JR三ノ宮新駅ビル

三宮ターミナルビル建て替えについて

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JR西日本が前月27日に発表した中期経営計画2022に三ノ宮新駅ビルの概要が含まれていなかった事はすでに周知の事実ですが、これに対する皆さんの深い深い落胆度合いを示すかのように非常に悲観的なコメントを多く頂いています。またそれらに対する皆さんの思いも書き込んで頂いています。これら全てのコメントについて私なり更に思う事もあって新たな記事を書く事にしました。

まず中期経営計画内に具体案が示されなかった理由を考えてみました。その一つとしては、前回の記事には間接的な書き方をしましたが、JR福知山線脱線事故から14年目を迎えたその2日後に華々しい開発プロジェクトを発表するのは適切ではないという判断が働いた可能性があると思います。冷静に考えると、例え発表できる状態であっても、敢えてこの日を選ぶ事はないのではないかと思います。

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次にポートライナー三宮駅の取り扱いについて最終調整が神戸市と折り合っていない可能性と、神戸阪急ビルの際もありましたが、市の景観審議会との最終調整が終わっていないという可能性も考えられます。

これらが足枷となっている場合は勿論、大きな問題ではあります。神戸市には今一度、現在の神戸に必要なのは規制ではなく民間に投資意欲を掻き立てさせる緩和と理解という事を認識して欲しいです。この点については福岡市が模範例に挙げられるケースが多いですが、思い込みやおかしな独自性、凝り固まった固定観念、そして薄っぺらいノスタルジーに囚われないで欲しいと思います。神戸の良さとその歴史は開港以来、新しい物を柔軟に採り入れていく事であって、守りに入る事ではありません。

神戸阪急ビルに関する景観審議会の中で、JRの駅ビルが建つ際はヴィーナスブリッジから見た場合にその背後に見える海が隠れるような高さの建物を許すな的な発言をした委員がいました。寧ろそんな意見を述べる委員は不要ですし、身の程知らずです。極論を言えば民間企業が自社保有地に自前の資金でどんな建物を立てようと、法規制を守っている限りにおいては注文をあれこれつけられる筋合いはないというのが、JR西の心情でしょう。特に市から三宮の活性化の為に駅ビル建て替えを要請している側面があるにも関わらず、そんな上から目線の注文を好き勝手にされれば、人の心ですから相手にしたくなくなる気がしてしまうのは当然です。

しかしポートライナー三宮駅とJR三ノ宮駅間の新たな動線構築の調整に時間を要しているのなら、話は別かもしれません。

人口減社会の中にあって各鉄道会社は脱鉄道事業を収益の柱を育てる事に血眼になっています。駅を活用した不動産事業はその中でも最も力が注がれています。三ノ宮駅はJR西にとっても数少ない貴重性と高い不動産価値を持った超一等地です。これを積極的に開発しないという選択肢は同社にはありません。中期経営計画の3大プロジェクトの1つとして位置付けたのはリップサービスでも何でもなく、単に本気でそう考えているからと見るのが妥当です。

そもそもJR西は前期の中期経営計画2017内では終始一貫して三ノ宮駅ビルについて2018年以降の開発としてきました。来島社長も2018年度に絵姿をお見せできればと発言しています。よってJR西にしてみると、それぞれのタイミングついては予定通り進めているという事になります。ただ温泉採掘、さんちか会社の株式購入、三宮ターミナルビル閉館と1つ1つのステップに長い時間が掛かっています。建て替えを推し進めるにあたってはターミナルビル内のテナント契約期間も密接に関係があったのではないかと思われます。

しかしその間にもJR西管内の数々のターミナル駅の増床やリニューアルが実施され、新駅も続々と開業し、まるで三ノ宮が置き去りにされているかのような感覚に我々が陥らされていたのも事実です。

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建て替えが検討されているJR広島駅ビルASSE

焦らされ続けて我々も痺れを切らしているのですが、実は同じような想いを広島市民も抱えているのをご存知でしょうか。JR広島駅ビルの建て替えも三ノ宮と同時に今回の3大プロジェクトの1つに掲げられていますが、現広島駅ビルASSEの建物は三宮ターミナルビルよりも遥かに年季の入った築53年で、バブル期から建て替え構想が出ては消えてきました。JR西の広島支社長が広島駅ビルの建て替え可能性について初めて具体的に言及したのが2013年ですので、我々と同じく長期に渡って広島市民も辛抱を強いられている状態です。

