提言

三宮駅ビルと周辺再開発について考える

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見覚えのない街並みの写真にびっくりしないで下さい。ここはこべるんで合ってますよ!

久々の更新ですが、ここの所ロクに取材に行けていないので、どういった記事を掲載するか思案し、前から取り上げてみたかった提言にチャレンジすることにしました。

題して「三宮駅ビルと周辺再開発について考える」です。

今回、このテーマを取り上げようと思ったきっかけが、上の写真に写っている横浜駅です。写真自体はもう5-6年以上前のものですが、写真中央、高島屋の右横が横浜駅です。JR、京急、東急、相鉄の私鉄各線・地下鉄等6社局が乗り入れ、一日の乗降客数が200万人を越える巨大ターミナル駅です。駅周辺は横浜高島屋、横浜そごう等、年間売上高が1000億円を越える商業施設が林立する一大商業エリアでもあります。

先日、この横浜駅西口の駅ビルをJRと東急が共同で建替える構想が発表されました。地上33階、高さ195mの超高層複合ビルで平成31年に完成を予定しているようです。

ここの所、JR各社は駅ビル・駅ナカの新装、改修に力を入れています。駅舎や駅ビル程、立地条件的に不動産価値の高い建物はないはずで、それが都市の心臓部であるターミナル駅なのであれば尚更です。

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これまでの駅ビルの概念を変えたのは名古屋駅ビル「JRセントラルタワーズ」です。1999年に竣工し、世界一の巨大駅ビルとして注目を集めました。地上53階 高さ245mのオフィス棟、地上51階 高さ226mのホテル棟のツインタワーを足元で支えるのがジェイアール名古屋タカシマヤの入居する商業棟です。名古屋の玄関口にこの巨大駅ビルが完成したことで、名古屋都心の商業地図は大きく塗り替えられ、それまで不動の地位を築いてきた栄地区から一気に同タワーズを中心とした名駅エリアに開発の中心が移りました。

現在、名駅エリアは摩天楼の立ち並ぶ超高層ビル街に生まれ変わっており、更に名古屋ターミナルビルや中央郵便局、大名古屋ビルが超高層ビルに建替えられる予定で、大規模な不動産投資を引き入れるまさに”呼び水”になったのが駅ビルであるJRタワーズなのです。

このビルのもたらしたもうひとつの大きな功績は建物の高さを当時、東海のみならず日本有数の超高層ビルとして設定したことです。バブル期の構想が具現化した計画ですが、記憶が正しければ当初は260m級の建物になるはずでした(偶然にも規模縮小が報じられたJRの新ビルと同じ境遇です)。しかしこの後、同タワーズの設定した高さラインによって名駅は200m級の超高層ビルが林立することになり、まさにエポックメイキング的な役割を果たしたのです。

オフィス、ホテル、百貨店、商業施設、文化施設を組み合わせた巨大超高層複合駅ビルはその都市の活力を底上げするという成功モデルを示したわけです。

厳密に言えば、JRセントラルタワーズの竣工する2年前に京都駅ビルが先行して完成しています。こちらも駅ビルがこれまで中心商業地区であった四条河原町から京都駅前に開発の流れを流入させる形を作り上げました。京都という土地柄、ビルの超高層化は行われませんでしたが、名古屋同様にジェイアール京都伊勢丹、ホテル、文化施設の入居する巨大駅ビルが京都の商業地図を塗り替え、現在、京都駅周辺には数々の商業施設が誕生しています。

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京都、名古屋の成功を受けて、北の大都会・札幌でもJR北海道が駅ビルの大改築を行いました。2003年に竣工したJRタワーはオフィスやホテル日航札幌が入居する地上38階 高さ173mの超高層棟を中心として、大丸札幌店、シネマコンプレックス、専門店街等、3ブロックに分かれた巨大ターミナルビルです。札幌のJRタワーも名古屋、京都の例に漏れず、中心商業地区の大通エリアとの間で商業戦争を巻き起こしました。

JR東海、JR西日本、JR北海道の収めた成功を前にグループ最大のJR東日本もこの巨大駅ビルブームに乗り出しました。

東日本にはそもそも名古屋のタワーズが計画中であったバブル期、JR上野駅を300mの超高層ビルに建替える計画がありましたが、こちらはバブル崩壊と共に消滅してしまいました。

