされたものと思います。三宮センター街も今後、三宮駅周辺に次々に建設される再開発ビルによって人の流れが変わり、これまでの商業一等地の座は安泰ではなくなります。危機感を持ち、早期に再開発に着手しなければ、競争力を失い始めるでしょう。
CenTerrace TENMONKAN センテラス天文館
所在地 鹿児島県鹿児島市千日町1番1号
事業者 千日町1・4街区市街地再開発組合
敷地面積 6,086.89㎡
建築面積 5,466.04
延床面積 36,645.02㎡
階数 地上15階
高さ 63.16m
構造 鉄骨造 一部鉄筋コンクリート造
用途 商業施設 オフィス ホテル ホール
設計 アール・アイ・エー/東条設計JV
施工 大和ハウス工業
全面開業 2022年4月
公式サイト
https://centerrace.com/
スポンサーリンク
スポンサーリンク