2022年9月の西九州新幹線の開業に合わせて、全面改築されたJR長崎駅。新駅舎の建設と共に駅周辺一帯も同時に再整備し、新駅ビル、東西の駅前広場、コンベンション施設やホテル等の建設を進め、長崎の陸の玄関口は大変貌を遂げています。
その中心に位置する長崎駅。西九州新幹線、在来線のJR長崎本線のターミナル駅です。2021年に開業した在来線新駅舎は既存駅舎から西側へ150m移設し、翌年に新幹線駅舎が開業しました。
新駅舎や新駅ビルの柱や外壁は煉瓦タイルで統一されており、長崎の持つエキゾチックさを表現しています。
駅舎の軒下や天井には最新の駅舎らしく、天然木材をふんだんに使用し、格子状に並ぶ無数の木ルーバーが温かみを醸し出しています。
非常にシンボリックなデザインが風格を感じさせます。
コンコース内に一歩足を踏み入れると、駅舎の外装と同じコンセプトが内装にも連続しており、ダイナミックさと温かみの双方を強く感じさせます。
やはり新しい駅舎は新鮮で良いですね。しかし新幹線が乗り入れるターミナル駅とはいえ、長崎駅の1日辺りの乗降客数は約2万人です。
利用者数から考えると、鹿児島中央駅や熊本駅の方が格上にも関わらず、規模は両駅を凌ぎます。
JR九州の長崎への力の入れ方は少し驚きます。我らのJR三ノ宮駅は長崎駅の10倍以上の利用者がありながら、この壮大さと荘厳さに欠いており、新駅ビル建設と共に是非とも駅舎内の改造も実施してほしいものです。
高架下商業施設「長崎街道かもめ市場」。土産物ゾーンとグルメゾーンに全56店舗が揃います。
来街者はこの長崎の新玄関口に迎え入れられて、まず大きな驚きを覚えるのではないかと思います。
改札は在来線、新幹線と並列に配置されています。
西九州新幹線の改札です。西九州新幹線の車両はまさに次世代の新幹線といったデザインと機能を有していましたが、下車後の駅舎もそれに相応しい内容と言えます。
それでは改札内に入ってみましょう。
改札内コンコースも広々としており、開放感があります。天井パネルはJRの駅舎らしいシンプルな印象です。
改札内も装飾壁や柱には煉瓦タイルが採用されコンセプトデザインの統一が図られています。
トイレのエントランスには両サイドにステンドグラスを使い、色分けで男女を分かるようにした心憎い演出です。
ガラスの箱の待合室。空調もあるので快適に列車を待つ事ができます。
角材をキューブ状に組み合わせたシンプルなベンチも洒落ています、
ホーム番線の案内表示もガラスが採用されており、デザインのディテール一つ一つに拘りを感じさせます。
ホームは14番まであり、県内最大のターミナル駅として機能しています。
それではホームのある階上に上がってみましょう。
長いエスカレーターで新幹線乗り場に向かいます。フレームに囲まれたようなデザインでコンコースに下りていく際にもワープしているような感覚を覚え、ワクワク感があります。
ホームに到着。新駅舎らしく設備は最新。ホームドアはデフォルトです。
駅舎はウェーブ状の鉄骨フレームに自然光を透過する膜素材の大屋根によって覆われており、各ホームに屋根は存在しません。
従ってホーム上は開放感が高く、非常に明るい空間が広がります。
床材にはアースカラーの舗装ブロックを採用。ベージュのベンチとのコントラストが洒落ています。
駅名表示はシンプルに白。フレームは黒。矢印は赤。クリーンなイメージです。
新幹線のホームは多少の高低差はありますが、在来線とほぼ並列しています。長崎本線の車両も新型で、地方都市に見られるローカル感が全くありません。
最新の駅舎はこうだ!と言わんばかりの内容が詰まっています。
西九州新幹線「かもめ」。この最新車両内の様子は次回またレポートしてみたいと思います。
在来線駅の西側です。新幹線の発着する東側と比べても全く遜色ありません。
長崎を訪れるのは2度目・2008年以来の15年ぶりでしたが、当時の長崎駅周辺は特に特筆するべき物は無く、地方都市の玄関口然といった感じでした。しかし今や全く異なる光景が広がっています。とても人口40万人に満たない都市の中心駅とは思えません。東側の新駅ビルや駅前広場の完成によって完全体となりますが、開発は周辺エリアへも波及しているようです。まさに表玄関に相応しい新駅舎でした。
