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特集: そごう神戸店の神戸阪急転換は神戸にとって正しい選択だったか



今秋で屋号転換から3年を迎える神戸阪急・旧そごう神戸店。エイチ・ツー・オー・リテイリング傘下に置かれてから数えれば、早5年が経過しようとしています。その間、インバウンド需要の消滅やコロナ禍等、大きな障害のうねりが流通業界を襲い、ECの更なる急成長を促した事で、百貨店を含めた既存の流通事業モデルが成立しない環境が生まれました。

そごう・西武を擁するセブン&アイ・ホールディングスも傘下の百貨店を持て余していた上での、そごう神戸店の譲渡劇に至りましたが、この阪急への転換は正しい選択肢だったのか。無論その解はまだ出た訳ではありませんが、それ以外の解は無かったかも含めて考えてみたいと思います。

神戸阪急の反転攻勢開始

そごう時代から数えて20年ぶりの大改装



エイチ・ツー・オーは、そごうが西武と合併してミレニアムリテイリングが誕生した際に、そごう神戸店新館にLOFTを入れる等した大改装が行われて以来、20年ぶりとなるリニューアルを進めており、今秋までに全面開業を迎える予定です。

神戸阪急への屋号変更時は、地下階の食品売場の改装に留まっていましたが、ここに来てようゆく本腰を入れた全館改装を行い、譲渡から5年後にようやく神戸阪急が完全体として営業を開始する事になります。

当初の構想からはトーンダウン?



今回の改装には80億円が投じられており、フロアの9割を改修するという内容です。かつては1,000億円以上を売り上げていたこのターミナル百貨店の昨年の売上高は285億円に留まり、売上の回復に期待の持てる改装内容かとは思いますが、譲渡劇が報じられていた際には、建て替えを視野にプロジェクトチームの発足という話も出ていました。

阪急阪神HDは当時、梅田の大阪神・新阪急ビルの建て替えに着手したばかりで、神戸の百貨店建て替えは、これが完了する21年秋以降と報じられていましたが、この建て替え事業にも遅れが生じ、今春に完成を迎えました。

しかし同HDは、この間に千里阪急を核とする千里中央の商業施設の建て替えを発表。更には本丸・梅田の阪急ターミナルビル」、「大阪新阪急ホテル」を一帯としたエリアの再開発に着手する方針を決定し、神戸阪急の建て替えはまるで消滅してしまったかのようです。80億は改装の投資額としては少なくはありませんが、神戸三宮阪急ビルと合わせて、三宮への投資は当面はこの改装までに留めるという意思の表れとも言えます。

 

そごう神戸店を巡る開発構想の歴史

そごう神戸店の自力再開発構想



エイチ・ツー・オーに譲渡される前、そごうは自力での神戸店再建構想を温めていました。当時、セブン社の幹部は「神戸店は改装すれば売上高1000億円級の横浜店くらいに化ける可能性がある」と考えていたといい、現在、アイング三宮パーキングとなっている立体駐車場の土地も購入。そごう・西武復活のシンボルプロジェクトになる可能性がありました。しかしながら、この構想はセブン社内の社内政治に翻弄されて幻と化し、そのままエイチ・ツー・オーへの譲渡劇へと一気に突き進む事になったのです。

アイング三宮パーキングの再開発構想

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そごう神戸店の起死回生策は過去にも試みられていました。敷地面積3,000平方メートルを越えるこの土地に、そごうが地上12階建ての再開発ビルを建設するという条件で、1996年に財団法人「民間都市開発推進機構」へ117億円で売却されました。しかし2000年にのそごう破綻によって計画は頓挫。2006年にセブン社がそごうを傘下に収めた際に、そごうがこの土地を買い戻しました。再度の再開発に挑戦しようという心意気が感じられますが、土地はそのまま阪急阪神HDに引き継がれています。

 

そごう・西武を待ち受ける将来

そごう・西武の譲渡先



セブン社は遂にそごう・西武を手放す決断を下しました。20年に渡る同グループでの経営下で両百貨店の状況が大きく変わる事はなく、シナジーを生み出す事は出来ませんでした。この5年はひたすら店舗数を大きく減らすリストラのみに徹している状況でした。

譲渡先には、他百貨店や流通グループが名乗りを上げる事はなく、投資ファンド等3社が応札。米国の投資会社であるフォートレス・インベストメント・グループが買収する方向で交渉が進められています。

フォートレスは店舗運営に、ヨドバシホールディングスとの提携を模索しており、一等地にあるそごう・西武の両店はヨドバシへの転換や建て替え、再開発が視野に入っているものと思われます。しかしファンドの真の狙いはあくまでも首都圏の旗艦ターミナル店であり、地方店は切り売りされる可能性も極めて高く、必ずしも明るい将来が待ち受けているとは言えません。



ヨドバシはこれまでも独自に駅前一等地で経営不振に陥った百貨店を買い取り、その跡地にヨドバシカメラと専門店やホテル等を組み合わせた複合商業施設を開発してきました。

同様に残ったそごうや西武を活用して、開発を進める狙いがあるものと思われます。



ヨドバシカメラは三宮への出店も模索していたと言います。その出店地はズバリ、当時のそごう神戸店。阪急阪神HDへの譲渡が実現しなければ、ヨドバシ化の最有力候補の一店になっていた可能性が高かったと思われます。

「神戸阪急」は神戸にとって正解か?



