旧居留地において、惜しまれつつ役目を終えた名建築「旧日本真珠会館」。その跡地に誕生した複合レジデンス「Brillia(ブリリア)神戸旧居留地」と、その低層部に再オープンを果たす「神戸パールミュージアム」が完成を迎えました。 戦後のモダニズム建築のパイオニアとしての遺産を、令和の都市景観へいかに昇華させたのか。建築デザインのディテールと、この再開発がもたらす街の賑わいについて確認します。

本施設は、上層階を分譲住宅「Brillia」、低層階を真珠産業の拠点施設(神戸パールミュージアム・真珠入札会場・オフィス等)とする複合構成をとっています。旧居留地の街並みは、明治期からの西洋建築の美意識に基づいた「クラシックな三層構成(基壇部・中層部・頂部)」によって形成されています。本プロジェクトもこの伝統的プロポーションを愚直なまでにトレードマークとして取り入れています。

中層部から頂部を占める3-13階の住宅フロア・分譲住宅「Brillia」。そのエントランスは1階北側に配置されました。

さりげなく物件名が刻まれたエントランスアプローチ横の腰壁。

植栽が両サイドに設けられたエントランスアプローチとエントランスドア。ドア表面は波状模様の加工が入り、高級感を醸し出しています。住戸へのアプローチは「洞窟の出口」をイメージしたライティング設計が施されており、奥に進むにつれて柔らかな光が差し込むシーケンスが組まれています。旧真珠会館で使用されていた照明器具やサインの一部が再利用されているほか、真珠の貝殻を模した特注ソファが配置され、空間の文脈を密かに物語ります。

旧居留地における14年ぶりの分譲マンション供給となる本物件。東遊園地に面するパークビューとこの都市公園の利活用が日常である贅沢な都心生活を享受できる環境が整い、街の新たなランドマークに住まうという特別感も味わう事ができます。

1階のその他のフロアと2階に入る真新しい日本真珠会館。新しくなったパールミュージアムは、真珠の魅力や神戸の産業史を伝える展示場として一般来訪者を引き込みます。単なる商業ショッピングにとどまらない「歴史・文化体験」としての回遊軸が東側へ拡張されます。

新会館のエントランス。アール(曲線)の掛かった軒は扇型。風除室を経ての入館となるようです。

重厚感のある石張りの柱とブロンズ素材、上部を走るコーニス(庇状の装飾水平ライン)が、歩行者視線に重厚な格式を与えます。

1-2階はシームレスなデザインで一体感を与えています。世界屈指の真珠選別・加工集積地としての歴史を持つ神戸。最新設備を備えた入札会場や国際交流空間が再整備されたことで、プロフェッショナルたちが集う産業インフラとしての機能も大幅に強化されました。

建材の色調も周囲との調和と考慮して選択されているようです。落ち着いた雰囲気によって既に街並みに溶け込んでおり、新築ながらも以前からこの場所にあったようです。

南西側にはターンテーブルを備えたパーキングが整備されました。

旧日本真珠会館(光安義光 設計)が持っていた水平庇や手摺パイプによる美しいモダニズムのラインが見事に取り入れられています。

昼間人口に偏っていたオフィス街に「質の高い居住人口」が定着することで、夜間の街の静寂に適度な生活の温もりが宿ります。旧居留地が持つ洗練された雰囲気を崩すことなく、24時間を通じて街のセキュリティと品格が維持される効果が期待できます。

アール(曲線)を描くマリオンが垂直ラインを強調。バルコニーの手摺には「真珠をやさしく抱く爪(セッティング)」を模した意匠が配され、建築全体に流動的な立体感をもたらしています。

建て替え前の日本真珠会館。1952年に竣工し、2023年から解体が開始されるまで70年以上もの間、この地に根を下ろし、戦後から神戸の発展を支えてきました。

大きく姿を変えた新築ビル。単なる「レトロ模倣」ではなく、かつてのモダニズム建築のロジックと現代住宅の意匠が緻密に再構築されている点は、非常に凝ったディテールを詰め込んでいると言えます。

カフェが立ち並ぶメインストリート(大丸周辺や播磨町筋など)の華やかさが際立ちます。一方で、東町・伊藤町界隈は比較的落ち着いたオフィス・行政エリアとしての性格が強かった地域です。「Brillia神戸旧居留地」および「新パールミュージアム」の完成は、このエリアの回遊性に新しい質的変化をもたらす事が期待されるでしょう。今後もこうした博物館と分譲マンションという構成を有する建築の増加が新しい土地活用のポテンシャルを生み出すのではないかと思われます。
(仮称)神戸旧居留地PJ新築工事「Brillia(ブリリア)神戸旧居留地」「神戸パールミュージアム」が遂に竣工
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