京都

地域探訪: 京都・四条河原町界隈の商業施設集積 様々な百貨店・ファッションビルが集う一大商業地域



これまでの京都特集は主にJR京都駅周辺の再開発をメインに取り上げてきましたが、今回は京都商業の本丸である四条通り・河原町通りに立地する商業施設にスポットを当てたいと思います。



まずは四条通りの商業施設から確認していきます。トップバッターは高島屋京都店。四条通りと河原町通りの交差点に鎮座する同百貨店は、長らく京都の地域一番店として君臨しています。



延床面積は5.2万平方メートル。昨年度の売上高は657億円と全国の百貨店で第13位。関西エリアでは、第4位の位置にあります。コロナ前の2019年には900億円を越えていました。

高島屋はJR名古屋、大阪店、横浜店、日本橋店等、1,000億級の店舗を複数抱えている為、京都店は900億あってもグループ中5位の位置に留まっていました。



その京都店は更なる飛躍と時代のニーズに合わせる為、現在、増床計画を進めています。店舗の隣接地に建設している増床棟を専門店ゾーン「T8」とする予定で、既存の高島屋京都店と合わせて「京都高島屋S.C.」として、今秋にオープンします。



専門店T8は地上7階 地下1階 延床面積1.3万平方メートルの規模です。テナントには中核に蔦屋書店京都店を据え、計54店が集結。



「アート&カルチャー」をテーマに、現代アートや日本が世界に誇るサブカルチャー、 エンターテインメントのテナントが集う予定です。



既存の百貨店ゾーンと専門店ゾーンによって合計6.5万平方メートルへと増床する事になります。これにより高島屋京都店も1,000億クラスの百貨店への仲間入りを果たす事になるのでしょうか。



その地域一番店の向かいに位置するのは、地下に阪急京都線の京都河原町駅を抱える住友不動産京都ビルです。



2010年まで四条河原町阪急が営業していた建物です。同百貨店の閉店後、後継に京都マルイがオープン。しかし10年の営業を経た後、マルイも撤退しました。その後、新たなテナントは決まらない状態が継続。



2021年に住友不動産が自社で運営する商業施設「京都河原町ガーデン」として、リニューアルオープン、中核テナントに家電量販店のエディオンを誘致、7-8階は「FOOD HALL」が営業しています。



四条通りで京都タカシマヤに続く重鎮が大丸京都店。5.1万平方メートルの売場面積で、昨年度の売上は470億円。コロナ前の2019年の売上は687億円でした。



大丸京都店でも神戸店に倣って、周辺ビルの低層階を賃貸し、高級ブランドを誘致する面的開発を行っています。



2014年には大丸京都店も、神戸店や札幌店と同様のネオ・クラッシックデザインを採用した外壁改修を実施しました。これにより大丸のアイデンティティを表現しており、一目見て大丸と分かるデザインとなっています。



その大丸に隣接するのが、大丸の親会社であるJフロントリテイリング傘下のパルコとヒューリックが2017年に建設した京都ゼロゲート(京都四条高倉セントラルビル)。地上7階 地下2階 延床面積5,200平方メートルの規模で、伝統的な日本の形式である「障子」をモチーフとし、大判セラミックプリントガラスでダイナミックに表現したファサードデザインが特徴の建物です。



京都のゼロゲートはApple京都を1-2階に中核テナントとして据えました。しかし全国のゼロゲートがテナント撤退と後継テナントの誘致に苦慮していますが、京都も開業以来、3-4階は空テナントのままになっています。



京都藤井大丸は、京都の老舗地場百貨店です。前述の大丸京都店との関係はありません。小規模な店舗建屋に見えますが、売場面積は1.6万平方メートルもあります。関西におけるマクドナルド1号店を誘致した店舗としても知られています。



東急ハンズ京都店も四条通りに立地しています。開業は意外にも2014年と歴史は浅く、この場所に誘致したのは大丸京都店。大丸京都店周辺店舗として、大丸の面的開発戦略の一環で、店舗面積は3,300平方メートル。



四条通りと交差する河原町通り。南北に伸びるこの通りにも複数の商業施設が点在しています。



まず交差点に間近い位置に立地しているのが、「河原町オーパ」。地上9階 地下1階 延床面積1.9万平方メートル(売場面積1.2万平方メートル)とファッション専門店ビルとしては京都最大級の規模を誇ります。



そしてモダンクラシックなファサードが美しい「京都BAL」。2015年に建て替えられた建物のの規模は地上6階 地下2階の8フロア構成で売場面積は約1.2万平方メートル。



