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福岡市はアジアのゲートウェイシティとして高まるインバウンド需要を背景に九州の中心としての求心力を更に強めていますが、その中枢である天神は博多駅周辺の再開発によって競争が激化し、トップとしての座が揺らぎ始めていました。福岡市はそんな天神の再整備に乗り出し、旺盛なオフィス、ホテル需要を武器に容積率アップや高さ規制等の規制緩和を最大限に活用して民間投資意欲を引き出す「天神ビッグバン」構想を打ち出しました。
① | 航空法高さ制限 エリア単位での特例承認(天神明治通り地区 約17ha, 旧大名小学校跡地 約1.3ha) |
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② | 官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」, スタートアップカフェ |
③ | 天神1丁目南ブロック(地区整備計画策定,地下通路整備) |
④ | 天神地下街仮設車路の有効活用(天神ふれあい通り駐輪場・地下通路) |
⑤ | 旧大名小学校跡地まちづくり |
⑥ | 水上公園 |
⑦ | 地下鉄七隈線延伸事業 |
⑧ | 交通混雑の低減に向けた駐車場の隔地化・集約化 |
⑨ | 都心循環BRTの形成 |
⑩ | 天神ビッグバンの奥座敷(西中洲)の魅力づくりに向けた道路整備と景観誘導 |
⑪ | 春吉橋賑わい空間の創出 |
天神地区では,アジアの拠点都市としての役割・機能を高め,新たな空間と雇用を創出するプロジェクト“天神ビッグバン”を推進しています!
これにより,天神地区は付加価値の高いビルへの建替えなどがスピード感をもって進み,ビジネスやショッピング・憩いをはじめ,人・モノ・コトが交流する新たな空間が生まれます。
また,今まで以上に多くの人が活躍する一方で,過度に自動車に依存しない,ひとを中心とした歩いて出かけたくなるまちに生まれ変わります。
数値目標: 2024年までの10年間で30棟の民間ビルの建替えを誘導し、新たな空間と雇用を創出する。
「天神BBB(ビッグバンボーナス)」
認定要件① 低層部・公開空地を含めたデザイン性の高いビル
認定要件② 周辺ビルとの連続性を意識した建物デザイン
認定要件③ まちに潤いを与える木陰や花、目に見える緑化を推進
認定要件④ ユニバーサルデザインへの配慮
どこかの市は民間投資を引き出す努力や規制緩和を通じてインセンティブをフル活用できるような制度を設けているのでしょうか。特定都市緊急再整備地区の指定を受けて、得られるメリットを明確にし、地権者に再開発を検討させるような具体的な活動はしているのでしょうか。
天神ビッグバンは都心から至近距離にある福岡空港の為に航空法による厳しい高さ規制の緩和を国交省に働き掛け、これまで70m以下に抑えられてきた天神のビル街で100mを越える超高層ビルの建設を可能にしました。
この規制緩和適用を最初に受けた第1号のプロジェクトが天神ビジネスセンターです。
事業名称 天神ビジネスセンタープロジェクト
所在地 福岡市中央区天神1丁目
事業者 福岡地所株式会社
敷地面積 3,917.18㎡
建築面積 3,234.55㎡
延床面積 61,116.98㎡
階数 地上19階、塔屋2階、地下2階
用途 事務所、店舗、駐車場等
建物⾼さ 約89m
構造 S造 一部 RC造
耐震性能 免震構造
着工 2019年1月
竣工予定 2021年9月予定
設計者 基本設計:株式会社日本設計
実施設計・施工:前田建設工業株式会社
建築デザイン 重松象平/OMA
インテリアデザイン グエナエル・ニコラ/株式会社キュリオシティ
既に着工している天神ビジネスセンターの現場にはカーテンウォールのモックアップが置かれています。カーテンウォールが複雑に配置された独創的なデザインの高層オフィスビルとなる予定で、完成すれば昼夜を問わず、周囲は一変するでしょう。
ビルの低層部には商業ゾーンも設けられる予定で明治通りの賑わいアップが期待できる大規模開発です。
建設中の天神ビジネスセンターの東にある大型オフィスビルが福岡ビル。通称「福ビル」と呼ばれ、天神エリアにおける最大地権者であり、デベロッパーの西鉄こと西日本鉄道の本社ビルでした。西鉄は天神ビッグバンを活用してこのビル及び街区内の全てのビルを建て替える計画です。
第1期として福ビルと南側に隣接するファッションビルの天神コアを集約して地上19階、高さ96mの高層複合ビルに再開発します。
事業名称 (仮称)天神一丁目 11 番街区開発プロジェクト第1期事業
所在地 福岡市中央区天神一丁目11番
事業者 西日本鉄道株式会社
敷地面積 約 6,200㎡
延床面積 約 100,000㎡
階数 地上19階 塔屋1階 地下4階
建物高さ 約96m
設計者 基本設計 株式会社日建設計、実施設計 未定
外装デザイン Kohn Pedersen Fox Associates(KPF)
用途 商業、オフィス、ホテル、カンファレンス 他
建物幅から想像すると、巨大なビルに変貌を遂げる事になります。
天神コアの裏側に福岡ビブレがあります。2期計画でビブレを建て替える模様ですが、また開発の概要は決定していません。天神ビジネスセンターと福ビル街区は隣合っており、デザイン性の優れた高層ビルが並んで誕生しますので、周囲を圧倒する事になるのではないかと思います。
そして三菱地所と明治安田生命が共同保有する商業ビルのIMSも建て替えを発表しました。天神を代表するこの建物の再開発をも進めさせる天神ビッグバンの力恐るべし!
