長崎

地域探訪: 長崎・長崎駅ビルが新駅ビル増築により延床面積16万平方メートルに拡大 玄関口が今秋大変貌を遂げる!長崎が高評価される理由とは?



非常にアグレッシな攻勢を仕掛けているJR九州。訪日客需要を追い風に、福岡に加えて九州新幹線の開通によってアクセスが向上した熊本、鹿児島を筆頭に、大分、宮崎等までも含めて、九州の各県庁所在都市のターミナル駅周辺で、駅ビル開発や駅ビル増床を行っています。その対象には、西九州新幹線の部分開業によって利便性を増した長崎も加わる事となり、九州の主要都市はどの街も風格のある玄関口が整えられ、全国の中でも九州勢の突出性が際立っています。



玄関口であるJR長崎駅前では、今年の秋を開業予定として、新駅ビルの建設工事が進められており、駅周辺は大きな変貌を遂げようとしています。既に長崎駅の西側や南側の開発は進み、残るは表玄関を司る駅東側のみとなりました。



昨秋、西九州新幹線が乗り入れたばかりの長崎駅新駅舎に接して建設されている新駅ビルは既存の駅ビルである「アミュプラザ長崎」と接続・一体化すると共に長崎市との協力の上、アトリウム空間の「新かもめ広場」や広大な多目的広場、東口駅前交通広場等を整備します。



この整備により、人口40万都市の玄関口としては、破格の巨大なターミナルシティが誕生します。長崎市や長崎県の県庁所在としての需要のみではとても消費しきれない規模ですが、訪日客需要を背景に進められた大プロジェクトです。



建設されている新駅ビルは地上13階 延床面積102,000平方メートルで、商業、ホテル、オフィス、駐車場から構成され、既存の駅ビルと合計すると、160,000平方メートルの巨大駅ビルが誕生する事になります。



煉瓦の柱を特徴とした商業施設の入る基端部。地上1~4 階と一部5階に、41,000平方メートルの商業ゾーンが誕生し、アミュプラザ長崎が拡大するものと思われます。

駅ビルの規模としては、鹿児島中央や熊本の規模をも上回る事になり、博多に次いで2番目の大きさです。



また7~13階に設けられる200室のホテルには米国高級ホテルのマリオットが「長崎マリオットホテル」の開業を予定しており、西口のヒルトンに続いて、長崎には外資系ホテルの進出が相次いでいます。

これらの外資系ホテル進出や駅ビルの規模からも、長崎の観光需要のポテンシャルが高く評価されている事を裏付けています。

これだけの大規模な商業施設の誕生は長崎市の商業地図を大きく塗り替えてしまう可能性が高いものと思われます。

駅前広場の再整備も駅ビルの建設工事に合わせて今後、本格化します。

駅ビルや長崎市電の長崎駅電停とも接続している既存の高架広場は今週6月1日より閉鎖が予定されており、解体撤去される計画です。

高架広場の横では大きな掘削が行われており、シートパイルの山留が実施されています。今後、緑豊かな多目的広場を整備し、駅前を横切る国道202号線沿いには電停と並行したバス亭も構築される計画です。

それらの交通拠点は駅ビルと繋がる新たな歩行者デッキで接続されます。その一部となるエレベーター・エスカレーター・トイレが設置された部分も完成・供用開始済です。

これまでの電停は歩道橋の階段のみがアクセスになっており、ベビーカーを押す子連れファミリーや大きなスーツケースを持つ旅行者泣かせでしたが、エレベーターの設置によってバリアフリー化が行われました。



いっその事、電停を広島駅ビルのように多目的広場へ移設して、JR駅との乗り換えを向上させるターミナル化を行う方が良いのではないかと思いましたが、大きなコストが掛かる上、長崎駅を素通りする市民も多い事から、国道をそのまま直線状に走る現在の構造は維持されます。

既存の歩道橋も美装化もしくは再架橋が行われるのでしょうか。駅前広場の完成は新駅ビル開業から遅れる事1年後の2024年秋を予定しています。



新駅ビルの北側には暫定の交通広場が稼働していますが、駅前広場の整備に合わせて、こちらも正規の交通広場へと改造される予定です。

既存駅ビルのアミュプラザ長崎。2000年開業で、約130店のテナントが営業。シネコンやJR九州ホテルも併設しています。

既存ビルと新駅ビルの間には、殆どのアミュプラザがそうであるように、エントランス前には大屋根のある広場空間が構築される予定です。

長崎市内の大型商業施設には、このアミュプラザ長崎の他に、近接してゆめタウン夢彩都、みらい長崎ココウォーク、そして唯一の百貨店である浜屋等がしのぎを削っています。

この巨大駅ビルの誕生は既存繁華街との競合を鮮明にする事となるだけでなく、その他の大型商業施設にも大きな影響を与える事になるでしょう。駅ビルながらも郊外モール顔負けの巨大な立体駐車場も併設して、車での来店にも万全の体制が整えられています。

JR九州が長崎にここまでの大型投資を行う理由はどこにあるのでしょうか。またヒルトンやマリオット等の外資系高級ホテルが長崎を進出地に選んだ理由は何でしょうか。

長崎には、訪日客が好む京都や奈良、金沢等に見られる、いわゆる日本の和のエッセンスは然程多く感じられません。また東京や大阪等の大都市でもなく、北海道や沖縄などのリゾート性もありません。また被爆都市としてのプレゼンスも広島の影に隠れてしまっています。

