東京

地域探訪: 東京 銀座の街づくりに学ぶ 銀座らしさを守るに課されたルール


東京中央区・銀座は公示地価で全国一を常に誇る日本の最高峰に位置する商業地区です。銀座中央通りと晴海通りを中軸に有楽町駅前から東側一帯に広がっています。銀座三越、松屋銀座等の百貨店を筆頭に大型商業施設や高級ブランドの路面店、高級レストランやカフェ、割烹・料亭等、大通り・裏通りに関係なく、一等地での凌ぎを削っています。この街でも松坂屋、プランタン、西武百貨店、阪急百貨店等のデパートが姿を消すもしくは業態変更を遂げており、またファストファッションブランドやインバウンド向けの店舗も増え、変遷は非常に激しいというのが現状です。ある意味、日本の商業の縮図と言えるの かもしれません。


有楽町駅前の数寄屋橋交差点。銀座ソニービルがあった南東角は暫定的に広場化されています。隣に建設された銀座メゾンエルメス。建物自体がアーティスティックですが、丸ごとごとエルメスビルは単なる物販のみには留まらず、エルメス財団の運営するアートギャラリーやミニシアター等、文化拠点としても機能しています。


南側の角地はかつてあった銀座東芝ビルの建て替えによって誕生した東急プラザ銀座。地上11階 地下5階の大型商業施設で伝統工芸の江戸切子をモチーフとしたファサードが特徴的な銀座の新ランドマークで2016年に開業しました。インバウンド需要の取り込みを狙い、6階にFIND JAPAN MARKET、8階にLOTTE DUTY FREEを誘致しています。


有楽町・銀座でかつて最大のランドマークと言えば有楽町駅前の有楽町マリオン(正式名称有楽町センタービル)でした。朝日新聞、東宝、松竹が事業主で、西武有楽町店、有楽町阪急、日本劇場をはじめとする大型映画館から構成される都心型複合商業ビルのハシリで1期計画の本館は1984年の開業。その後、新館、別館が加わり、3棟から構成されています。2000年代に入り、セブン&アイのテコ入れにより西武百貨店が撤退し、跡にJR東日本のルミネが駅ビル以外で初出店。阪急も阪急MEN’S TOKYOへと改装されました。競争は激化していますが、立地性とその存在感から現役の複合施設として稼働しています。今の東京の勢いであれば、この有楽町マリオンでさえも水面下では建て替えの検討を開始しているのかもしれません。


数寄屋橋交差点はその四角それぞれの建物にランドマーク性があります。不二家の看板で有名な銀座クリスタルビル。不二家の本社と不二家数寄屋橋店でしたが、2007年に偽装問題が発覚しで経営不振に陥り、同ビルを売却しました。まもなく築40年になろうとしていますが、未だ色褪せないアイマークです。


そしてその隣にあるのがヒューリック銀座数寄屋橋ビル。ここにGAPジャパンがブラックシップストアであるGAPブラックシップ銀座を開業。

銀座は各ブランドやデベロッパーがショーケース的な存在の旗艦店舗の出店やビルを建設する傾向が以前より強まっています。よって個性的な建築のオンパレード化が進んでいるのです。


晴海通りと中央通りの交わるで銀座4丁目交差点はまさにザ・銀座としてその顔となっている場所です。その交差点で一際目を惹く建物がGINZA PLACE。サッポロ銀座ビル跡に建設された商業施設です。1-2階に日産のギャラリーとカフェであるNISSAN CROSSING。4-6階にソニープラザから一時移転しているソニーストア銀座等が入居しています。


中央通りを越えると晴海通りの先には歌舞伎座の再開発で完成した超高層ビル・歌舞伎座タワーが聳えています。


GINZA PLACEの向かいにあるガラスの円筒形の三愛ビルも銀座の顔の老舗です。


しかし何と言っても銀座4丁目交差点はこの建物抜きには語れません。銀座和光です。1932年竣工で最上部に時計塔を有しています。煌びやかで斬新な建築が林立する中、凛とした佇まいで一等地に鎮座しています。


銀座中央通り。銀座には「銀座街づくり会議」が発足されており、「銀座らしさ」を守って開発を行うというルール作りを主眼としています。このルールは「銀座ルール」と呼ばれ、容積率や建物の高さ制限、駐車場などに関する特別ルールが課されています。


このルールを巡って大きな論争を巻き起こしたのが銀座松坂屋の建て替え計画です。Jフロントリテイリングは当初、高さ190mの超高層ビルへと生まれ変わる予定でした。しかし銀座ルールによる高さ56m上限の適用を巡って論争となり、最終的には超高層ビルの建設が断念されました。