ビッグバンの威力は止まりません。明治通りの東側でも巨大再開発が動き出そうとしています。大名小学校の敷地を活用した複合都市の建設が予定されています。
この広大な開発用地では天神ビッグバンの親玉のようなプロジェクトが計画されています。市有地の為、福岡市が事業協力者を公募し、複数の企業グループから応募と計画のプロポーザルがありました。
事業名称 旧大名小学校跡地活用事業
所在地 福岡県福岡市中央区大名二丁目165番1及び165番2
事業者 大名プロジェクト特定目的会社
積水ハウス株式会社 福岡マンション事業部
西日本鉄道株式会社
西部瓦斯株式会社
株式会社西日本新聞社
福岡商事株式会社
敷地面積 11,821.64㎡
延床面積 約79,260㎡(容積対象面積)
階数 オフィス・ホテル棟:地上24階/コミュニティ棟:地上14階
高さ オフィス・ホテル棟:約110m/コミュニティ棟:約45m
用途 オフィス・ホテル棟:オフィス、ホテル、商業 コミュニティ棟:老人いこいの家、保育施設、創業支援・人材施設、共同住宅
着工 2019年6月頃
開業 2022年12月頃供用開始
3年後には天神初となる本格的な超高層ビルが誕生する事になります。福岡には現在までにヒルトン、グランドハイアット、ハイアットリージェンシーのみに留まっていましたので、リッツの進出は大きな影響を与えるでしょう。
地方自治体が国交省の規制を緩和させるのは並大抵では出来ない事です。明確な方針と強い意思を以って事に臨み、またタイミングと時流を掴めば、事は動くのです。
大名周辺では福岡の都心には珍しくタワーマンションが点在しています。今回の規制緩和や容積率アップはオフィスビルの建て替えのみに適用される為、タワーマンションの建設が増える事にはなりませんが、高さ規制のより緩い海側に向かってタワーマンションの建設は増加しています。
他にも天神にあるヒューリック福岡ビルも建て替え計画を公表。2024年の竣工を予定してホテルや商業施設を軸にした複合ビルを建設します。他にも天神では老朽化したオフィスビルも多く、これまでに10棟のビルが建て替えを予定し、更に複数のビルが再開発を検討中しているようです。
天神ではビッグバンの影響を受けてか再開発の動きがエリア内に広がっています。渡辺通りの南側で鉄骨建方を進めているのがホテルモントレ福岡。天神では既にモントレラ・スールを営業しているマルイトグループ。主力総合ホテルのモントレを天神に投入します。
天神からは離れた博多駅がJR九州の中枢拠点ですが、同社は天神でも不動産開発を進め
ています。JR九州は分譲だけでなく賃貸マンションの開発も行う総合デベロッパーとしての役割も果たしています。天神でJR九州による大型プロジェクトが進行中です。
天神の渡辺通り南側では風格のあるオフィスビルが立ち並びます。ビッグバンはこれらのオフィスビルの建て替えも促進するのでしょうか。福岡では旺盛なオフィス需要によって床余りを懸念する声はあまり聞かれません。
人口で神戸市が福岡市に抜かれた際、神戸市長は「規模は追わず、質を高める」と述べましたが、質でも劣るならどう勝負するのでしょうか。地権者に既存建物の建て替えを促すにはメリットを明確にしたボーナスを与えなければなりません。つまらない規制を増やすのではなく、質の高く規模の大きな建物を建てれば、より大きなメリットを享受できるよう天神ビッグバンのようにプロジェクト化して喧伝すべきです。三宮クロススクエアは人に優しい、移動が楽になり利便性が上がる、バスターミナルが集約されて便利になると、良い事づくめが挙げられていますが、風格のある駅前を目指す為に民間事業者が進める再開発に対しては何も具体的なメリットは示されていないのです。寧ろ事業者には公共性を高める事ばかり求めています。彼らは慈善団体ではありませんので、利益が出ず、メリットもなけは不要な投資はしません。市長を含めて福岡留学を推奨したいです。
