世界情勢は不透明感が漂う中、三宮の再配備やウォーターフロントの再開発、神戸空港の国際化等、プラス要素が複数存在し、川崎市重工やアシックス、UCC等、神戸を代表する企業も業績好調ですが、今回は、神戸市が発表した神戸経済動向統計から眺めた現況と今後の見通しについて考えたいと思います。
オフィス空室率動向

神戸の都心部における業務集積を推し量るオフィス空室率。オールグレードのビルを対象としていますが、コロナ禍以降の回復期にて、23年前半に大きく減少した後、後半に一時期、再び上昇に転じていますが、これは大阪にも見られた傾向です。そして24年より下降に戻り、1%台の低水準を維持している模様です。
かつては大阪へのアクセス性の高さから「コストパフォーマンスに優れたエリア」と位置づけられることが多かった神戸エリアですが、現在は歴史的な品薄状態(空室不足)に直面しており、賃料相場の上昇と相まって市場構造に変化が生まれています。

大手の不動産サービス会社(CBRE等)の調査によると、全国主要都市と比較しても、神戸のオフィス空室率は際立って低い状況が続いており、2026年には「オールグレード空室率が0.8%」という過去最低水準を記録するマーケットデータも見られます。
空室率が1〜2%台以下となると、企業が「ワンフロアを丸ごと借りる」「移転や拠点拡張を行う」といったまとまった面積を確保することが非常に困難な実質的な「空室ゼロ」状態にあると言えます。

その要因は、①新規オフィスビルの供給不足、②地元企業の集約・拡張需要およびIT・スタートアップ誘致、③コストパフォーマンスと利便性の高さ等が挙げられるでしょう。これに加えて、神戸市や兵庫県も庁舎の建て替えを進める為、民間ビルの床を借り上げて移転している事もこれに拍車を掛けています。

状況の改善には既に強力な布石が打たれています。JR三ノ宮駅ビルやバスターミナル周辺の再開発事業など、中長期的に新たな複合ビル・オフィスビルの竣工が予定されています。これらが完成すれば、長らく続いた供給不足が一定程度解消される見込みです。
低空室率の状態から、2027〜2029年には一時的な大量供給によって、空室率は大きく上昇する事が予想されます。また新築ビルへの移転に伴い既存ビルに「二次空室」が発生する事も予想されます。今後は、築年数が経ったビルがリノベーションやスペック向上を行えるかどうかが、空室埋め(稼働率維持)のポイントとなります。
国際会議開催件数

日本有数の港湾都市であり、国際的都市ブランドを誇る神戸市。医療産業都市をはじめとする先進的な産業集積と豊かな観光資源を背景に、これまで国内トップクラスの国際会議(MICE)開催実績を挙げてきました。2010年代の神戸市は、日本政府観光局(JNTO)等の基準における国際会議開催件数で全国トップクラス(東京23区に次ぐ全国第2位など)を記録するなど、国内有数の国際会議都市として高い評価を獲得していました。しかしコロナ禍後には状況が一変しました。

神戸市の国際会議は、医療産業都市として国内最大級の集積地(ポートアイランドを中心とした医療・研究クラスター)を持っているため、国際的な医学会やライフサイエンス系の会議が非常に多く開催されます。会議の目的としては、医学・医療・生物学関連(約 30% 〜 40%)、工学・技術・科学関連(約 20% 〜 25%)、社会科学・経済・教育・その他(約 35% 〜 40%)といった構成です。
特にポートアイランドにある「神戸国際会議場」や「神戸国際展示場」、「ワールド記念ホール」といった大型コンベンション施設が密集しているため、数千人規模の大型メディカル・サイエンス系国際会議の誘致・開催実績が目立ちますが、コロナ直前までは年間400件以上の開催が、コロナ後には100件に満たない状況で、国内ライバル都市にも水を開けられています。
ホテル稼働率

神戸市内のホテル稼働率もコロナ前と後では差が生じており、コロナ前には80%台を維持していたものの、コロナ後の回復はまだ70%にようやく届いたところ。また回復ぺースは鈍化しています。直近では時期によって変動はあるものの、平均して70%台後半、高い月には80%前後を記録するなど、全国平均と同等かそれを上回る堅調さを見せているとい明るい情報ソースもあります。これは神戸空港の国際チャーター便の就航が好影響を及ぼし始めている事が要因として挙げられるでしょう。
観光入込客数の推移

コロナ前には3,500-4,000万人に達していた観光客数も、コロナ後にはまだ十分な回復を果たしてはいません。宿泊客数はほぼ回復に至っているものの、日帰り客や行祭事・イベント客も大幅に減退したままです。ルミナリエの再開後の開催形態が変更された事も影響がありそうです。

他にも良いニュースとしては、大丸神戸店が1,000億円台の売上を19年ぶりに回復したり、神戸市内の宿泊者客数や神戸空港の利用者が過去最高値の記録を更新したりと、様々な面で追い風が吹いて、神戸経済が上昇気流に乗れている事は事実です。一方で、前述の各項目でコロナ前の状態に戻せていない状況があるのも事実。特に観光や国際会議誘致については、まだまだテコ入れの余地があります。神戸空港の機能拡充と滞在型観光へのシフトをセットとし、後回しにしている国際会議を受け入れるインフラ再整備に着手していかなければなりません。民間によるオフィスビル開発も促進させ、都心の老朽化ビルの建て替えもピッチを上げる必要があるでしょう。経済の活性化が雇用を生み、広域からの集客と人口流入へと繋がり、人口減少に歯止めを掛ける最も有効で効果のある手段なのは間違いありません。
神戸市から年次発表された神戸経済の動向について 数字の推移で見る現状と課題
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