そして誕生したのがGINZA SIXです。地上13階 地下6階 約9,000平方メートルの敷地面積に8,840平方メートルの建築面積を適用し、延床面積147,600平方メートルの巨大なビルが2016年に完成。


地下2階〜地上6階及び13階の一部に241店を誘致した商業施設と残りのフロアを森ビルと住友商事の保有するオフィス、多目的ホールや観世会の能楽堂等の文化施設も備えた複合ビルです。


老舗百貨店の集積地であった銀座のど真ん中で旗艦敢えて百貨店という業態を捨てて、高級なファッションビルとオフィスという複合商業施設となった事で従来の百貨店の枠に囚われる事のない店舗造りが可能となりました。新しい銀座の顔であり、銀座最大の商業施設誕生という事もあり開業初年度は来館者2000万人を達成。しかし初年度から撤退するテナントも出る等、先行きを懸念する声も聞かれました。2年目の売上や集客数は発表に至らずでしたが、Jフロントの好調に貢献していると見られています。巨大なオフィスフロアを併設している為、ビル全体で収益を確保できるようです。またこの建物で培われたノウハウは9月にリニューアル開業する大丸心斎橋店にも活かされる予定です。


銀座は日本一の高級ブランド街である事は揺るぎのない事実ですが、同じブランド店集積地の旧居留地との違いは銀座はその多くが直営店でしかもビル丸ごとを建設した直接投資である事です。


よって各ブランドがそれぞれの持つ世界観を表現しようと個性的なファサードを持つ建物が数多く存在します。


しかし銀座中央通りはその地価の高さ、厳しい高さ制限等が建物の集約や再開発の促進を妨げており、GINZA SIXは寧ろ例外です。各地権者がそれぞれの持つ狭小空間を最大限に活用とする為、究極の鉛筆ビルの林立を促進しています。


従って既存ビルの建て替えは特定都市緊急再整備地域に指定されている事も手伝って、必然的に高さ56m化が進んでいます。ここまでの高さになると銀座らしさとは何かという普遍的な議論になってきます。高層ビルの無い建物のスカイラインの揃った街が「らしさ」でしょうか。ある意味、神戸のトアロードも規模は違えど、銀座のように狭小ビルが通りの両側に林立してチャーミングな店舗が集積しており、類似点があるような気がします。


中央通りの化粧品店前には開店前から長蛇の列ができていました。外国人観光客が殺到しています。銀座におけるインバウンド需要の高さを示す現象の一例です。神戸も化粧品を活用したインバウンド需要の創出を検討できないものでしょうか。


有楽町の駅周辺になると高層化の波が顕著です。スタイリッシュな店舗とホテルの複合ビルです。


有楽町マルイの入るイトシアはマリオンと並ぶ駅前のランドマークです。


超高層化が著しい東京都心において銀座は稀有な存在です。メリハリがしっかりと付けられるからこそ、頑固一徹に高層化を規制するというのは考え方としての一貫性はあるものと思われます。寧ろ中途半端な規制程、街の変遷に悪影響を及ぼします。


おまけですが、有楽町駅の高架下にタニタカフェがありました。あのタニタの直営カフェです。


ランチをトライしてみました。ヘルシー且つ見た目よりもボリュームがありました。タニタカフェを神戸にも誘致したいですね。

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POSTED COMMENT

  1. 匿名さん より:

    銀座が神戸市長が目指したい神戸の姿なのかもしれませんね

  2. 匿名さん より:

    旧居留地の方がこじんまりしてるけど
    美しさでは負けてないと思う
    あとは旧居留地にファザードに凝った建築を増やせばもっと洗練される

  3. YP より:

    三ノ宮中央通り

    三宮中央道りをオシャレ建築で埋め尽くしたら
    良さそう
    個人的に三宮中央道りの雰囲気好き

  4. 匿名さん より:

    銀座より
    代官山とか自由が丘とか横浜元町ショッピングストリート・横浜山手町を参考にした方が現実的だし良いんじゃないんですか?代官山なんて日本一オシャレな街と言われてるみたいですし…

  5. ロッキー2 より:

    三宮再整備のクリススクエアの社会実験が始まります。
    2025年ごろのクロススクエアの予想パースが発表されてJR三ノ宮駅ビルが薄く描かれていますが、ミント神戸ビルより低く、半分ぐらい(高さ50mぐらい?)に描かれています。バスターミナルビルは予想図に近い感じですが、これはどういうことでしょう?
    まさか…?

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