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福岡の勢いは物凄いですね。神戸市はこのまま、のんびりしていると福岡市だけでなく色々な都市に抜かれていきますね。
IMSも建替えかなのか天神BBビックリです。行政も企業側も時宜を逃さずダイナミックに動いていますね。福岡市は天神BBによるオフィスの増床面積や就業人口の増加予測、そして経済波及効果予測も数値化してHPに明記していますね。
福岡市が目指しているのはアジアへのゲートウェイで国内の他都市では無いですね。良質で大規模なオフィス床の大量供給は国内外の優良企業を福岡へ更に呼び込むでしょう。そしてそれは福岡の都市としての風格を高め市民生活を豊かにすると思います。10年を待たずに200万都市になりそうですね。
これを見せられると神戸市の再開発事業は期限の定めのない成り行き任せの事業にしか見えません。
神戸中心部(旧居留地を含む)高さ規制等の各種規制を撤廃し一定面積以上の再開発を行う場合、インセンティブにより容積率を1000%~に大幅緩和していたら、銀泉・その他の駐車場が真っ先に開発されたでしょうね。老朽化したビルの建て替え工事もいっきに促進されたでしょう。数十年に一度の好機を『神戸らしさ』というあいまいなモノに固執して時を浪費している…歯痒いですね。
imsの建替え、三菱地所の公式リリースです。
http://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec190109_ims.pdf
これを読むと天神BBの規制緩和メニューと同エリアの他のプロジェクトが建替えを決断させたようですね。
博多は凄いですね
大型案件目白押し!
それに比べて神戸は何もかもが遅くてイライラしちゃいます
現在の福岡市と神戸市の政策を成長企業と衰退企業の経営に例えて見ると残念ですが明確に相違点が浮き彫りになります。
・成長企業(福岡市)は経営戦略が明確で事業に具体性がありスピード重視であるが、衰退企業(神戸市)は経営戦略が総花的で具体性に欠けスピード感なし。
・成長企業は(福岡市)は成長分野に大胆な重点投資をして未来に向けて変貌を遂げてゆくことが出来るが、衰退企業(神戸市)は過去の姿にとらわれすぎ過去を超えて変貌を遂げることが出来ない。
・成長企業(福岡市)は時勢を読み保有資産を絶妙なタイミングで活用するが、衰退企業(神戸市)は保有資産を時勢も読めずに安売り処分してしまう。
(せっかくの事業用地がハードルの低い事業コンペで処分するため満足のいく結果とならない。)
福岡と神戸は同規模の都市ですが特性の違いもありすべての施策が参考になるとまでは言いませんが実績としての優劣ははっきりしています。
福岡のインセンティブの与え方は企業にとって自由度があり実があり、創造性溢れる大変優れたものだと思います。一方の神戸は規制により建物の形態制限まで設けており投資意欲を明らかに減退させるものです。
余談ですが、神戸市では建築物等の幅 (高さ60Mを超える部分は幅40M以内)までも規制している為、”こべるんさん“に紹介いただいた福岡天神のプロジェクト3例の建物はどれも神戸市では規制に引っかかってしまいます。
非常に厳しい言い方をすれば、神戸は大阪のベッドタウンだから、まだこの程度の低迷で済んでいるとも言えるかもしれません。
福岡素晴らしいですね
羨ましいの一言です!
福岡がうまいのは、ハード(建物)より先にソフト(集客)を進めた所ですね。高島市長の記事にありましたが、交流人口を増やすことで地元住民や企業に「不足感」が出始めた後、満を持してハード強化に動く戦略だったそうです。