ただ唯一、神戸と異なる点は長年硬直していた広島駅前の再開発が南北で急激に進んでいる事やJR西が広島駅橋上化とそれに伴う駅ナカ商業施設の新設及び新幹線口の空中回廊整備等と大規模な駅舎のリニューアルを進めているので、悲観的にならずにこれらの再開発の延長線上に駅ビル建て替えがあると考えられている事です。また直接の事業・運用主となる中国SC開発も駅ビル建て替えを公言している点も広島市民が時間の掛かっている駅ビル建て替え構想をポジティブに捉えられる要因にもなっているでしょう。

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新設されたばかりのJR広島駅南北自由通路

JR広島駅の場合も駅ビルの建て替えに伴い、現状、駅前広場に起点駅を持つ広電こと広島電鉄という路面電車が新駅ビル2階へ乗り入れる建物構造に大幅改造される予定です。JR九州管内の小倉駅が駅ビル中央部に市営モノレールが乗り入れる構造をとっていますが、これに近い形になるものと想像できます。この基本方針は2014年にJR西、広電、広島市の三者間での基本合意を形成しています。従って現状から大規模な構造変更を前提とした建て替えとなる予定です。これまで地上を走っていた広電が駅周辺にて高架化し、新駅ビル内へ進入する事で利用者にとって乗り換えがスムーズなコンコースが実現しますが、これには広島市、広電、JR間で綿密な調整や三者で相応の負担分担による大型投資が必須です。

この点、三ノ宮のポートライナーとよく似ている状況にあるのですが、神戸市はJR西とポートライナー三宮駅についてどう調整しようとしているのでしょうか。市長は駅の移設は行わないと発言していますが、8両編成化の為にJR新駅ビル内に駅を拡張するのであれば、同時にJR駅との乗り換えをスムーズにする為の何等かの方策も講じるべきかと思います。それにはJR駅直通の新改札口を設置するのが最も手っ取り早いかと思います。東京のJR浜松町駅から羽田空港へアクセスする東京モノレールへの乗り換えのような形が一例でしょう。しかしこれにはJR駅ホーム上に乗り換え用の橋上通路を構築する必要があります。この建設に伴うJR西へのインセンティブとしてポートライナー三宮駅の上空は新駅ビルの床として活用できれば、床面積の拡大が可能となります。阪急の市営地下鉄乗り入れはJR西にとっては好ましくないはずですが、代わりにポートライナーからの乗り換え客取り込みで相殺とすればバランスは保てるのではないでしょうか。

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ちなみに広島駅ビルの建て替えについては2020年代の中頃とされている以外、具体的なスケジュールは何も示されていません。既存ビルの閉館時期ですら明らかではないのです。それに比べればすでにターミナルビルの閉館が実現しているという点については三ノ宮が大きく先行していると言って良いでしょう。

広島駅ビルは現在も中国SC開発が運営しています。兵庫県にも神戸SC開発があります。神戸SC開発はJR神戸線、山陽本線管内の駅ビルや駅ナカ商業施設の運用を担っています。ピオレ姫路、明石、リブ住吉、モンテメール芦屋、プリコ三宮、神戸、垂水、六甲道、西明石は全て神戸SC開発が運営しています。無論、このSC開発二社はJR西のグループ企業ですが、三宮ターミナルビルのみは別で三宮ターミナルビル株式会社が事業主でした。この会社の資本は設立時に当時の国鉄が50%、残りは神戸市、神戸商工会議所、地元企業など十三社が負担したと言います。建物所有者はJR西、三宮ターミナルビル、ジェイアール西日本ホテル開発の三社です。新しい駅ビル建設に再び三宮ターミナルビル社が関わるのかどうか。

また三宮再開発が未だに今ひとつ盛り上がりに欠ける気がするのはやはり芯が通っていないからでしょう。その芯とはJR三ノ宮駅ビルです。この駅ビル計画さえ動き出せば堰を切ったように周辺部の再開発が進み始めると思います。

JR西にとっては天王寺駅や京橋駅の方が三ノ宮駅よりも乗降客数が多く、これら2駅の駅ビル再開発が先行されてもおかしくない環境にある中で、三ノ宮駅が優先的に開発される事は喜ぶべきでしょう。

