客室数744室と神戸随一の規模を誇る市内最大ホテルの神戸ポートピアホテル。神戸コンベンションコンプレックスの中核ホテルとして、神戸ポートピア博覧会の後に華々しく開業した全国初のMICEホテルでした。地上32階 高さ111mで船をモチーフにした楕円形の超高層ホテルはポートアイランドのランドマークとして40年以上に渡って君臨しています。今回、約20年ぶりに館内に足を踏み入れました。
老舗シティホテルの風格を備えた南側の正面エントランスは大きな庇の付いた車寄せが備わり、ゆったりとした敷地を使って優雅さを感じさせます。
エントランスを抜けると、3層吹き抜けのロビー空間。太い柱と大理石、装飾品が老舗高級ホテルの威厳を感じさせます。
レセプションカウンターには古さはありますが、重厚感があります。カウンター横にはセルフチェックイン機も備わります。
チェックインを済ませて通路を進み、エレベーターホールへと向かいます。
建物西端のエレベーターホール。丸味を帯びた建物形状に沿って、円形型に5基のエレベーターが備わります。中央のエレベーターのみはシースルーです。
7-28階が客室階です。25-28階の3フロアは25~28F エグゼクティブフロア「オーバルクラブ」、24階はプレミア、20-23階がミッドセンチュリー、16-19階がスーペリア、7-15階がスタンダードという構成になっています。
今回はミッドセンチュリーフロアに宿泊の夕朝食付きプランを選択しました。
部屋はトリプル。ツインの部屋に簡易ベッドを入れています。昨年開業40周年を迎え、神戸で最も歴史のあるシティホテルであるが故に、老朽化という課題とどう向き合っているのかが一つのチェックポイントでした。クローゼットの扉は歴史を感じました。
このホテルもホテルオークラ神戸同様に全客室のリニューアルを随時行っており、室内は落ち着いた雰囲気に随所にアクセントカラーを入れて、小洒落た内装には好感が持てます。
マットレスのメーカーは分かりませんが、固めでした。不快な固さではありません。ミッドセンチュリーの22階はエアウィーヴのマットレスが備わるようです。
エキストラベッドが並びます。ツインのものとマットレスは同じです。ツインの場合は、ここにソファーが置かれているので、造りはゆったりとしています。広さは30平方メートル程。
読書灯下のセンターコントロール周りはやはり古さを感じます。携帯の充電用にコンセントのみ後付けにしています。ラジオ、時計と一体化された照明スイッチ。
ソファーの色にはビビットな赤を選択。
丸テーブルとスタンドライト。姿見や加湿機能付き空気清浄機も備わります。家具や調度品には時代を感じます。
ミニバーコーナー。ドリップコーヒーとティーバッグ、ミネラルウォーターがサービスです。
室内に観光紙は置かれておらず、代わりに「KOBECCO」がありました。
カウンター下に冷蔵庫。特に中には何もありません。
そして最大の課題である水回り。オークラもクラウンプラザも室内はリニューアルされていますが、水周りは殆ど手付かずで、そのギャップに残念な気分にさせられましたが、ポートピアホテルはこちらにも手を入れていました。
ただ浴槽や床、シンク等の基本部分はそのままです。
また老舗ホテルに特有となる排水管や換気口から漏れ出る古さを伝える臭い。翌日までには鼻が慣れますが、入室当初は非常に気になります。これはオークラ神戸でも気になりましたが、表面的なリニューアルではどうにもならない老朽化は対策が難しい課題です。
アメニティは必要最低限のものは全て揃っています。
女性用にはポートピアホテルオリジナルの米ぬかスキンケア用品セットが揃います。
シャンプー、コンディショナー、ボディーソープの容器は高級感に欠けますが、中味の質は悪くなかったです。外資系ホテルでもコンディショナーの質はあまり良くない事が多いですが、ポートピアホテルのコンディショナーは髪がしっとり潤いました。
カーテンを開け放つと、高層階ならではの眺望が開け、南向きなので部屋は非常に明るくなります。
やはり古き良きシティホテルなので、そのロビーホールは荘厳で雄大です。最近は再開発ビルの高層階に高級ホテルが出店する例が多い為、このポートピアホテルのような巨大総合ホテルの開発例は限られています。
デザインや設計は古いですが、しっかりと管理、手入れがなされ、改装も行われているので、そのゴージャスな優雅さの前には、最近、数多くできたビジネスホテルは全く太刀打ち出来ません。
