ポートアイランドII期

ポートアイランドプロジェクト 医療産業都市構想

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再び半年ぶりにポートアイランドを取り上げてみたいと思います。建設が進められていた「神戸低侵襲がん医療センター」が4月1日に完成し、開院しました。

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同院は外科的手術を施さずに放射線と化学療法のみのでがん治療に特化した専門医療センターです。神戸大医学部付属病院長らが計画。民間都市開発推進機構やシスメックスが出資し、土地は神戸市から賃借して開院が実現しました。

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先端医療センター駅から続くプロムナードに連結するデッキが整備されています。ここから同院2階へアクセスが可能です。

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高齢者には外科的手術は体力的に難しい場合が多く切らずにがんを治療することができればそれに越したことはありません。山崎豊子著「白い巨塔」では切ることが全ての財前と病理一筋の里見という対照的な二人の登場人物が出てきます。今や切らないという選択肢も有効な治療法になってきたということで、こうした専門院が神戸に開業したことは画期的な事と言えます。

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神戸低侵襲がん医療センターに隣接して開業したのが医療法人康雄会が運営する「西記念ポートアイランドリハビリテーション病院」です。こちらも4月1日に開院。

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地上6階建てで136床。リハビリテーション科を中心に診療6科が備わり、リハビリを365日体制で行います。康雄会は灘区備後町に西病院を運営する他、ホテルオークラ神戸内にもクリニックを開いています。

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ポートアイランドリハビリテーション病院の隣に開かれたのが日本初の小児がん専門治療施設「チャイルド・ケモ・ハウス」。病室ではなく、居住施設19戸が備わり、家族が患者と一緒に生活しながら、治療を受けることができる施設です。建設費の7億円は公益財団法人日本財団等の寄付や施工を手掛けた積水ハウスも2億円を負担しています。

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昨年開院した神戸市立医療センター中央市民病院に近接して、上記三施設が同時開業。医療産業都市における中核医療施設の集積度が一気に高まりました(私も年末に初めて新中央市民でお世話になりました…)。

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チャイルド・ケモ・ハウスに隣接するポートアイランド南公園は一部エリアに改良工事が施されています。

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南公園東側の中央緑地の東端はすでに更地化されて仮囲いが設置されています。立地的にはイケア神戸ポートアイランド店の南側です。ここには現在、須磨区高倉台にある兵庫県立こども病院が移転開院します。

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敷地面積は約26,000平方メートル。すでに造成工事は完了しており、建物の本格着工を待つばかりです。

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今年度中に着工の予定です。イケアの真向いになります。

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新病院は地上7階地下1階建(鉄骨免震構造)で、延べ床面積は約35,000平方メートル。病床数は290床の予定です。屋上は緑化され、南公園と直結して緑豊かな治療環境を整えます。

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更に長年に渡って構想が進められてきた「神戸国際フロンティアメディカルセンター」がようやく本年に着工に至るようです。120床の病床のうち20床を生体肝移植用とし、国内患者を優先しつつ、海外からの患者も受け入れる方針とのこと。一時はアラブのソブリンファンドが投資するという話もありましたが、リーマンショックによって頓挫。200床の申請が認められず120床になったりと紆余曲折を経て、ようやく開業に向けてプロジェクトが動き出すようです。

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施設は地上8階建て延床面積は13,407平方メートル。角部はアールを帯びた外観となるようです。

同センターの着工が実現するとようやく計画中の全ての中核医療施設が出揃うことになります。

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医療産業都市構想が進む中核エリアの東側はホームセンタームサシが撤退後、大きな空白地帯となっていました。

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しかしその敷地の一部では新たな建物の建設工事がスタートしています。

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この工事は「カン研究所神戸ポートアイランド本社研究所」の建設工事です。カン研究所はエーザイの子会社で2006年にポートアイランド・神戸MI R&Dセンター内に研究拠点を開設しましたが、関西イノベーション国際戦略総合特区における特定国際戦略事業への進出法人として神戸市からの指定を受け、隣接地に新本社施設を建設して研究規模を拡大します。

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新施設は地上5階建て 延床面積12,000平方メートルで約100名の研究員が従事する予定です。

ベーリンガーインゲルハイム、アスビオファーマに続いて大手製薬会社子会社が自前による本社屋や研究拠点を開設することになり、ますます医療産業都市の拠点集積性が高まり、未進出企業に向けての認知度や重要性が深まることになるでしょう。

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つい先日にはダイキン工業が国際医療開発センター(IMDA)に拠点を開設したとの報道がありました。

4月30日現在での医療産業都市における進出企業団体数は234に上っています。

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医療産業都市だけでなくポートアイランドは企業投資が最も盛んなエリアです。神戸に本社を置く物流大手の上組は300億円を投じて大規模青果物流加工センターを建設しました。国内最大規模の燻蒸・定温保管設備を有する施設で91,000平方メートルの敷地内に青果棟、加工棟、一般倉庫、事務所棟、マリンハウス等が整備されています。

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また港島クリーンセンターは老朽化が進んでおり、同様に老朽化している苅藻島のクリーンセンターと統合してポーアイ二期地区に新たなセンターが建設される予定です。この統合によって現状稼働している二施設はその役目を終えることになり、跡地利用の行方が気になります。特に港島CCは医療産業都市に隣接しており、新たに企業や医療施設を誘致することができる用地が生まれることになります。

