京都

地域探訪: 京都・四条通のオフィスビル・店舗ビル開発 既存建物の建て替えが進むが、高さ規制によって需要を賄えないジレンマを抱える



昨日は、四条河原町エリアの商業施設にスポットを当てましたが、今回は四条通り界隈のオフィスビルやテナントビルに焦点を絞ってみたいと思います。

京都のオフィス街としては、烏丸通りによりオフィスビルが集積している感がありますが、四条烏丸エリアにも多くのオフィスビルが立ち並びます。特に近年では、新規のオフィスビル供給は四条通に集中しているようです。



四条通りと烏丸通りの交差点間近に立地する「四条烏丸FTスクエア」。この建物の一部建て替え(増築)によって昨年8月に完成した新築オフィスビル「東京建物四条烏丸ビル EAST」は、四条烏丸エリアで約10年ぶりの新規供給となり。竣工時からの満床と話題になりました。

コロナ禍前の京都のオフィス空室率は1%を切っていましたが、旺盛なインバウンド需要によって土地開発は全てホテル業者が牛耳ってしまい、ただでさえ容積率と高さ制限の厳しい京都ではオフィス開発が進まず、オフィス枯渇が深刻な状況に陥っていました。



2005年竣工の三光ビル。ブルーベリーアイでお馴染みのわかさ生活が本社を構えるオフィスビルです。



京都フコク生命四条烏丸ビルは2007年竣工。

京都のオフィス逼迫は、2019年がピークでした。オフィスを探そうする企業や拡張をしたい企業も京都では叶わず、新規進出や事業拡大を阻む状況が生まれていました。

そこで京都市は、市内の一部エリアの高さ規制を緩和し、下京区のJR丹波口駅近くの京都リサーチパークにて新規オフィスビル開発を促進しようとしました。

しかし企業進出ニーズの高いのは都心エリア。とりわけ四条烏丸エリアの新築オフィスビルの需要は高いままでした。



コロナ禍が転機となり、過熱していたホテル建設ラッシュは急速に萎みました。ただオフィス需要についても同様に減退した為、空室率はその後、上昇に転じました。

しかしながらこれを好機と捉えた不動産会社は、隙間を埋める形で徐々にオフィス開発を進めています。



四条通りにあった日本生命四条ビルが解体を開始しています。コロナ前は、既存のオフィスビル解体後、土地はホテル開発に転用されるケースも目立ち、オフィス不足に拍車を掛ける事になりました。



同ビルは2013年に耐震補強工事を含むリニューアルを実施していましたが、10年の運用で見切りを付けて、建て替えに踏み切る事になったようです。

しかし旧ビルは地上9階 地下2階。ビルが新しくなってもこれまでから規模や貸室面積が大幅に増える形には繋がらなさそうです。



弓形の変わった形状のテナントビル「GRAND CUBE 四条」は、2008年竣工の10階建。その隣でグリッド形式のファサードを持ったビルが竣工間近でした。



京都フコク生命四条柳馬場ビルは2002年竣工。



日土地京都四条通ビルは2004年竣工。四条通り界隈でも2000〜2010年頃まではコンスタントに新築オフィスビルが供給されていた事になります。



四条通りでは解体工事中のビルが多く見受けられます。竹中工務店が施工しているのは、源吉兆庵京都四条ビルの解体撤去工事。発注者は源吉兆庵ホールディングス。跡地に地上8階 地下1階 延床面積3,090平方メートルの新築自社ビルへと建て替えます。



こちらは昨年12月に竣工したばかりの大和証券京都ビル。既存ビルの建て替えプロジェクトで、地上8階建。神戸ビルも現在建て替えを進めていますが、京都ビルはひと足早くに着手。



つい最近、このビルに京都銀行四条支店の出店が決まったと報道がありました。ただその他のフロアはまだテナントを募集しており、一時期のようなオフィス逼迫感は薄れているようです。



福岡地所傘下のエフ・ジェイ・ホテルズが運営する

烏丸通りから木屋町通り付近までに至っては、京都市が「四条通地区地区計画」を策定・制定化しており、風格ある商業・業務機能の誘導を図るとともに,歩いて楽しい華やぎのある市街地環境の形成を図っています。

基本方針として、四条通に面した1階部分は物品販売業や飲食業を営む店舗の立地誘導を図り、共同住宅や寄宿舎の建設も規制しています。



四条通りも東に向かっていくと、段々と一直線だったスカイランが崩れて、間口の小さい狭小・低層店舗ビルが目立ってきます。これは神戸の三宮中央通りに似ている構造・状況です。



しかしその中には解体中の建物が点在しています。



これらの解体中の建物が単独で建て替えを行うのか、それとも周囲のビルと土地を集約して再開発が進むのか。風格ある四条通り目指すには後者が望ましいですが、いかがでしょうか。



新京極を過ぎると、高島屋京都店辺りまではかなり小さな建物ばかりのみが並びます。風格を考慮すると、このエリアの開発が今後の課題と言えそうです。



京都市は四条通りの歩行者空間拡大を目指し、片側2車線を片側1車線に減少させ,歩道を拡幅を実施した事で、常に混雑して歩き難かった歩道が格段に歩きやすくなりました。烏丸通りから川端通りまでの約1.1kmに渡った歩行者空間の拡大を行い、2015年に完成。今となっては、神戸でもあちらこちらで進めている施策ですが、当時としては画期的な試みでした。しかも神戸のように交通量の少ない道路ではなく、いきなり本丸から着手したのですから、完成当時の混乱は大きかったようです。



訪日客も必ず利用する四条通り。これから再びオフィス需要、店舗需要の高まりが予想されます。しかし京都市が実施する高さ規制の緩和は、需要のある都心エリアではなく、その外側への誘導を意図しています。烏丸、四条、五条、河原町通り等、都心エリアの大通りでは45mまで高さ規制を緩和しても良いのではないかと思います。需要があってもそれをこなす十分な箱を作れないというジレンマを抱える古都。発展の余地をどう創出するのでしょうか。

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