京都

地域探訪: 京都・四半世紀経ってもやっぱりスゲー!東西にながーい京都駅ビル 三ノ宮駅ビルのお手本に



京都に行ってきました。京都を訪れるのは実に13年ぶり。無論、当ブログの取材では初めての事です。京都は私にとって近くて遠い存在でした。日本有数の厳しい景観規制が課されている京都では、高層建築は徹底して排除されている為、この街を取材対象としてあまり考えていなった点もありますし、京都が大躍進を遂げたのは、インバウンドによる再評価が高まったこの5〜10年あまりという事もあるかと思います。

京都に着いたら何と言っても京都駅ビル



今更という感もありながら、いよいよ6月からJR三ノ宮新駅ビルの建設が開始される事もあり、訪問前から京都駅ビルをしっかりと見てみようと思っていました。

まずこの京都の玄関口を司る駅ビルのおさらいから。1997年に完成したこの4代目の駅ビルは、そのデザイン設計を国際コンペで決定し、黒川紀章や安藤忠雄等、著名な建築家が参加し、最終的に原広司案が選定されました。



地上16階、地下3階、延床面積238,000平方メートルの規模で、高さは京都市最高の60m。駅ビルの幅は450mにも及び、百貨店(ジェイアール京都伊勢丹)、ホテル(ホテルグランヴィア京都)、京都劇場から構成される複合商業ビルです。



その後、名古屋、札幌、福岡等に受け継がれる「JR x 百貨店」で構成する駅ビルの先駆けの存在であり、京都は、全国の地方都市で見られる「ターミナル駅ビル vs 既存中心街」の構図を形成した最初の都市でもあります。



全国、全世界から京都を初めて訪れる人々はこの巨大で近代的な駅ビルに度肝を抜かれ、それまで抱いていた古都のイメージが大きく覆された事による困惑と、この駅ビルの偉大さへの感動という二つの感情に揺さぶられながら京の旅が始まるのです。



この駅ビルのシンボル性は同時期に同じ建築家によって設計された梅田スカイビルと同様にガラスとフレームが織りなす造形美から醸し出されています。梅田スカイビルや京都駅ビルは世界の建築界から高く評価されており、この駅ビルを見る事をメインの目的として京都に来る訪日客もいるようです。



駅ビル正面の烏丸中央口コンコースへと続くシンボリックなゲート。「これが京都の玄関口だ!」と強く主張しています。



駅ビルから外に出ると広がる駅前空間。都心部唯一の高層建築・京都タワーがお出迎え。駅前広場の舗装も黒を基調とした落ち着いたインターロッキングブロックを採用しており、これは駅コンコース内とも共通して連続性を意識しています。



東西スパンの長さと京都一の高さを活かして、駅ビルの各エントランス部には巨大なピロティが設けられており、どの部分を切り取ってもスケールの大きさを感じさせます。



東側のホテルグランヴィア京都と京都劇場のエントランスとなるピロティ。



2層吹き抜けのマッシブな空間はこれだけでも政令市の駅ビルのメインエントランスを司る事が可能なレベルの規模です。



京都劇場とグランヴィアに分かれて、左右に大階段とエスカレーターが備わります。その真上には天井が円型に窪んでいます。



西側の大階段を擁するピロティ。駅ビルを貫き、駅の反対側の西条口へと繋がる南北自由通路に連絡しています。



黒の内装で統一された南北自由通路。京都の北と南を結ぶ大動脈です。JR在来線、新幹線、近鉄の各駅改札とも接続しています。



ジェイアール京都伊勢丹は、2022年3月期の売上は495億円。高島屋京都店、大丸京都店に次ぐ規模となっています。

圧巻の大アトリウム空間



中央改札口を抜けると迎え入れられるこの圧巻の大アトリウム空間。高さ60mの吹き抜けは見る者を圧倒します。



完成から25年経っても、全く色褪せる事のないスケールと造形美。コンコース全体に自然光が降り注いでいます。



この駅ビルの完成後、全国で数々の巨大駅ビルが後に続いて建設されてきましたが、未だにこの駅ビルの存在感を超える建物は存在していないのではないかと思います。まさに国内駅ビルの最高峰・孤高の存在と言えるでしょう。



1,500億円を投じた総工費。25年前の費用ですから、現在であれば、この金額では到底建てられない内容かと思います。



JR京都駅の一日の乗降客数は在来線・新幹線を合わせて約30万人。大阪駅に次いで、JR西日本管内では、第2位を誇ります。駅構内には、30-34番ホームが存在する等、色々な面で飛び抜けています。



大アトリウムの先には屋上テラスまで続く大階段。今以上に景観規制も厳しかった当時、ここまで突き抜けた建築を造る覚悟は並大抵では無かったでしょうが、古都における玄関口の100年を見据えた名建築を建設できた事はあっぱれです。



三ノ宮新駅ビルはこの京都駅ビルの完成から30年を経て完成する事になりますが、時代を超越しているこの駅ビルに何か勝る部分があるのかどうか。



それぐらいこの駅ビルは偉大な存在である事をまざまざと再認識させられました。



梅田スカイビルの空中ブリッジを彷彿とさせます。



屋上テラスは、芝生広場と京都らしい竹の植栽が並ぶ「葉っぴいてらす」。



夜間には竹がライトアップされて、幻想的な空間になるようです。

 



京都駅ビルは、非常に特別な存在であり、規模としては更に大きな大阪駅ビルをも凌駕する完成度と、緻密に計算された設計が光る名建築でした。三ノ宮新駅ビルは規模でこの駅ビルに勝る事は出来ませんが、後発だからこそ導入できる様々なメリットを活用し、同様に四半世紀を経ても色褪せない名駅ビルを目指して欲しいと思います。
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POSTED COMMENT

  1. こまったちゃん より:

    重要な視点だと思います。

    「とびぬけた魅力」があれば、初期費用が高くても長期にわたって全国から人をひきつけ、結局は寿命が長い、費用対効果も高い施設等となり続ける、ということを、神戸のプロジェクト関係者はよく認識すべきです。

    また、神戸の経済力も限られるので、「とびぬけた魅力」は規模競争に落ちない方向性にしないといけないことも良く認識すべきです。魅力の創出の方向性が同じになると規模競争に落ち、東京や大阪はもとより、最近の元気な地方都市とも勝負ができません。

    ところが、最近の神戸の各プロジェクト、上質かつ今的ではありますが、この「とびぬけた魅力の追求」が希薄な気がします。

    「神戸らしさ」と言いつつも、意外と均質で、心地良いがご近所好み感が残るとか、他都市に置いてもそのまま成り立つ話で魅力が長続きしなさそうとか、「全国視点からのとびぬけた魅力の創出」を意識していないプロジェクトが多い気がします。

    自然環境や立地、歴史など、まねができない独自の魅力が残っているわけですから、「他をよく比較した上で頭をひねって」それらを引き継ぎかつ発展させて、「他地域がいくらお金を積んでも実現できないプロジェクト」とすべきですが、そういう発想に乏しい感じで、少しお金がもったいない気がしています。

  2. kobekko より:

    >JR在来線、新幹線、京阪の各駅改札とも接続しています。

    京阪 → 近鉄、ですね

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