皆さんもうひと踏ん張りです。待った分だけ計画発表時の喜びも大きくなります。



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  1. 灘区民28号 より:

    先の記事でどなたかが神戸の衰退は震災があったからと言われましたが、ハードは別にして、人心と言う部分では間違いなくそうですね。
    阪神大震災当時はこれほどの天災の激甚災害は前例がなかったため、市民も諦め感が強く行政を責めなかったです。義援金や行政保障もわずかでもあまり文句言わなかったです。
    しかし、以降の激甚災害、とくに東日本大震災における国、企業、外国からの支援は阪神とは比べものにならない手厚さ、補償の多さに市民の不満が爆発したのが現状で、震災時は働き盛り世代も今や老境を迎え将来の不安や文句をぶつける相手が神戸市しかないからです。これはノスタルジーにひたり始めた老人世代からの若者、神戸市政に対する【嫉妬】なんです。
    神戸新聞が共産化したのも震災時に共産勢力が強い京都新聞に世話になったのも影響しています。
    わたしも老境を迎える世代として恥ずかしいことです。

  2. しおさい より:

    昨年10月の市長選時の久元市長の公約を見ておられない方も多いと思いますが、ポートライナーの新神戸延伸について触れています。
    慎重な言い回しながら、市長自身は、なんとしても新神戸への延伸を実現したいと考えていると思いますよ。

    「●ポートライナーの輸送力強化
    神戸空港やポートアイランド2期へのアクセス性向上、神戸空港やポートアイランド需要増への対応のため、ポートライナーの輸送力の強化をはかるとともに、将来的には、他のアクセス手段との比較検討を行いながら、新神戸駅への延伸を構想します」

    ちなみに、阪急と地下鉄の相互乗り入れについても触れています。

    「●阪急との相互直通検討
    市営地下鉄西神・山手線の利便性向上や地下鉄沿線の定住を促進する観点から、交通ネットワーク全体のあり方、まちづくり、技術面などの課題について、阪急電鉄との意見交換を行いながら、実現に向けた検討をすすめます。」

  3. DAN より:

    差し迫った需要の問題でポートライナー8両化および停車駅の8両ホーム対応は迅速な対応が必要です。市長は2号線の地下化も願望として挙げていますが、山手幹線地下化、ライナーの新神戸延伸、阪急、市営地下鉄の相互直通と合わせて、今のペースで進捗を図れば、構想立ち上げ、識者会議、パブコメ募集、予算決定、事業化まで、どれも実現まで10年以上~30年はかかると思われます。
    そんな時間は神戸にはもう残されていません。
    構想だけならどんな政治家にもできます。肝心なのは事業の実行力です。

  4. 東灘区在住 より:

    初めてコメントさせていただきます。

    京都駅ビル、大阪駅ビルのインパクトを超える駅ビルが、三宮にできる可能性はあるのでしょうか?正直かなり難しいと考えています。
    インパクトの薄い駅ビルの場合、神戸以外の人への請求力はほとんど期待できません。そうなると、駅ビルがセンター街や元町の賑わいを奪ってしまい、神戸の死期を早めてしまうだけとなる可能性もあるんじゃないかと危惧しています。

  5. 丸山 より:

    行政が景観にどれくらい口出しするかは重要な論点ですよね。
    欧州の街並みが「奇麗だなー」と思うのにはかなりの規制があるからです。
    窓辺に置く花も「この季節にはこれ」など努力目標レベルですが、行政からの指示があると聞きました。

    京都の街並みも外国人からしたら、なんの規制もなく好きなような建てただけなので、無茶苦茶に見えるらしいです。

    何かしらの街の統一感は大事だと思いますね。

  6. XYZ より:

    中心地から離れた広島駅との比較・・・

    虚しい
    虚しい
    悔しい・・・

  7. 市民 より:

    神戸市の再開発計画には微塵も危機感を感じないですよね。三十年先を、、、とありますが、ただでさえ現時点で京阪神の都市間競争で大阪京都に大きく差を付けられ、もはや止まらない勢いの梅田に吸い込まれ、再開発も計画倒れとなりかねませんよね。ストロー効果でどんどん肥大化する梅田に対する三宮のプレゼンスは消滅危機に瀕しているように殆どの神戸市民は業を煮やしているはず。今後梅田のストローが神戸を吸い付くす勢いに、出遅れの次元を超越した悠長な計画で挽回できるはずがないと、今一度神戸市にはより高い危機意識をもって計画を前倒ししてもらいたいですよね。

  8. カン より:

    京都ではありませんから。
    神戸に規制は似合いません。
    神戸が発展したのは、規制があったからではなく規制を無くしたからです。
    規制のきつい京都ですらあの景観ですから、神戸の山並みの稜線を超えない高さ規制に、なんの意味があるのでしょうか?

