前回のJR横浜タワー特集Part1では主に低層部の中央に位置するアトリウムについて取り上げましたが、それ以外でもこの新駅ビルが採り入れた公共空間は多く、Part2ではそれらにスポットを当てたいと思います。
駅ビルの低層部は商業施設となっていますが、複雑な構造体系をとっており、NEWoMan横浜、CIAL横浜、そしてシネコンのT・JOY横浜の3施設が一つの建物に収まる形に入居。
メインとなるNEWWoManはJR東日本の駅ビル開発・運営を担うブランド「ルミネ」の新業態で、消費力のある30-40代の大人の女性を主にターゲットとし、1-10階の10フロア・売場面積13,000平方メートルに115店を展開。
店内は駅ビルとも百貨店とも異なる新しい内装による価値観を提供していると感じられました。1階には百貨店のようなハイブランドを配置しつつ、通路を大きく広めにとって、大人の女性が快適と感じられるゆったりとした空間が意識されています。
温かみのあるナチャラルで上品な内装や照明を駆使。タイルの種類が豊富で、ゾーン毎に雰囲気が大きく異なります。また8-10階の3フロアは飲食ゾーンに充てており、床面積の22%を占める等、昨今の商業施設のトレンドでもある「物販」から「食」へのシフトがこの駅ビルでも見られます。
さて、アトリウムでも確認されたゆったりとした公共空間構成は、建物屋内のみならず、2段階に分かれた屋上広場にも共通となっています。
NEWoManの中層5-6階に位置する屋外広場。店舗からもアクセスでき、通常の駅ビルとは一線を画す開放性の高さが特徴です。
5階から6階にアクセスする屋外エスカレーターも完備。
そして6階には更に大きなNEWoMan GARDENが広がっています。
NEWoMan GARDENから眺める横浜駅と東口界隈。みなとみらい方面を見渡し、駅前の高層ビル群を望みます。
セットバックした6-10階のテラスからこのGARDENを見下ろす事ができます。整然とした人工的な空間に緑の豊かさがプラスされています。
GARDENに面して、飲食店が配置されています。出店しているのはピザ専門レストラン。
見上げるとJR横浜タワーの商業フロア上層部の上にガラスのオフィスタワー。
飲食ゾーン・シネコンエリア最上部の10階には陽光の降り注ぐ明るいホール。
そして11階の機械室をスキップする長いエスカレーターを経て、いよいよ基壇部最上階の12階へ。
12階の大半を占めるのが、「うみそらデッキ」。
基壇部の最上階に設けられた屋上広場です。デッキと植栽、ベンチやカウンターテーブル等が備わる天空の庭園です。
ここにもBE KOBEから波及した地名のモニュメントが設置されています。YOKOHAMAモニュメントも夜間にはライトアップされるのでしょう。神戸市もここまでご当地モニュメントブームが全国に広がるとは思っていなかったと思います。
カウンターテーブルは、平日はオフィスフロアのワーカーの利用も想定されているのでしょう。
陽当たりが良いので、風が無ければ、晴れている日は冬も憩いの場として過ごせる空間です。
実際にカウンターテーブルで寛ぐ人々が見受けられました。
カウンター眼前のガラスの向こうにはみなとみらいのビル群やその背後に横浜港を見渡す天空の特等席です。
うみそらデッキから見上げるオフィスタワー。
JR三ノ宮新駅ビルにも商業施設となる基壇部屋上にオフィスフロアから出られる屋上庭園が整備される予定ですが、オフィスフロア内に飲食店等の出店予定は現在のところ計画されてはいないようです。バスターミナルI期ビルの屋上庭園のフロアには飲食店の出店が計画されています。庭園の賑わいを高めるには店舗の計画はあって然るべきかと思うので、JR西には是非とも検討して欲しいと思います。
JR横浜タワーの場合、6階の屋上広場には飲食店が併設されていました。12階のそらうみデッキ横にはローソンが出店。オフィスワーカーの利用を意識したものかと思います。
オフィゾーンへのエントランスです。12~13階には法人や個人を対象とした会員制ワークスペース「STATION SWITCH 横浜」が稼働しています。
アトリウムや2つの屋上庭園、そして店舗フロア内のゆったりとしたカーブのある通路等、全体的にスペースにゆとりを持たせる施設設計としたJR横浜駅ビル。98,000平方メートルの延床面積に対して、NEWoManとCIALの売場面積は合計約1.7万平方メートルに留まり、公共空間に大きく床を割いた事を物語っています。三ノ宮駅ビルも商業フロアの売場面積は1.9万平方メートルで計画されており、公共空間の拡大が予想されます。JR横浜タワーのように、寛げるエリアが多く整備される事に期待しています。