宿泊客や来館者はゆったりとした時間をこの広大なロビーで過ごす事で優雅な気分に浸る事が出来るでしょう。
特に頭上に輝く巨大なシャンデリアと円形照明は圧巻です。実際には半円しかないのですが、鏡によって円形になっています。
正面を支える柱にはパープルの垂直照明がアクセントに入っており、斬新さも加わります。
13店にも及ぶ充実したレストランやバーもシティホテルの醍醐味です。人工滝・運河に面した「ティーラウンジ ベルクール」ではピアノの生演奏も行われています。
神戸随一のMICEホテルとして、特に医療産業都市として企業・団体の集積が進み始めてから、コロナ禍前には神戸コンベンションコンプレックスでの医療関連の国際会議や学会開催も大きく増えており、海外からも多くのVIP客を迎え入れています。
3年に一度、開催されているアフリカ開発会議の第9回会議を神戸で開催する為の招致活動が現在行われています。この国際会議は日本とアフリカにおいて交互に開催されていますが、これまでは東京がメインで、それ以外の都市については横浜で開催されたのみです。
神戸で開催される場合、間違いなくこのポートピアホテルを含む神戸コンベンションコンプレックスが会場になるでしょう。
また来年、日本で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)の関係閣僚会合開催について、招致を目指している姫路市ですが、宿泊施設については、神戸のホテルに頼らざるを得ないとしています。
神戸空港と三宮の中間に位置するこの巨艦ホテルは観光拠点としては不向きですが、コンベンション及びアーバンリゾートホテルとして、ホテル内及び周辺施設の滞在をメインにすると、頼もしい存在です。
今回のプランでは夕食を30階のスカイグリルブュッフェ「GOCOKU」で楽しむ内容でした。兵庫五国(摂津、播磨、但馬、丹波、淡路)の特産物や国内外選りすぐりの食材を使用した料理をみなと神戸の絶景とともに味わえるブッフェレストランです。
GOCOCU 自慢の逸品・ローストビーフはブラックアンガスビーフをオープンキッチンにある石窯で焼き上げており、非常に柔らかくてジューシーでした。
落ち着いた雰囲気で楽しむ料理は90分制です。
料理の種類も豊富でハズレも少なく、老若男女が楽しめるレストランです。
北側一面に広がる窓の外はポーアイから都心エリア、六甲連山が連なるダイナミックなパノラマビューが広がります、
夜景が望める時間は特に人気です。窓側の席は最高の時間を過ごせる事でしょう。
ポートピアホテルはコロナ禍前には全国でも国際会議開催数がトップレベルでした。ホテル部門ではトップであり、全施設でもトップ10に入る程です。中央のグリーン屋根の建物は1997年に完成したポートピアホール。1,700席を備えた国際会議場です。この他、立席であれば3,800人を収容する大宴会場や40にも上る大小会議室や宴会場もあり、あらゆるニーズに対応できます。その横の駐車場棟も商業施設に負けず劣らずの規模です。
超高層の本館に隣接して建設された南館は全室バルコニーを備えたリゾート感満載で、ルーフトッププールやセントチャペルも併設しています。ポートピアホテルを全国トップレベルのコンベンションホテルに押し上げたのはこの追加投資によって建設された付帯施設の担うところが大きいと言えます。
40年選手となると、超高層ホテルと言えど、東京では解体される建物が続出する中、神戸ではそうも行きません。まだまだ現役稼働を継続する事になりますが、コンベンションコンプレックスを実現した当時のダイエーと神戸市の先見性は見事としか言いようがありません。そしてダイエーはこのホテルの開発後にも新神戸、中突堤にオリエンタルホテルも開発。往時の神戸の勢いを現代に受け継ぐ神戸ポートピアホテル。繁忙期や大型会議開催時以外にはリーズナブルな料金で宿泊する事も可能です。ホテルオークラ神戸と共に神戸を代表するホテルとしてあり続けるでしょう。
ホテル基本データ
所在地 神戸市中央区港島中町六丁目10番1号
規模 地上32階 地下2階 (本館)
用途 ホテル(744室)・店舗・駐車場
構造 鉄骨鉄筋コンクリート・鉄骨・鉄筋コンクリート造
敷地面積 29,400平方メートル
延床面積 111,799平方メートル
高さ 111.4m
設計 日建設計
施工 竹中工務店
開業 1981年3月
公式サイト