改装に留まり、建て替えが遠のいた神戸阪急。「芝田1丁目」を中心とした梅田の再開発は2035年頃の完成を目指すとされています。もし神戸阪急の建て替えはその後に回される場合、解体と新築工事を含めて、2040年以降の完成になる可能性が極めて高く、20年近く先の話になりかねません。三宮の再開発は今後5-10年でかなり進む予定ですが、今の老朽化した神戸阪急がまだ10年以上も三宮の顔であり続ける事は決して神戸の活性化にプラスではありません。ヨドバシ+高層複合化の方が、広域圏・特に神戸以西からの集客に大きく寄与する可能性が高く、そごうのまま維持されていれば、もっと早い段階で再開発される事になったでしょう。

阪急である以上、梅田に関わる案件が最優先・最重要であり、三宮に梅田と同規模の投資が行われる事はありません。関西ドミナント戦略を遂行したい阪急阪神HDにとって、西の拠点ターミナルである三宮により強力な他社の進出は阻止しなければなりませんでした。そごう神戸店の取得は、自発的というよりも環境がそうさせたと言っても過言ではありません。

地方都市にあるそごう・西武の今後を占う上で、そごう広島店の動きが一つの指標になるものと思われます。都心立地で地域の中核を担う同店をファンドとヨドバシHDがどう扱うのか。建物の老朽化は激しく、再開発は必須とかと思われますが、早期に着手できれば大化けする可能性を秘めています。



しかし阪急は三宮再整備において、真っ先に再開発に着手した三宮再開発の立役者でもあります。「神戸阪急が正解だった」と自信を持って言わせてくれるような将来をできる限り、早期に実現してくれる事を切に望みたい次第です。建て替え着手のリミットは2030年頃までかと思います。それまでには三宮自身も阪急建て替えを決断させるに相応しいターミナルに変化を遂げていなければならないでしょう。

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POSTED COMMENT

  1. 水泳男子 より:

    個人的には阪急になって良かったと思います。
    百貨店ってオワコンと言われますが、150万人都市の玄関口になる三宮に百貨店が無いのは違和感があります。

    仮に阪急などそごう跡に百貨店が入居しなくて、ヨドバシカメラになった場合、建替はしたと思いますが、百貨店以上に電気屋って行きますか?と思います。正直、ヨドバシカメラはJR三ノ宮駅北側に出店でも良いかな…北側の賑わいにもなるし。

  2. Sannomiya Worker より:

    ヨドバシは駅裏がよく似合います。
    ヨドバシに三宮の一等地を与えるのではなく、ヨドバシを利用し、2等地を一等地にしてもらうのが正解かと。
    ダイエー無き今、たとえ大阪が本丸だとしても、神戸は阪急阪神ホールディングと組まなくてどこと組むのでしょうか?
    小売業は時代の変化で良い時はにじり寄ってきますが、不景気になるとすぐ撤退します。
    ですが、大不況でも阪急電車、阪神電車の鉄路が神戸から撤退することは無いでしょう。
    幸いJRビル、バスターミナルの計画は進んでいます。
    神戸阪急はそのあとで良いんじゃないでしょうか?

  3. 神戸太郎 より:

    興味深い記事を有難うございました。色々な計画が出ては消えていった経緯がよく分かります。ヨドバシの進出も良いことかもしれないですが、それこそ、「どこの駅前にもヨドバシなのか?」という気もします(大阪駅、京都駅のように)。
    私は、JR三ノ宮駅ビルに阪急百が入居し、今の神戸阪急百が別館になる(なって建て替える)というシナリオもあるような気がしています。ただし、その時は百貨店ではなく、高級ショッピングモール(Ginza Sixみたいな)かもしれません。阪急阪神グループは関西ドミナント計画がありますから、神戸や関西だけでなく、広域から人を呼べる施設をいつの日か創ると信じています。神戸空港国際化を待っているのではないでしょうか。…ただの推測(妄想)ですが…

  4. カン より:

    うーん・・
    正直ヨドバシがない駅前ですから、地方でいえば三等地です。
    いくら酸っぱい葡萄を叫んでみても、全国的な三宮駅前の評価は、その程度ということです。だから、阪急もボロボロのそごう店舗を、改装程度にしか維持しないということです。

    当初、梅田駅前にヨドバシが進出発表した直後も、競合相手の三越でなくて大いに落胆したという声が大きかったです。
    いまやヨドバシ梅田は東京を抜き全国一の売上で、ヨドバシ進出がなければ大阪ターミナルシティの構想が無かったといわれるほど梅田の街に巨大な変化を与えました。
    そのヨドバシは今に至るまで神戸を始めとする周辺市場から巨大な売上を今に至るまで吸い上げ続けています。
    これがいま直面している神戸の現実であるということ、少しでも共有できれば・・・そう思うのですが。

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