地域探訪・九州編の最後を飾るのは福岡です。九州の中枢として君臨する同市は人口158万人を擁する日本第6の大都市です。その陸の玄関口であるJR博多駅には2011年に待望の新駅ビル「JR博多シティ」が開業しました。
博多駅博多口の駅ビル再開発も鹿児島同様に九州新幹線の開通を機に構想がスタートし、1966年竣工の老朽化した初代駅ビル「博多ステーションビル」の解体跡地にJR九州が新駅ビルを建設。2006年に着工し、5年の歳月と1,000億円の総工費を費やして完成させました。
駅前広場に面して東西幅が全長240mにも渡る巨大駅ビルです。このまま垂直に立てると名古屋の駅ビルになりそうですね。地上10階 地下3階 高さ60m 延床面積199,085平方メートル。駅ビルとしては日本トップクラスの規模で、威風堂々としたその外観は福岡を代表する玄関口に相応しいデザインです。設計には三菱地所設計が絡んでいるので、質実剛健の落ち着いた雰囲気の中に先進性が潜みます。
駅ビルの主な用途は商業施設で、ホテルやオフィス等の複合機能は付与されていません。キーテナントには阪急百貨店、アミュプラザ博多。更には東急ハンズ、シネマコンプレックス、レストラン街という構成で占められています。JR駅ビル+百貨店というバブル期から続く勝利の方程式としては恐らく最後の組み合わせかと思います。百貨店の新規出店という観点からもこれ以降、全国でも新しい百貨店は開業していません。それだけにこの駅ビルへの出店競争は熾烈で、元キーテナントだった地場百貨店の井筒屋、阪急、高島屋、丸井の四社が名乗りを挙げました。JR駅ビル内に異なる鉄道会社系列の百貨店が進出するのは異例ですが、鉄道路線の直接競合が無いので阪急の進出が実現したと言えます。そう言えば閉館した三宮ターミナルビルのテナントも当初は阪急百貨店を想定していたようです。
鹿児島中央駅と同様に駅ビルの前には大屋根の付いたイベント広場空間が設けられています。
真横から見るとかなりの規模の屋根である事が分かります。取材日もイベントが催されて多くの人で賑わっていました。
屋根はガラスと透過性のある幕素材の2種類から構成されています。波打つような形状か特徴的です。駅ビルに大屋根を付ける構成は建設中の熊本駅ビルにも採用される予定です。
2階には回廊が設けられており、駅前広場に面する他の建物とも連絡しています。
水平方向にここまで広い駅ビルは博多か京都のどちらかに絞られるでしょう。どちらも高さ規制が厳しく建物を横に広げる事で床面積を確保しています。よく考えると札幌駅ビルもかなり水平方向に大きな建物で、更に一部を超高層化しています。
JR九州は自社の駅ビルブランドであるアミュプラザで最大規模の店舗をJR博多シティ内に開業。2018年度の売上高は416億円。博多阪急が516億円。その他、JR博多シティ内商業施設を足した売上高の総合計はなんと1,185億円。来館者数も7,257万人というマンモス施設です。
博多口エントランス前にある吹き抜け空間。半円形広場でハの字に上下方向のエスカレーターが整備されています。
2階に上がると駅ビル側面の空中回廊に連絡します。吹抜の上には大型カフェが営業。
ビル屋上は緑化されたテラス「つばめの杜ひろば」です。小さい子供の遊べる広場にもなっており、ミニSLやバギーもあります。昔懐かしいデパートの屋上的な雰囲気を醸し出しています。
テラス内には展望スポットもあり、福岡市内を一望できます。福岡空港に離着陸する旅客機も至近距離です。この距離の近さが福岡の強さでもあり、弱さでもある諸刃の劔です。
JR博多駅の1日辺りの乗降客数は24.8万人。地下に乗り入れる市営地下鉄博多駅は15.8万人。九州最大のターミナルを形成しています。
JR博多シティの開業によって博多駅は市内最大の商業エリアである天神に対抗する商業核へと変貌を遂げました。また駅ビルの開業が博多駅周辺の再開発を活発化させています。博多駅周辺の半径500mは福岡市が始動させた博多コネクティッド構想により、既存ビルの建て替えや再開発促進の為、高さ制限や容積率緩和等の様々なインセンティブが与えられます。JR九州も博多駅上空を活用して既に巨大な駅ビルを更に拡大する計画です。九州だけに留まらず、福岡はアジアへのゲートウェイとして関西に負けず劣らずインバウンド需要が旺盛です。勢い留まる事を知らない福岡を更に掘り下げていきたいと思います。
地域探訪: 福岡 九州最大ターミナル駅・博多 JR博多シティは日本有数の巨大駅ビル
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それに比べかつての五大都市の名は色褪せたなあ
いつも楽しく拝見させていただきております。
ただ博多駅の乗降客数の数値が少し古すぎるデータを参照されているのではないかと思い、コメントさせていただきました。
2017年のデータでは
JR九州 → 24.9万人
JR西日本 → 4.4万人
JR線合計 → 29.3万人
地下鉄博多駅 → 15.8万人
博多駅全体 → 45.1万人
だと思いますが如何でしょうか?
間違いではないかと思い、指摘させていただきました。
九州のゲートワイとしての規模が三宮とは違い、博多駅の賑わいには熱気を感じますね。東京でも大阪でも博多でも駅には土産物品店が沢山あるけど三ノ宮駅には無い事も一因かな?さんちかがその役を負ってはいるんだろうが駅との一体感には欠けるからか僅かな時間に土産を選別し買いあさるあの独特な熱気がさんちかにはありません。新ビルでは地下鉄から阪神三宮方面、ミント方面へ開口部を設け地下部分でそれぞれの施設とシームレスに繋がれば、さんちかも大いに活性化すると思いますが、新駅ビルの地下がどうなるのか大変楽しみです。