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地域探訪: 東京・麻布台ヒルズ特集 後編 緑溢れる立体ランドスケープ都市は三宮センター街再開発のコンセプトにできないか



森ビルの開発プロジェクト最高峰・真骨頂というべき巨大な再開発エリアである麻布台ヒルズ。特集後編は特筆すべき中央広場と2.4ヘクタールにも及ぶ緑地エリアとその内部に散りばめられて配置された商業エリアについて取り上げたいと思います。



施設内の商業施設の総称を「タワープラザ」とし、麻布台ヒルズ森JPタワーの低層部を中心に、緑地エリア周辺にも多数の低層棟が展開しています。麻布台ヒルズ森JPタワーのメインエントランス前から広がる緑地が中央広場で最も人が多く集まるエリアとなっています。



タワープラザエントランス前の「アリーナ」と名付けられた巨大なアトリウム空間。渦巻きや鳴門雲をモチーフにしたようなデザインの重厚な大屋根・「The Cloud」の下にイベントスペース・オープンテラスが設けられています。天井高が非常に高く、圧巻です。



タワープラザの店舗面積約23,000平方メートル。150店舗が出店。麻布台ヒルズ森JPタワー部分では地下1階から地上4階に展開しています。



エントランスから内部に入ると、エスカレーターを有する巨大な吹き抜けに出迎えられます。

4階までの吹き抜けは直線と曲線を組み合わせた柔らかな印象を与え、色温度を落とした照明で派手さを抑えつつ、エレガントで上品な商業空間を演出しています。



1-2階はアパレル・ファッションを中心としたテナント、3階は家具・雑貨・書籍・レストラン、4階はレストラン・雑貨・クリニック等のテナントが集結。コンランショップ東京や多くのブランドの旗艦店が居を構えます。



タワープラザ前には水辺の庭園空間。水を使う演出はランニングコストが高く、老朽化した際のメンテナンスも大変なので、最近の再開発では避けられがちですが、麻布台ヒルズでは惜しげもなく水の演出が随所に見られます。



タワープラザ前から見上げる麻布台ヒルズ森JPタワー。330mの高さは、現在、日本一。JR東京駅前のトーチタワーに抜かれる予定ですが、2つのタワーの間には地理的に隔たりがありますので、このタワーが周囲を蹂躙する状況に変化はないでしょう。



オフィスエリアやアマンレジデンス東京等、タワー内部へのメインエントランスは別に設けられています。



中央広場は緑の溢れる潤いのある空間で6,000平方メートルが費やされています。六本木・麻布エリアのど真ん中に癒しの緑地が出現しました。



大都会の真ん中にいながら、開放感に溢れた緑の憩いエリアは非常に気持ちが良い空間です。



小河の演出も設けられています。



階段ベンチのある休憩スポット。再開発エリア全体が丘陵地に横たわっている事を逆手に取り、敢えて緑の丘を設けてアップダウンの立体的な緑を演出。



緑地内の外縁部に低層の店舗棟が配置され、ガーデンプラザとして商業空間が整えられています。



超高層は飛びっきり突き抜けて日本一。低層棟は角を丸くしたハコを組み合わせた可愛らしい形状です。



ガーデンプラザに出店しているテナントの多くは主にハイブランド。



緑地に面した路面店が賑わいを生んでいます。



再開発エリアは単純な四角い形状ではなく、十字形になっている為、麻布台ヒルズの建物と道路を隔てた再開発エリア外との差は大きいようです。



ガーデンプラザエリアにはA〜Dのブロックに分かれて建物が配置されており、商業フロアと住宅から構成されています。



ガーデンプラザCの地下からアクセスできる中央広場の地下には、約4,000m²の広さを誇る大規模なフードマーケット「麻布台ヒルズ マーケット」が整備されています。



ガーデンプラザのハイブランドの入る店舗棟。もし今後、三宮センター街やさんセンタープラザの建て替え・再開発を考える際には、従来のアーケード商店街という枠組みを一度、リセットし、麻布台ヒルズのように中央に緑の溢れる緑地を中心とし、周囲を低層と高層の建物で囲む全く新しいコンセプトの都心商業地区を検討できないでしょうか。

中央幹線も緑のストリートとし、商業、業務、宿泊、文化、公共、そして居住も含む複合開発が望ましいと言えます。

麻布台ヒルズ規模の開発は難しいとしても、神戸一の商業・最高路線価地地区を含むだけに持てる全ては注ぎ込む事ができる筈です。それにはやはり大手デベロッパーの参画が必須であり、神戸市がこのコーディネートを積極的に進める必要があります。