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従ってJR東日本初の本格的な超高層複合駅ビルは東京駅となりました。高さ200mのツインタワーと大丸東京店をコアに既存の地下街や丸の内口の赤レンガ駅舎の改修を進め、駅を中心とする複合都市「東京ステーションシティ」を一体開発しています。これまで東京駅周辺はビジネス志向が強く、ショッピングを楽しむ街ではありませんでしたが、丸の内の大地主である三菱地所が同エリアの老朽化ビルの建替えを進めており、各新ビルの低層階には、神戸の旧居留地のようにブランドショップを誘致し、界隈は重厚でシックな雰囲気を持つショッピング街へ変貌。そこへJRのステーションシティが輪を掛けて、エリアの発信力を大幅に増強したのです。

これらの開発の成功を西日本勢が指をくわえたまま静観しているはずがありません。JR九州は九州一の大ターミナル・博多駅の再開発に乗り出しました。老朽化した旧駅ビルを解体し、JR博多シティと呼ばれる新駅ビルを建設、阪急百貨店や東急ハンズ、シネコンが入居する巨大複合ビルとして来春に開業を予定しています。博多駅ビルも福岡都心上空が福岡空港を離着陸する飛行機の航路となっているために、超高層化はできませんが、京都駅ビルのように重厚重鎮な建物になります。他都市にて巨大駅ビル誕生を戦々恐々と迎えた既存中心街の例は、福岡でも例外ではなく、迎え撃つ天神地区でも競争の激化が不安視されています。

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そして関西では、京都に続いて、西日本一のターミナル・梅田に東京駅同様、大阪ステーションシティが誕生しようとしています。駅北側にはオフィスの入居する地上28階 高さ150mの超高層棟を中心とし、JR大阪三越伊勢丹やシネコン、専門店街が入り、巨大なアトリウム備えた新北ビルが誕生。

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南側の既存駅ビルであるアクティ大阪は、駅前広場の一部を使って新ビルを建設して既存ビルに連結させ、大丸梅田店が増床リニューアル。この二つの駅ビルを繋ぐ駅舎上には巨大ドームを設置し、大阪駅一体が巨大複合都市として生まれ変わろうとしているのです。

この駅ビル誕生により三越伊勢丹が大阪駅に進出することは、梅田に本店を置く阪急、阪神に大きな衝撃をもたらしました。経営統合した阪急と阪神は、阪急梅田本店の全面建替えに踏み切り、梅田の百貨店戦争激化は難波の高島屋大阪店の大規模増床改装を促し、天王寺の近鉄百貨店本店に全面建替えを進めさせ、そごうの心斎橋本店売却を決意させ、大丸心斎橋店に同本店ビルの買取を行わせたのです。つまりはJR駅ビル開発が発端として、大阪の大百貨店戦争が勃発することになりました。

更にはこれらの投資が梅田地区の活力を大幅に底上げし、関西最後の一等地と言われる貨物ヤードの再開発を進める大きな原動力になっていったのです。

京都、名古屋、札幌、東京、福岡、そして大阪。全国の巨大駅ビルが巻き起こしきた旋風は競争力のない商業施設の淘汰に繋がりましたが、苦境を乗り越えようとする各企業が積極的に大規模投資を行い、都市の新陳代謝を促し、魅力のある施設が誕生し、結果として総合的には活力アップに貢献していると言えます。

さて、話をここで横浜に戻します。全国の有数ターミナル駅が次々と巨大駅ビル化されていく中、300万都市の玄関口としては老朽化が進み、改築が望まれていた横浜駅。高さ195mの複合ビルは名古屋駅や東京駅に次ぐ超高層駅ビルになります。今回、発表された同駅ビルの概要で特筆すべき点はビルの高さだけではありません。

メインの建物は駅前棟と呼ばれる現駅ビル跡に建てられる超高層棟と、線路上空棟と呼ばれる商業施設ですが、ホームを横断するように、線路上空に駅ビルが建設されることになります。ビルの1階部分に駅が設けられる駅ビルは数多く存在しますが、横浜駅のように数多くのホームが存在し、頻繁に列車が運行している駅上空にビルを建設することができるという点にある可能性を感じました。

線路上空にビルを建てられるのであれば、三宮の駅ビル改良は大きな可能性を秘めていることになり得ます。

前置きが長かったかと思いますが、ここからが本題です。全国の数々の最新駅ビルを網羅してきた後に三宮の状況を見るのはいさかかの忍びさを感じます。

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JR三ノ宮駅、ポートライナー三宮駅に直結する現状の駅ビルは、ポートアイランドが街開きを行い、ポートピア博覧会とポートライナーの開業に合わせて1981年に竣工しました。低層階にはOPA(旧プランタンヤング館)上層階は三宮ターミナルホテルとレストラン街が入る10階建の建物です。

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旧神戸阪急ビル跡地に建てられた暫定的な現在の駅ビル。旧ビルが駅舎上空を覆いかぶさるように建っていたの対し、現仮設ビルは高架横の細長い敷地にのみ建設されました。仮設ビルとしながらすでに築15年。