    香港の街並みは何の規制もないですが、世界有数の大都市として発展しその夜景も三本の指に入るほどです。

    ポートライナーの運賃盗難がまだありましたね。
    2回目となると深刻です。

    発展しない街は腐ります。
    川重も神戸製鋼も、今回のポートライナーの件も神戸行政も、根っこは同じ停滞感です。

    街の発展にとって首長の責任はとても重いです。

  9. sirokuma より:

    神戸市の再開発について考えているとどうしても悲観的になります。(笑)
    スピード感なし、”神戸らしさ”という定義されてもいないイメージを元に造られていく都市計画や条例(高さ規制や景観規制等)、金銭感覚ゼロで企業の財布を当てにするような提案しかできない有識者会議って何の有識者なのか?
    私は、一貫して大幅な緩和とインセンティブが必要と考えていますが、そもそも、有識者会議等は、都市開発の大前提となるべき、現在の地価や建築費の水準さえ把握していないのではないかと思っています。現状把握ができていれば、高さ規制の議論など出てこないと思うからです。
    ここ数年は、国の規制緩和政策や超低金利と好景気を背景に企業の投資意欲も高く、都市再開発の環境がもっとも整った時期だと思います。
    この好環境下のなかで、神戸市はいたずらに時を過ごしているように思えてなりません。景気は生き物です、不動産関連の景気も終盤という見方も出始めている状況下で、未だに将来の夢を語るばかりの市長の姿勢は疑問でしかありません。

    追伸・みんなで、神戸市に”神戸らしさ”とは何か?具体的な説明と定義づけを求めてみるのも良いですね。

  10. ウエストン より:

    https://m.facebook.com/permalink.php?story_fbid=776617835882183&id=379156298961674
    【神戸志民党】
    『ユルいけどガチ』、上手いこと言いますね(^^)。神戸市もタワマンと高層ビルじゃない三宮再開発にしてもらいたい。

    http://j-town.net/tokyo/news/localnews/258310.html
    タワマンも駅ビルも見当たらない 福山市の「駅前再生ビジョン」が、ユルいけどガチ

    神戸市の場合、県市会議員に大型開発・高層ビル推進派が見当たらないので、現行の計画を推進するか規模を縮小するかの二択になるのではないでしょうか。

  11. tssk・H[AuCl4] より:

    ネガティブ意見はあまり言いたくないのですが、神戸市には今一度、批判を辞さないくらいの覚悟を持って行動してほしいです。それくらいの気概は必要でしょう。
    例えば、
    ・都心部の高さ制限は撤廃して、三ノ宮新駅ビル、都心超一等地のセンタープラザ(三宮センター街の人の多さに比べれば人の少なさは歴然でシャッター通りの寂れた感があり、都心に相応しくない。震災時の復興プロジェクトで建て替えすべきであった)、ウォーターフロント、神戸駅周辺、新神戸駅周辺を200m以上の超高層ビル群にする(確実に需要はあるはずで眺めも壮観だと思う)。
    ・旧居留地はレトロな雰囲気は残しつつ、高さは低くても機能的に優れたものを優先的に開発させる
    ・阪急と市営地下鉄を直通させて人口が特に減少し続けている西区、北区の生活の利便性を向上する(明石市は新快速停車駅でJR一本で大阪まで行けるため交通の便がよい)
    ・都心部の住居目的のタワマン建設をオフィスビル建設を妨げない範囲で自由にさせる
    ・神戸空港を24時間利用可能、国際線利用可能にできるように関西3空港懇談会を早急に開催して神戸市の意見を尊重してもらえるように取り計らう
    などです。
    どれか一つでも実現できれば、いいのですが高嶺の花ですかね………。

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