兵庫県北部は豊岡市の北西にある美方郡新温泉町。その地名が示す通り、山間には温泉街の湯村温泉があります。また地域の特産品はかの有名な但馬牛や日本海も近い為、松葉カニといったグルメを楽しめる観光の町です。冬には豪雪となりますが、近隣には氷ノ山や鉢北高原等、スキーリゾートも立地しています。

温泉街は春来川に沿って旅館やホテル、土産物店等が立ち並びます。。1981年にはNHKテレビドラマ「夢千代日記」の舞台となり、多くの人が訪れたと言います。現在でも25軒程の旅館やホテルが集積し、比較的大きな温泉街を形成しています。

春来川のほとりは遊歩道や足湯広場が整備されており、観光客で賑わっています。

春来川には鯉も放流されており、足湯を楽しみながら、川べりで寛ぐ事が出来ます。

荒湯は湯村温泉の源泉で、その湯温は98℃。毎分470リットルの豊富な温泉水が湧出しています。

この湯温の高い源泉を使って、温泉卵や茹で野菜を作る事が出来る側溝があり、地元の人も重宝しているようです。周囲には湯煙が上がる他、硫黄の香りも漂い、温泉街の風情たっぷりです。

春来川沿いの足湯広場「ふれあいの湯」。大きな足湯で、70人以上が座る事が出来ます。天然かけ流し湯ですが、こちらに流れ着く頃には湯温も下がって熱過ぎず、快適な足湯を楽しめます。

湯村温泉ポケットパークの一角にある株湯。常夜灯風の建物の中には、湯村温泉の元湯である泉源があります。

湯村温泉を訪れた際にはこの小さな温泉街を散策する事は必須かと思います。

湯村温泉訪問に際して宿泊したのは、この温泉街では最大規模の旅館となる佳泉郷井づつや。元禄十五年創業の老舗旅館です。

エントランス横の植栽の中には但馬牛のブロンズ像もありました。但馬牛はこの地では特別な存在です。

チェックインを済ませると、まずゴージャスなエントランスラウンジでウェルカムドリンクのサービスを受けます。

非常に大きなラウンジはシティホテルを彷彿とさせる規模です。古き良き大型日本旅館の風情を色濃く残しています。

ウェルカムドリンクは淹れたての抹茶と茶菓子に栗餡の餅。

長い廊下を歩くと、壁には調度品の数々や能面の展示が続いています。

何を隠そうこの井づつやは現在は上皇となられた前天皇・皇后両陛下が宿泊された由緒ある旅館でもあります。無論、一般客室に宿泊した訳ではなく、敷地内に設立された迎賓館『楽庵』に泊まられたのですが、宿泊客は見学する事も可能です。

客室階も廊下は広く、落ち着いた雰囲気が漂います。

エレベーターホールには窯に水滴を落として音を鳴らす水琴窟が不思議な音色を奏でています。

今回、宿泊したのは露天風呂付客室。12畳の和室と4.5畳の和室2部屋から成ります。

内風呂のバスとトイレは別であります。南向きで非常に明るい客室です。

4.5畳の和室には掘りごたつがあります。冬にはこたつ布団が入り、おこたで過ごす事も出来ます。

露天風呂は部屋の一部を改修して後付にした仕様かと思われます。

檜風呂の湯船が備わります。

源泉掛け流しなので、湯温は非常に高く、加水して温度を調整します。無色透明で匂いも殆どないナトリウム泉ですが、お湯は柔らかく、入浴後には肌がスベスベになる美人の湯です。
 

ロビーラウンジが面するのは歴史を感じさせる日本庭園の中庭。

滝が流れ込む池には丸々太った巨大な錦鯉が沢山泳いでいます。

庭園は一周を散策する事が出来ます。夜間には滝や木々もライトアップされます。

この時季は既に水が抜かれて閉鎖されていましたが、夏の間はプールも楽しむ事が出来ます。歴史ある大型旅館ですので、ラウンジ、カラオケ、卓球、ゲームコーナー等、昭和の旅館の醍醐味を今に残しています。

この庭を愛でながら落ち着けるロビーラウンジも数年前にリニューアルが行われています。

ロビーラウンジは夜間には夕食会場にも使われており、庭のライトアップを楽しみながら、食事を堪能するプランもあります。

大浴場は地下階と最上階の2箇所に分かれています。メインとなる地下階の薬師の湯。打たせ湯や泡風呂もある内風呂と岩風呂の露天風呂があります。加えて岩盤浴も備わります。

休憩処の外には風情のある水車が回っています。この裏口から前述の荒湯に下っていく事が出来ます。

18時までは、湯上がりに楽しめる冷たい抹茶とゼリーのスイーツがサービスとして振る舞われています。黒豆茶はいつでも飲み放題です。

最上階の展望風呂は内風呂のみですが、大きな檜風呂で浴室内も畳敷です。
休憩処も畳が広がります。こちらでも18時まではビールもしくはソフトドリンクがサービスとして提供されています。

最上階から眼下に温泉街と山々を眺めます。この他、貸し切り風呂も二箇所あります。

今回のプランでは夕食は個室での提供でした。

食前酒の梅酒から始めるおまかせ懐石。同館の料理長は 『現代の名工』にも選ばれ、「黄綬褒章」も受賞しているそうです。

おしながきには、奇はてらわずオーソドックスにひと通りの勘所を押さえたご馳走が並びます。

入室前に厨房横のカウンターに敷き詰められた氷の上で、焼き物用の鮮魚が並んでいました。自分で魚を選べるようになっています。のどぐろ、ハタハタ、メバル、鮭ハラス等から1種を選択。今回はのどぐろを選び、塩焼きに。

そして絶品だったのが但馬牛の握り。表面のみを炙ったレア感が堪りませんでした。

朝食会場は大広間。今はもうこんな大きな会場を貸し切る事が出来る団体客は日本人客ではいないのかもしれませんね。

巨大な善に並ぶ和定食。ドリンクやヨーグルト、ケーキ、フレンチトースト等はセルフサービスでの提供でした。

歴史のある施設だけに設備の老朽化は否めません。しかし温泉や浴場はしっかりとリニューアルされており、古き良き昭和の大旅館の風情を今に残しつつ、サービス面は令和に合わせた工夫を施しています。口コミの意見もしっかりと反映する積極的な姿勢も見られた点にも好感度が上がりました。北近畿豊岡自動車道の延伸部が開通すると、新温泉町へのアクセスはもっと良くなりますので、将来的に湯村温泉の人気は高まると思われます。

昼食に訪れた近隣の但馬牛レストラン欅。値段もスーパーでしたが、鉄板でグリルされた但馬牛はやはり頬が落っこちる旨さでした。
 
地域探訪: 新温泉町/湯村温泉 佳泉郷井づつや 宿泊記 湯煙漂う山郷に残る古き良き昭和の大旅館
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