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地域探訪: 大阪・イノゲート大阪 JR西日本中期経営計画三大プロジェクトの先陣を切ったゲートウェイシティ


JR西日本の中期経営計画における「駅からはじまるまちづくり」における三大プロジェクトとして、大阪西、広島、そして三ノ宮に大規模な新駅ビルを建設するもので、管内の主要な拠点駅周辺の再開発を通じて、地域の価値向上を目指すプロジェクト群です。



「大阪西計画」は、JR大阪駅西側の高架周りを対象とし、新たな駅ビルの建設、新改札口(西口)の整備、高架下商業ゾーンの整備が進められた共に、南側の大阪中央郵便局跡地に日本郵政不動産等共に超高層複合ビルを建設も含めた巨大開発へと発展しました。

既存のノースゲートビル、サウスゲートビルに加えてJR大阪駅の3つの目の駅ビルとして2024年7月31日に完成したのが「イノゲート大阪」です。地上23階 地下1階 建物高さ 約120m 建築面積 約3,716㎡ 延床面積約60,440㎡の規模で、大林組と大鉄工業のJVで施工されました。



高架下に新たに設けられた西口改札と南北を結ぶ自由通路。これに直結する形で新駅ビルは建設されました。地上1-2階は駅のコンコース機能を担っているます。



西口へと連絡するイノゲート大阪の1階エントランス周りの様子です。断面にカラフルなグラフィックをあしらった球体オブジェのパブリックアートは非常に前衛的です。『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの作者として有名な漫画家荒木飛呂彦氏のステンドグラス作品です。



建物構成は、1-2階が駅コンコース、3-5階が商業施設、6階がオフィスロビー、9-10階が共用オフィス、11階が貸会議室、12-22階が賃貸オフィスとなっており、「ICOCA」を活用したセキュリティシステムが導入されています。



三大プロジェクトの駅ビルの中で、広島と三ノ宮は高層部の大半をホテルが占める事になりましたが、イノゲート大阪はオフィスが主体の建物となりました。ノースゲートビルも高層部はオフィスとなり、現在は伊藤忠商事の本社が入っています。



ビルの6階にあるオフィスエントランスロビーには、スターバックス併設のTSUTAYA BOOK STOREも入る他、3-5階の飲食店街も含めて、このビルのオフィスワーカーには非常に恵まれた環境が提供されています。



高架下の開発である為、南北スパンは小さく、非常にスリムなタワーです。



ノースゲートビルや橋上改札と2階レベルのデッキで連絡しています。



3-5階の商業ゾーンは「バルチカ03」と名付けられ、飲食店を中心に構成され、オフィスワーカーの多様なニーズに対応しています。怒涛の勢いで再開発が集中する梅田においては、立地条件の不利なビルの商業フロアはテナントの撤退が目立ち、オーバーストア感が否めません。イノゲート大阪の商業ゾーンはこうした状況から真っ向勝負は避け、飲食店に特化する独自路線によって街の活性化への貢献を果たしています。



2階内部の様子です。天井に天然木のルーバーを採用。暖かみのある空間はフロアの奥まで続いています。



フロア内には猿田彦珈琲等、数店の飲食区画がありますが、2階はほぼ交流結節機能に特化したゾーンとなっています。



バルチカ03へはエスカレーターで3階にアクセス。03はオッサンを表しており、梅田で働くオッサンをターゲットとし、50店もの飲食店が入居しています。



これまで駅ビルの商業ゾーンと言えば、アパレルブランドがひしめき、そのターゲットの大半はそうしたブランドの購買層である20-40代の女性でしたが、この最新ビルのメインの飲食ゾーンのターゲットをオッサンに据えるという斬新な発想が素晴らしいと思います。ただ赤提灯に暖簾という横丁スタイルではなく、オシャレな要素をベースとした快適で綺麗な飲み屋ビルとして、女性にも人気を博しています。



西側にも飲食店区画がありますが、現在は店舗の入れ替えが行われているようでした。



オフィスフロアの北側は切り込みを入れたようにカーテンウォールに切れ目が入っており、夜間にはこの部分の照明が上から下に移動しながら点灯する等、夜間の演出にも創意工夫が施されています。先行開業したイノゲート大阪や広島のミナモアの成功した部分を三ノ宮にも採り入れ、より優れた駅ビル開発を行って欲しいと思います。



JR大阪駅西口の改札外コンコース。イノゲート大阪とKITTE大阪を結ぶ連絡通路にもなっています。



三ノ宮駅でも新東口改札の設置検討が行われていますが、新改札が新たな街の玄関口となり、街の可能性を大きく広げるゲートウェイになる事をJR大阪西開発が証明しました。



イノゲート大阪は北側一帯に広がるグラングリーン大阪へのゲートとしての役割を担い、JR大阪駅西側の主要な動線(人の流れ)において、両施設が完全に一体化するように設計されました。イノゲート大阪は「駅の利便性・玄関口」、グラングリーン大阪は「緑と国際交流の拠点」という、異なる役割を担い、梅田の機能を多角的に補完し合っている関係にあり、JR西日本が全力投球した二つの巨大開発は持てる経営資源をフルに投じた梅田再開発の集大成となりました。

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