しかし長崎にはその地形的環境による風光明媚さ、歴史から裏付けられる異国情緒と妖艶さ、五島列島に代表される新鮮な海産物と、様々な魅力が溢れています。

こうした長崎の持つ魅力にポテンシャルを感じた事、西九州新幹線の開業というインフラ面の後押しがあった事、九州全般がアジアのゲートウェイとして機能している事等が複合的に高評価を促進しているものと思われます。しかし長崎が高いポテンシャルを持つのなら、同じ港町としての歴史を持つ神戸にも同様のポテンシャルがあるのではないでしょうか。神戸空港の国際化が長崎の新幹線と同様に認識されると、大きな変化が訪れるかもしれません。
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  1. 摂津国人 より:

    長崎の場合、外資系が多く入り込んでいるのはIRの影響が大きいのではないでしょうか[1]。大阪でもIR 実現のためにMGMが必死になってテコ入れしていましたから、IRによって訪日外国人などが落とすお金狙いだと思います。 大阪では「公金は一切使わない」という話だったのにふたを開けてみれば大阪市の公金が用地取得に使われることになりました[2]。長崎ではそんなことが起こらないことを願っています。
    JR九州からすれば、上述のIRを含めて長崎を訪れたい人が増えれば、止まっている新鳥栖ー武雄温泉駅間の西九州新幹線を延伸させて長崎まで完成させる原動力になります[3]。また、JR九州は長崎でアミュプラザ長崎をはじめとする鉄道以外の事業での収入があるようです。既にアミュプラザ長崎を訪れるマイカー組の囲い込みを始めているとの報告もあります[4]。

    [1]長崎IR、継続審査に 県知事「少しでも早く認定を」
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC131L60T10C23A4000000/

    [2]大阪IR、公費負担ゼロのはずが… 790億円の巨額支出に批判
    https://www.asahi.com/articles/ASQ1V6KSWQ1NPLFA001.html

    [3]令和初の開業も… “つながらない”西九州新幹線
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220921/k10013829031000.html

    [4]【なぜ?】長崎駅、新しくなったのに不便になる。その理由、経緯、今後の対処を解説(動画13:00ごろから)
    https://www.youtube.com/watch?v=Tcpjpheoyo8

    • ながさきたろう より:

      原爆ドームのような被爆に関する世界遺産は確かにありませんが、大浦天主堂や軍艦島などキリスト教や産業近代化に関する世界遺産は長崎市内に存在するので、この記事の書き方では「長崎市内に世界遺産は一つもない」と誤解を生むように感じました。

  2. sirokuma より:

    IRへの期待はあるとは思いますが、IRの計画地は佐世保市ハウステンボス町です。観光客にとっては関係ないでしょうが結構離れています。
    コロナ後、クルーズ船はの回航は未だ全国的に回復してはいませんが、コロナ直前の長崎と佐世保はクルーズ船の寄港地として潤っていました。2019年度の寄港回数は、ベスト10の内7港が九州の港で長崎港は横浜港に次ぐ4位で神戸港は7位、佐世保港は10位でした。これは台湾香港などから東シナ海を沖縄・鹿児島・長崎・福岡・ソウルと北上するクルーズが人気だったことも影響していたと思います。この需要が回復してくることを見込んでいるのかもしれませんね。

    https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001364317.pdf

  3. Nao より:

    長崎駅周辺の整備に加え、スタジアムシティや長崎港2バース化など長崎の100年に一度と呼ばれる変革によって都会になりそうで、地元民としてワクワクしています。ヒルトンやマリオットに加え、IHGも進出。国際観光都市長崎の本領発揮です!

  4. こやまひでお より:

    知事も若い人に変わり、長崎と中国の関係は特別なので、長崎新地中華街を観光材料として力を入れてもらいたい。

  5. 摂津国人 より:

    上でクルーズ船増加の影響で長崎の外資系ホテルが増加していると仰っての方がいますが、完全な誤りです。クルーズ船の乗客は、宿泊も夕食もクルーズ船内で済ませてしまうので[1,2]、お金にならないことが各所で報じられています[3-5]。特に[3]の報告はコロナ前の情報ですが、まさに長崎でのお話で、記事のタイトルだけでなく文章中の単元のタイトルタイトルも「百害あって一利なし」や「期待外れ」、「量より質へと迅速に転換を」とかなり辛辣です。宿泊も夕食もクルーズ船内で済ます観光客が多くなるなら、どうしてホテルが儲かるのでしょうか。本当にクルーズ船が増えているなら外資系ホテルは撤退した方がいいでしょう。

    [1]ドラッグストアまみれの街と、たった40分しかいない観光客…インバウンド急増の裏「オーバーツーリズム」と「ゼロドルツーリズム」の落とし穴
    https://honichi.com/news/2019/12/04/overtourism/
    [2]アレックス・カー氏講演、ゼロドルツーリズムに危機感 量より質の「観光管理」を
    https://www.ryoko-net.co.jp/?p=61620
    [3]豪華客船にお金持ちは乗って来なかった~クルーズ船寄港地の憂鬱
    https://news.yahoo.co.jp/byline/nakamuratomohiko/20190712-00133858
    [4]クルーズ船を規制しても観光収入は下がらない
    https://ryukyuconsulting.com/2019/05/16/okinawa_tourism_11/
    [5]クルーズ船の経済効果を数字で見てみると
    https://ameblo.jp/toshiyuki-kinoshita/entry-12427172112.html

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