地域探訪: 長崎・美しきJR長崎駅新駅舎 表玄関に相応しい風格と規模を誇り、デザインも素晴らしい
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やはり長崎は鹿児島や熊本よりも優遇されているようですね。しん@こべるんさまもそのように感じられたのであれば、間違いなく西九州新幹線の新鳥栖ー武雄温泉間の完成を促すためのものでしょう。
西九州新幹線の新鳥栖ー武雄温泉間が完成していないことを理解するためには、過去の経緯を説明する必要があります。現在新幹線を新設した場合、並行在来線は廃止されることが前提となっています(JRとして廃止するのであって、大抵は地方自治体が中心となって第3セクターで運営されています)[1]。西九州新幹線で福岡県と長崎県の間に位置する佐賀県は、福岡から近く博多まで通勤する人も多いことから、①西九州新幹線新幹線の建設費の一部を負担するメリットが県としてないこと、②並行在来線が廃止されてしまうと第3セクターとして運営するために県の負担が急増すことから、西九州新幹線に反対してきました。JR九州は妥協案を探し、西九州新幹線はフリーゲージトレインで結ぶことを提案しました。フリーゲージトレインで新鳥栖ー武雄温泉間を在来線の線路を通れば、JRとしては新幹線の線路を新たに引く必要はありませんし、佐賀県としては在来線が廃止されることもないので、利害関係が一致した結果、佐賀県の同意を得ることができました[2]。しかしながら、そのフリーゲージトレインの開発が上手くいかなかったことで、佐賀県は「話が違う! 」と猛反対しています[3]。武雄温泉―長崎間は当初から標準軌で新設することが決まっていたので先行して建設した結果、現在の西九州新幹線としての先行開業に至るとともに、並行在来線は佐賀・長崎両県が設立した「管理センター」に譲渡されました[4]。ただし、上下分離式として、並行在来線部分は管理センターが保有し、23年間はJR九州が列車を運行するとされています。神戸の方にわかりやすく言うと、「線路は神戸高速鉄道が保有して、列車の運行は阪神、阪急、山陽及び神鉄が担っている」状態です。JR九州は何とかして西九州新幹線を前線開通させたいため佐賀県に対する懐柔策として長崎新幹線という通称で呼ばれていたのを西九州新幹線を正式名称とし、佐賀市市街地を通過しなくても問題ないような北回りのルートや佐賀空港を経由できる南回りのルートを佐賀県に提案しているようですが、佐賀県の同意には至っていないようです。ご承知の通り、現在は博多ー武雄温泉間をリレーかもめという名称の特急を走らせて、武雄温泉駅で西九州新幹線と同一ホームで乗り換える方式をとっていますが[5]、これも23年間の過渡的措置の間(残り22年)に解消しなければいけないと危機感を募らせているのでしょう。私は建築関係の人間でもなければ、交通行政関係の人間でもないずぶの素人なので、多少誤ったところはあるかもしれませんが、概ねこのような状況です。
[1]新幹線ができるとどうして並行在来線は廃止? 並行在来線問題とは
https://tetsumo.net/blog/社会/新幹線ができるとどうして在来線は廃止-並行/
[2]こじれる長崎新幹線、実は佐賀県の“言い分”が正しい
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1905/17/news035.html
[3] 西九州新幹線、佐賀県「フル規格」猛反対の本質 フリーゲージトレインの技術めぐり国と激論
https://toyokeizai.net/articles/-/512809
[4] 西九州新幹線の並行在来線 23日に佐賀・長崎両県に譲渡へ
https://www3.nhk.or.jp/lnews/saga/20220921/5080012772.html
[5]リレーかもめ&かもめを乗り継いで博多から長崎へ【西九州新幹線の乗車記】
https://tetsumin.com/nishikyushu