中核テナントは「エストネーション」「無印良品」「ロンハーマン」と、神戸BALに類似しています。また地下1-2階には大手書店の丸善がカフェ併設店の京都本店を出店しているのも特徴的です。



コロナが収束し、訪日客が再び京都に戻っている中、京都の繁華街では既存建物の解体や新築工事が随所に見られ始めました。京都BALの向いでも地上7階 地下1階建ての商業ビルの新築工事が進行中です。



界隈には3月に開業したばかりの「トラベロッジ京都四条河原町」等、新築のビジネスホテルやテナントビルも多く立ち並んでおり、訪日客需要を発端として、今後も再び、老朽化した建物を建て替える開発ラッシュが起きてくるのではないかと思われます。



「ミーナ京都」は旧京都宝塚ビル跡地に東宝が建てた商業ビルで、ユニクロやGUを擁するファーストリテイリングが手がける関西初の商業施設として、2008年にオープンしました。 地上10階 地下1階 延床面積1.4万平方メートルの規模で、地下階から地上3階までの4フロアにユニクロが営業。



地上4~6階までの3フロアを京都ロフトが占めており、7階にはGUが入っています。



京都最大の商業エリアである四条河原町界隈。JR京都駅ビルにジェイアール伊勢丹が誕生し、ヨドバシカメラの出店や地下街ポルタのリニューアル等、玄関口ターミナルへの商業集積が進む中、四条河原町阪急やマルイ、河原町ビブレの閉店等、同エリアへの影響が無かった訳ではありませんが、それでもこれだけの商業施設が維持・運営されているのは、根強い需要があるからに他なりません。

人口規模はそれほど神戸と変わらない京都ですが、何故これ程の商業集積が図られてきたのか。インバウンドによる底上げによって京都商業に大きな追い風が吹いていた事、またこれから再び追い風が吹く事は確実ですが、それ以前にこれだけの商業規模を京都が維持できてきたのは、巨大商業地である大阪から絶妙の距離にある事、そして京都府内や隣接する滋賀県に競合都市や大規模商業施設が少なく、これらの商圏をほぼ独占的に京都市が担っている事が大きいと言えます。



大型商業施設のみならず、四条河原町には新京極等、商店街も広範囲に立地しており、京都商業・経済の底力を感じさせます。しかしながら、京都では厳しい景観規制によって都心エリアの土地活用に大きな制約を受けており、全国諸都市で目下行われているような大規模再開発は殆ど望めないという環境があります。京都市は今後、規制緩和に向けた措置を講じ、状況の打開を図る方針です。これについては、京都駅南側の状況をお伝えするレポートにて、より詳細について触れたいと思います。

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  1. 摂津国人 より:

    > 京都府内や隣接する滋賀県に競合都市や大規模商業施設が少なく、これらの商圏をほぼ独占的に京都市が担っている事が大きいと言えます
    仰る通りでしょう。京都市街と京都駅の商業施設数の推移を比較した動画がありますが、京都市街の施設数に大きな減少は認められなかったものの、京都駅の施設数が増加していることから、「新たな需要を掘り起こした結果、京都駅の商業施設数が増加した」と結論付けていました[1]。私も京都に長く住んでいたので肌感覚で感じていたのですが、基本的に京都市民の多くは京都の市街地に出かけることが多いのに対し、京都市外(滋賀県、奈良県並びに京都市及び京都府南部など)にお住いの方は京都駅の利用が多かったです。これは単純な理論で、滋賀県から京都への鉄道アクセスは実質的にJRのみが、奈良県及び京都府南部からは近鉄及びJRのみが担っているので、自然と京都市外からアクセスしやすい京都駅の商業施設を利用することになります。また、インバウンドで国外から来日した観光客はJapan Rail Passを持っていてJR 在来線は乗り放題ですので、自然と京都駅から京都観光をスタートします。また、京都の内部まで入り込む阪急京都線や京阪ではどこの駅で降りればいいのかわからないようですが、JRならとりあえずKyoto Stationを目指せば間違いないと考えているようです。 コロナ前にJR西は京都駅の混雑緩和のため、近鉄なら丹波橋、JR奈良線なら伏見稲荷で京阪への乗り換えを推奨していたほどです。

    [1]【京都を制圧?】中心地から遠く外れた京都駅は、繁華街である四条河原町を圧倒し、京都の中心に君臨できているのか?(動画15.30ごろから)
    https://www.youtube.com/watch?v=VIlHXjGolKs

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