ガーデンプラザの中で最も規模の大きいガーデンプラザAとB。ヘザウィック・スタジオによって設計された連続する立体複合施設は非常に独創的です。



東京が世界の大都市と国際的な競争を打ち勝つにはこれくらいの奇抜さが無ければ、難しいと言えるでしょう。



独特なデザインの中にしっかりと機能性を持たせた立体的ランドスケープは新しい東京を象徴する景観です。



その他の東京都心や全国を含めて様々な再開発プロジェクトが進められ、各地に新たなランドマークが次々に誕生していますが、この麻布台ヒルズを超える内容のプロジェクトは現在、完成済の中では見つからないと思います。



富と権力の一極集中がもたらした象徴的なプロジェクトとも言えるでしょう。



森ビルはこれから更に第二六本木ヒルズと呼ばれてきた六本木5丁目西地区市街地再開発に挑む計画で、こちらにも麻布台ヒルズに匹敵する約8ヘクタールに及ぶ事業地に高さ327mのオフィス棟、288mの住宅棟を中心とした新たな複合都市を7,000億円という巨額投資によって誕生させるプロジェクトが始動します。神戸の都心全体の開発で試算された投資額が7,500億円程だったので、史上最高の事業費規模とは言え、たった一つの都心再開発プロジェクト投資額が神戸の都心全体に数十年に渡って投じられる規模と同様というのは驚愕です。
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POSTED COMMENT

  1. kkbb より:

    三宮センタープラザ街再開発は、こべるんさんの仰るように神戸市民の悲願とも言えるんじゃないでしょうか。

    でも残念ながらいまだあの阪神淡路大震災を広島長崎の原爆被害と同様に捉え、いつまでも自制の象徴として報道する地元メディアや、社会主義に燃える首長や、神戸は地方都市でいいとする自虐サヨク市民群のもとでは巨大再開発は悪行にも捉えられニッチもサッチもいかないのが神戸市の現状でしょう。
    JR、阪神、阪急、市営地下鉄、ポートライナー。
    これら鉄道交通の一大拠点ともいえる三宮のド真ん前に残された大再開発用地案件が一向に進まないのは忸怩たる思いです。
    ここにオフィス、ホテル、学校、病院、商業施設などを一体的に備えた高さ300m級の巨大複合ビルが建設されればそれだけで話題になり、神戸市の復権につながると予想されます。
    当然、区分所有者の多さや反社の存在、立地的な開発の難しさも理解できます。
    最近、わたし自身あまり好きでもないタワマンを、市の広報メディアを使って害悪と喧伝しまくる市長の存在がもの凄く疎ましく感じます。
    もうこういった政治家は不要です。福岡市のように大手デベロッパーや大手企業をうまく活用、協働し、再開発を盛り上げ活性化してくれる政治家が登場して欲しいです。

    • より:

      >オフィス、ホテル、学校、病院、商業施設などを一体的に備えた高さ300m級の巨大複合ビル

      ???

      300mであることの必要性って?論理的に説明してください。興味ありますんで。

  2. kkbb より:

    オフィス、ホテル、病院、学校、その他の機能を備えたこの複合ビル構想は神戸市の未来創造委員会で神戸市会議員から出された構想です。
    高さ300mは盛りましたが、それぐらいの規模でやらないと中規模のビル(マンション)で三宮は埋め尽くされ一地方都市の基準に落ちぶれてしまいます。
    一棟のスーパートールで近代都市観はずいぶん変わります。

  3. カン より:

    いいですね。
    麻布台ヒルズも控えめに340mですから、300mでも別に驚く高さにはあたりません。麻布台ヒルズを実際に見てみれば判ります。
    三宮の狭小地には、本来は土地面積効率の高い巨大ビルが似つかわしいですから、300mの複合ビルは大変理想的な選択です。
    JRの駅ビルはもう固まっていますから、やはり本命はさんセンタープラザですよね。あそこをまとめ切れる力量が今の市長に最も求められる力だと思います。

  4. sirokuma より:

    大規模開発で用いられる総合設計制度や特定街区により公開空地が創出されますが、東京都では制度適用後、平成31年までに約2,000,000㎡ 605,000坪の空地が創出されています。これらにより歩道が拡幅されたり広場・公園として活用されたりと足下の空間が拡張整備されてきました。しかし、閉鎖的空間となり未利用空間となっている所も多々あり最近その利用方法が見直され、例えば、防災空間としたり、キッチンカー・移動販売用にレンタル可能にするなどの規制緩和も進んでいるようです。
    神戸市は、高層化=土地の集約化を阻む一方、足下の空間を整備拡張する為に都心部オフイス・商業ゾーンの車道を削り歩道化しています。
    産業振興を諦めたかのように人口減社会を念頭に置き過ぎ高層化を阻み盆栽の様な都市に変貌させても神戸市の人口減少は止まらず市勢も低下し未来はないと思います。

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