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そして神戸市は先日、手狭になっている神戸国際展示場の建替構想を発表しました。現在、国際展示場は1-3号館の3棟で構成されていますが、2022年度を目途にこれを一体化し、展示面積を15,000平方メートルに拡大します。

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3棟を同時に建替えず、順次建替えていく予定で、会議を誘致、開催しながら計画を進めます。神戸コレクション等、多くの会議、イベントを開催している同展示場ですが、近年は医療産業都市の成長によって医療関連の国際会議や学会数が急増中。

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神戸は日本初のコンベンション都市として他都市より一足先に地方博をきっかけとして、今の国際展示場やホテルを併設した国際会議場を整備しました。バブル期には全国の政令市をはじめとする多くの都市が神戸を手本としてコンベンション施設を建設。会議誘致の都市間競争が激化しました。2011年の国際会議数は東京が470、福岡221、横浜169、京都137、名古屋112、そして神戸83の順。まずは開催数を100の大台に乗せることが課題のようですね。

ポーアイには追い風が吹いています。進出企業の出入りは相変わらず激しいようですが、確実に定着企業数は増加傾向にあり、自社施設を整備する企業も増えています。

ポートライナーの朝晩の混雑は深刻化しており、輸送力の増強は必須です。平日8時台の運行本数は25本で2分29秒に1本の割合ですが、一編成辺りの輸送量が少ない為、すでに限界です。進出企業数が目標の500を越えるようになったら処理できないでしょう。

また神戸空港の利用者数はスカイマークが関空のLCCの影響をモロに受けており、減少傾向にあります。やはり関西三空港の一体運営によってそれぞれの空港を利用者にとって最も利便性の高い形へ最適化していく必要があります。



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POSTED COMMENT

  1. r2d2 より:

    もはや構想の名がとれて、医療産業都市と言っても言い過ぎじゃないないですね。
    空港の方ですが、確かにLCCの影響は結構出てますよね。でもSKYが日新石垣の就航を発表しましたし、他社も含めて神戸から路線拡大を狙ってるみたいです。しかし30便規制は新たに拠点化しようとする会社からすれば大きな重しになると思います。今の政権は規制緩和を積極的やっていくそうなので、期待したいです。
    ポートライナーの方も8両化や新たな交通システムの導入を真剣に検討する時期にきてますね。こうなってくると三宮駅の改造となってしまうのは私だけでしょうか(笑)

  2. しん@こべるん より:

    r2d2さん

    そうですね。すでに構想ではなく、医療産業都市として成立してるんじゃないかと思います。やはり国の規制はフェアではないですね。競争を規制するべきではないと思います。利便性の高い空港が最大限活用されていない程、無意味な事はありません。まあ空港開港までの経緯は色々とあったかもしれませんが。。。やはり三宮の改造にはポートライナー駅の存在を市がどうするのかといった具体的な指針を示す必要がありますね。JRと阪急がようやく三宮の改造に乗り出すのですから、市も積極的にグランドデザインを描く必要があります。

  3. ながたるん より:

    三宮駅はじっくり計画的に作って欲しいので当座の対応しかないですね 二階建て車両とか無理ですかね 開発に時間かかるかなぁ 将来的には連結増やしたいですけどね

    この際ライナーに頼らず直通 あるいは主要部循環バス出して三宮直結をスムーズにしては… ライナーは空港アクセスと住民 島内就業者とりわけ医療関係者はバス という感じで

    なんとか凌いでおいて本命はやはり三宮及び主要駅の拡大改良が必要なんでしょうけどね

  4. しん@こべるん より:

    ながたるんさん

    二階建て車両。面白いですそれ。開口部を大きくとって座席を外側に向ける。伊勢志摩の新型特急「しまかぜ」のようなポートライナーがあったら楽しいです。ポートライナーは乗るだけでも観光列車みたいなもんです。休日はきっと人気出るんじゃないかなと。

    バスの運行は検討されているようですね。

  5. ながたるん より:

    なら取り下げます

    余計混雑しそうです(笑)

  6. セイ より:

    完全に重要見込みがあるとしたら、
    ライナーではなく海岸線支線はどうでしょう?
    勿論、阪神高速湾岸線早期着工、神戸空港の規制撤廃他まで考慮しなければ
    なりません。

    三宮を東玄関とするなら神戸を西の玄関とし神戸からポートアイランドそして空港まで
    を結ぶのはどうでしょう。

  7. sirokuma より:

    以前、アジア富裕層をターゲットにした医療施設と専用の高級ホテルの建設を検討している人達がいましたが。なにせポーアイには各種制限・規制が多くて四苦八苦していました最終的に特区による事業化を模索していたようですが事業化をあきらめたんでしょうか最近はそんな話も耳にしなくなりました。神戸の中心地にあるポートアイランドは、新交通システムや飛行機・船などの交通インフラは一通り揃っており、ご紹介の通り空き地もまだまだあります。非常にポテンシャルの高い島なんですけど、なんでも中途半端なんです、新交通システムも空港も可能性を秘めているだけに批判も大きい。
    次の市長には、未来の神戸の在り方を問い直しポートアイランドなど市の大事な財産を自由に活用できるように各種規制制限を大胆に撤廃して欲しいですね。
    その手枷足枷が外れるとポーアイの姿は民間の力で一変すると思います。その第一弾がポートライナーなど交通インフラの再検討になると思います。

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