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現在、改良工事が進行中の阪神三宮駅。その真上に立つのがそごう神戸店の入居する三宮阪神ビル。改装と増改築を繰り返していますが、中味は1933年竣工の古い建物です。

さて、これらの中途半端、仮設、古いと三拍子の各現状駅ビルは150万都市の神戸の玄関口を任せるにはあまりにも貧弱としか言いようがありません。

まずJRに関してですが、大阪駅の改築後にJR東海道線の京都、大阪の両駅が最新鋭の駅ビルに建替えられた今、三ノ宮駅をぜひとも次の投資対象として欲しいものです。2008年の中期計画でJR西日本は「京阪神エリアにおける線区価値の向上」と題して、拠点駅を中心とした流通事業、不動産事業の拡大、駅を中心とした周辺開発や駅間開発の推進を謳っています。現状、最有力は天王寺駅かと思われますが、駅ビルの建替えは暫く見送るようです。同駅周辺は大規模再開発が目白押しですが、三宮のポテンシャルは天王寺以上あるものと思われます。

阪急に関しては、やはり市営地下鉄への乗り入れが実現しない限り、駅ビル再建の話は前進しないものと思われます。この際、市も頑なに拒まずに早期再建について前向きな検討をするべきです。

阪神は積年の構想である東口改良工事を進めていますが、頭上の駅ビル改築といった話は現状、皆無と言ってよいでしょう。

このような条件下で私が推進したい計画素案は以下のような構想です。

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まずはJRの駅ビルですが、線路上空建設が可能なのであれば、かなりの面積を建物に費やすことができそうです。同様の工法が阪急の駅ビルにも適用できます。こちらもこの形であればかなりの面積を賄うことが可能です。この案を遂行するには敷地の点も含めて、JRと阪急が共同で開発を進める必要性があります。従って、一体開発を基本にして、ビル名称やデザイン等を統一。東棟・西棟のツインタワーとして、相互連携し神戸の玄関口に相応しい一大ステーションシティとします。

JRの駅ビルである東棟には専門店街を設け、上層階はオフィスタワーに。阪急の西棟には、ハーバーランドから神戸阪急を移転、上層階はホテルとし、両ビルの構成内容がバッティングしないよう図ります。JRのタワー+巨大百貨店という伝家の宝刀は、阪急、そごうと競合させてしまうことにもなりますので、あえて避けます。専門店の伏線としては、今後、首都圏/関西圏で新規進出を計画しているパルコという案もあります。

これを機に阪急三宮駅は地下化し、市営地下鉄に乗り入れを開始。北側の駅前広場は、雑居ビルの移転解体によって拡大し、未だ分散しているバスターミナル機能を集積。 南側は人工地盤を設け、駅前各施設との空中デッキによる連携を強化。広場地下も拡大して、さんちかを増床。

阪神ビルに関しては、以前、提案として掲載したニッセイビルと三宮ビル北館を共同建替えし、新ビルにそごう本館が移転入居。その裏手にある立体駐車場に超高層複合ビルを建設し、下層階をそごうの別館、上層階をニッセイと森本倉庫の共用する業務施設に。そごうの移転した阪神ビルは解体して、再開発。同地にはマルイやロフトが共同移転する案やヨドバシカメラやビックカメラが進出するという手もあります。

駅前に集中し過ぎるきらいはありますが、他都市のように既存商業地区と駅前地区の距離が離れて分断されている訳ではなく、神戸の場合は三宮-元町(旧居留地や南京町を含めた)までが連続した一大商業ゾーンであるため、集客された人の流れの行動パターンは駅前地区のみで完結せずに、元町方向まで自然に回遊するので、一エリアのみの独り勝ちといった様相には陥りにくい環境が整っています。今回の私の案はできるだけ、既存進出組みの施設更新とその配置変更によって適材適所化を図ることを主眼としています。もちろん百貨店や商業ビル間の競争が激化しますが、更に巨大な大阪との地域間競争を前にしては、まず神戸にいかに人を留め、人を呼び込むかがポイントになります。

三宮の駅ビル改造を起爆剤に駅前の現状に改革をもたらし、ひいては神戸都心の活性化に繋げていく。夢物語のような構想ではありますが、決して不可能ではないと思いますが、皆さんはどうお考えでしょうか。

*上記駅ビル改築案に関しては、線路上の建物建設が、構造上/建築基準法上/工事過程上/工期・投資額上等において、現実的にクリアできるものなのかどうは定かではなく、あくまでも素人考えに基づいたものです。

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