先日の日経新聞に東京都が容積率の上乗せを認める事で老朽化する分譲マンションの建て替えを促進する政策・制度を創立すると報じました。旧耐震基準の老朽マンションの建て替えを民間事業者を活用して進めていくという方法です。
神戸でも震災復興時に被災したマンションを高層化する事で建て替えに必要な資金を捻出する実績が数例あります。東京都は建て替えの玉突きが起きる事を期待しているようです。この建て替えには建て替え後のマンションの高層化が必須条件となっています。
一方、神戸市長はタワーマンションの規制に積極的です。
http://hisamoto-kizo.com/blog/?p=7993
市長ブログ 砂原庸介『新築はお好きですか』
確かにタワーマンションは建設されると、長期に渡ってその場所に存在し続ける可能性は中低層の建物よりは高いでしょう。ただその分、その構造体は長期使用に耐えられるよう、より強固に造られています。またタワーマンションは基本的にデベロッパーが再開発地区など、利便性の高い場所を選択的に選んでプロジェクト化する為、竣工後もその資産価値の下落は最低限に抑制されます。人気が高いので、売却されても次の入居者がすぐに購入しますし、価格が下落しないので、住民層の経済力も比較的高いレベルで維持されます。
60-70年代の経済成長期に大量に郊外に建設され、その利便性の悪さから若い世代には敬遠され、居住者の高齢化と老朽化が進み、一部にスラム化が起きている旧公団の団地群とは根本的に状況が異なります。タワーマンションでは住民の新陳代謝が一定の割合で起きます。また人口減少時代の中での大量の新築住宅ストック増加は確かに問題ではありますが、利便性の高い一等地では他に無いという希少性が需要の維持を助けます。現在のタワーマンション建設ラッシュも郊外で起きている訳ではありません。経済成長期の人口集中は都心に居住機能を許さなかったからこそ、郊外への都市拡大、所謂ドーナッツ化現象を引き起こしました。しかし今のタワー需要は職住接近によって通勤時間を減らし、より質の高い生活を送りたいという層によって支えられているものです。これは都市として従来、健康的で自然な流れかと思います。巨大・肥大化し過ぎた日本の都市が健全化していく方向にあるとも言えます。
従って単純に全てのタワーマンションが時間の経過によって巨大なスラム化とするという危惧は短絡的過ぎますし、これはタワーマンションに限らず、一戸建てや低層マンションでも同様のリスクが発生します。万が一、そうしたタワーマンションが将来的に出現しても、比較的、敷地の大きなタワーは民間が買い取ってリノベーションもしくは再開発できる可能性が高く、寧ろ一戸建て住宅の方が空き家化してしまうと放置される傾向が高いものと思われます。
もうすでに100年以上に渡って摩天楼が街の中心的役割を果たしてきた米国NYやシカゴでは業務ビルと住居用のコンドミニアムが混在して林立しています。欧州でも経済の中枢であるロンドンでも高層マンションが次々と建設されています。こうした欧米の大都市の中心部エリアにスラム化した高層マンションがあるでしょうか?確かに郊外には治安の悪い公営高層団地群があるのも事実です。
海外のように既存住宅ストックをもっと活用して中古住宅の売買を促進し、住宅の使用年数を長期化する事は必要かと思います。しかしそれと利便性の高い都心エリアのタワーマンションの建設を抑える事は結びつきません。「タワーマンション=悪」の図式を描こうとする為の意図的なプロパガンダです。
寧ろ都心のタワーマンションは都市の活性化に大きく寄与するものです。考えるべきは抑制ではなく、タワーマンションをいかに都心の景観に溶け込ませ、街の賑わいに貢献させるかです。タワーマンションのデザインに大きな制約を課している神戸市の独自の消防条例を改変して、よりデザイン面の自由度を与えて住宅感を低減し、低層部には店舗を複数設ける事を義務付けるべきです。デザインが陳腐にならないよう、これこそ景観審議会が厳しく審査した上で、建築許可を出す仕組みに変えます。学校不足問題は生じますが、新校設立の費用の一部はデベロッパーにも求めていくべきです。
何でも規制、何でも抑制。需要を力で抑え込む事は自然の摂理に反します。伸びる方向を適正化してより都市の活力に活かす事を考えるべきです。
都心のタワーマンションについて考える
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こべるんさんの書かれている通りです。
訳の分からない規制は誰の利益になるのでしょうか。
市長は都市を衰退させたいのでしょうか。
他方、北区の市営桜の宮住宅建替事業の記事を読みました。
https://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/201804/0011176171.shtml
人口減少が続く北区で 『何故!』
民間資金の導入等もっともらしく書いてありますが、「負動産」になることは間違いないでしょう。
老朽化が進んでいるなら、耐震補強等で対応すれば良いのです。
建替えによる費用を居住者に応分負担させることは不可能です。
多額の税金の持ち出しになります。
またこの場所が、車前提の生活より都市部の利便性を好む若年層に受け入れられるとも思いません。
神戸電鉄の利便性向上の意見もありますが、都市部の魅力が上がり、今よりも神戸で職住を完結させる環境が整わない限り、不可能だと思います。
阪急阪神ホールディングス株式会社は、地方公共団体でも慈善事業家でもありません。
数年前、知人は相続した鈴蘭台駅徒歩7分の戸建を建築時の25%の価格で売却しました。
90年代半ばの購入ですが、これが北区の不動産事情だと思います。
この計画は中央区在住の納税者からすると理解に苦しみます。
神戸市は他都市の逆張りをして何が良いと思っているのでしょうか。
都心タワーマンションがダメなら、じゃあ何なら良いのか、が問題です。
・低層マンション?都心ではそもそもペイしない。
・オフィスビル?現状で建たないということは、神戸に魅力が無いということ。
魅力を増す誘致策や規制緩和も無い。若しくは無視されるレベル。
・店舗?ホテル?同上
・オフィス・ホテル・店舗・住宅等の複合ビル?同上
・なりゆきまかせで放置?結果的にそうなってますね。
禁止するだけの「何でも反対」は、神戸の足を引っ張る敵です。
一応何らかの対策は行ったが空振り、は、単なる無能です。
郊外の公営住宅団地を全棟建て替えるのは確かにあまりスマートとは思えませんね。都心部の居住を制限し、郊外の居住を再度、促進する。時代を力尽くで戻そうとする無駄な行為かと思います。
全く同感です。水戸黄門の印籠を出しっぱなしで飽きられている状態になりつつあります。