ホテル・旅館宿泊記

ホテルオークラ神戸 宿泊記 伝統と格式を兼ね備えた老舗シティホテルはベイエリアのランドマーク 課題は老朽化とどう向き合うか



メリケンパークの北側中央部に聳える地上35階建の白亜の高層タワーはポートタワー、海洋博物館と並んで神戸ベイエリアの象徴的な存在として君臨しています。1989年に開業し、一昨年前に30周年を迎えたホテルオークラ神戸は現在も市内で最も格式の高いホテルとして、ビジネス、観光時の宿泊利用や結婚式をはじめ、政財界の様々な会や結婚式を催す場としても重宝される存在です。

 

神戸一の格式の高さを誇る



オークラ、ニューオータニ、帝国ホテルは国内の高級老舗ホテル御三家として、唯一無二の存在でしたが、近年は次々と進出してくる外資高級ホテルや前代未聞のビジネスホテルの建設ラッシュによってその確固たる地位に揺らぎが生じています。



ホテルオークラ神戸のロビーは由緒あるオークラ東京のロビーを設計した谷口吉郎氏が総合監修しただけあって、オークラ東京によく似た雰囲気や意匠が与えられており、その格式の高さは昨今に建設された多くの中小のホテルとは一線を画す荘厳さがあります。



デザインにはやはり古さを感じさせますが、バブル期真っ只中に完成したシティホテルとあって、非常に凝った造りには誰もが目を見張るでしょう。

 

従業員の高いホスピタリティと課題



加えてスタッフのホスピタリティは宿泊客に気負わせる事なく、一流のサービスと気遣いの提供の心意気を感じさせます。



しかし多くの老舗旅館が抱えている課題をこのホテルも直面している事が明らかでした。



宿泊したのは15階までのメインフロアスタンダードツインにエキストラベッドを置いたトリプル。



ホテル内で一番狭い部屋ではありますが、それでも29平米あり、スペースに余裕があります。効率化を求めて限られた床面積に部屋をぎゅうぎゅうに詰めん込んだビジネスホテルとは異なるゆとりがあります。

ベッドのマットレスは硬めでした。



デスク周りの調度品はカジュアルな雰囲気です。



ソファーセットと丸テーブル。コンプリメンタリーウォーターが提供されます。

同ホテルでは2015年より3年を掛けて、客室のリニューアルを実施。壁紙やフロアカーペットの改修、建具の刷新、カーテンの交換等が行われました。



水回りの様子です。洗面台やバスタブも大きく広さが際立ちます。どうしても老朽感は否めませんが、清掃はしっかりと行われています。アメニティは必要最低限揃っています。



16-27階はオーセンティックフロアとしてメインフロアよりもグレードアップされています。



調度品やカーペットもよりシックな色調でまとめられており、落ち着きがあります。



建物東西に配置しているスタンダードはメインフロアもオーセンティックフロアも広さは同じです。南北に配されたデラックスは両フロア共に37平米あり、更にスペーシャスです。



窓横のソファーセットもデザイン性が高められています。



オーセンティックフロアにはコーナーにミニバーも備わります。

更に上層階にはスーペリアフロア、プレシャスフロア、スイート、ロイヤルスイート、プレシデンシャルスイート等のゴージャスや部屋が多数ある他、和室や和洋室等、多彩な部屋が用意されています。



しかしながら、写真では伝わらない老舗ホテルならではの欠点があります。それは匂いです。上水道の配管や空調等、表面上のリニューアルでは解決のできないハード面の老朽化は臭覚に訴えてきます。そして水回り。これらの改修には膨大なコストが発生する他、長期に渡る営業の停止を余儀なくされる為、踏み切る事ができない課題です。オークラ神戸にも古さを感じる匂いが館内を覆っています。

 

ゴージャスな施設と細部に渡る拘り



天井の装飾や照明等、随所に拘りを感じさせます。これらは歴史を感じさせるこのホテルの財産でもあります。



朝食ブュッフェ会場となった宴会場。天井の花を象った大型照明、木材をふんだんにあしらった壁等、迎賓といった言葉が相応しい空間です。無論、料理の味や質は一流ホテルに相応しく、満足の行くものでした。



オークラを代表とする日本庭園。緑豊かなその風景はメリケンパークの一部という事を忘れてしまうような美しい庭園空間が広がっています。



ポートタワーや海洋博物館が借景とする庭園には神戸らしさを感じる事ができます。



総合ホテルとして、神戸ポートピアホテルと人気と役割を二分しているホテルオークラ神戸。広大な敷地面積に複合機能を盛り込んだウォーターフロントのシティリゾートホテルは今後の神戸にも無くてはならない存在であり続けると思います。

 

将来の建て替えの鍵を握るのは?

ただ将来必ずやってくる建て替えの問題にも向き合う必要があります。オークラ東京は惜しまれながらも全面建て替えを選択しました。帝国ホテルも再開発で建て替えられます。世界の老舗ホテルは歴史と共に歩むという選択肢も与えられますが、日本のシティホテルは絶えずスクラップ&ビルドが繰り返される日本の文化においては、新陳代謝無しに競争力を保つ事は難しいようです。



オークラ神戸の場合、敷地には余裕があるので、宿泊棟の営業を継続しながら、新宿泊棟を敷地内に建設し、その後、既存棟を解体する手法での建て替えは可能でしょう。土地・建物を保有するのは森トラスト総合リート投資法人。昨秋、同法人が資産の運用を委託する資産運用会社である森トラスト・アセットマネジメントとホテルオークラ神戸の間に2022年4月1日から2032年3月31日の10年で定期建物賃貸借契約(一棟一括賃貸借)が締結されたので、少なくとも向こう10年は現在の建物を継続利用する予定です。10年後は築40年以上を越える建物になります。神戸経済がこの場所にシティホテルを抱え続けていく体力を維持できるか次第でその後のオークラ神戸の行方が定まっていくのではないかと思います。



ホテル基本データ
所在地 神戸市中央区波止場町2番1号
規模 地上35階 地下2階
用途 ホテル(475室)
構造 鉄骨鉄筋コンクリート・鉄骨造
敷地面積 30,944.44平方メートル
延床面積 72,246.86平方メートル
設計 観光企画設計社
施工 鹿島建設 大成建設 大林組 野村建設工業
開業 1989年3月https://www.kobe.hotelokura.co.jp/
公式サイト

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