ポートアイランドII期

不動産開発×ライフサイエンス 神戸医療産業都市初の民間完全開発レンタルラボ「DP-Lab KOBE」竣工にみる、ウェットラボ市場の構図と大和ハウスの戦略


神戸医療産業都市(KBIC)の港島南町エリアにおいて、研究開発型不動産(R&D Real Estate)の新たなマイルストーンとなる施設が誕生しました。大和ハウス工業が手がけ、2026年8月に竣工・10月に開所式が行われた「DP-Lab KOBE(ディー・ピー・ラボ神戸)」です。

単なる「賃貸オフィスの延長」にとどまらない本施設の建築・設備スペックや、KBICにおける賃貸ウェットラボの需給構造の変化、そして製造業・物流施設から研究開発インフラまでを自社開発で網羅する大和ハウス工業のポートフォリオ戦略についてまとめます。



阪神・淡路大震災の復興事業として1998年に始動した神戸医療産業都市(KBIC)は、先端医療センター病院や理化学研究所、理研BDR、スーパーコンピュータ「富岳」などを核として成長を続けてきました。 しかし、エコシステムが成熟するにつれて顕在化したのが「スタートアップ〜ミドルステージ企業の入居スペース不足(特にウェットラボ不足)」という構造課題です。

ITやAI創薬を中心としたドライラボであれば一般的なオフィスビルでも改修対応が可能ですが、創薬バイオ、細胞医療、有機合成などを伴う「ウェットラボ」は、排気ダクト(局所排気装置/ドラフトチェンバー用)の縦系統確保、給排水・純水ライン、危険物屋外貯蔵所、床荷重、給排気換気回数の設定など、建築躯体レベルからの特殊設備が不可欠です。



従来のKBICにおけるレンタルラボ(クリエイティブラボ神戸:CLIKなど)の多くは公的セクター主導、または官民連携の手法で供給されてきました。しかし、初期投資の負担が大きいウェットラボ施設は民間単独での開発ハードルが高く、急速に拡大するスタートアップや外資系バイオ企業の需要に対し供給が追いつかない「ウェットラボ難民」が発生していました。

今回竣工した「DP-Lab KOBE」は、KBIC内で「初の完全民設民営による賃貸ウェットラボビル」であり、民間デベロッパーの収益不動産アセットクラスとしてライフサイエンス領域が完全に成立することを示した象徴的プロジェクトと言えます。 竣工直後で約7割の区画が契約内定しており、既にプロジェクトの成功が示されています。



「DP-Lab KOBE」は、延床面積9,144.42㎡・地上6階建ての鉄骨造施設です。遺伝子組換え実験やバイオセーフティレベル2(BSL2)実験に対応した設計。1〜2階は内装・設備完備のセットアップラボ、3〜6階は企業自らのプロセスコントロールが可能なスケルトン仕様とし、最小約98㎡の小割りから1,000㎡超のワンフロア利用までフレキシブルに対応します。  

また建物の外周全体に「メカニカルバルコニー」を計画。これにより、各テナント専用の個別空調室外機や局所排気ファン、配管の増設ルートが容易に確保できます。さらに、メンテナンス作業員がテナントのクリーンルーム内に入ることなく外部バルコニーから機器保守点検を行える設計となっており、機密性・衛生性の観点から極めて実用的な構造です。



周辺施設やポートライナー・計算科学センター前とも直結する歩行者デッキによる動線ネットワークも構築されました。



大和ハウス工業はこれまでにも、首都圏や九州エリア(川崎市・殿町エリア、相模原市、福岡市など)において先進的なレンタルラボを展開してきました。今回の「DP-Lab KOBE」は関西エリアにおける初展開であり、全国の主要ライフサイエンス拠点(殿町、湘南、神戸、福岡等)を網羅するマルチテナント型ラボネットワークの一核をなす存在となります。



大和ハウス工業の神戸での開発を紐解くと、神戸都心では初の本格的なタワーマンションを供給したのもダイワハウスでした。「D’グラフォート神戸三宮タワー」(地上46階建て)は市役所よりも高い事を売りとしたザ・都心タワマンでした。施工については竹中工務店が担いました。職住近接の都市型ライフスタイルを実現し、三宮エリアにおける高層タワー開発の先駆けとして、街の資産価値向上に大きく貢献しました。



三宮周辺では、グループ会社である大和ハウスリアルティマネジメントが運営するホテルブランド「ダイワロイネットホテル」シリーズのホテルが既に2軒営業しており、更に3軒目が小野柄通5丁目で建設中です。



八幡通では木材と鉄骨を組み合わせたハイブリッド構造のサステナブルな複合ビルの建設プロジェクトにも挑んでおり、住宅建築のみに留まらず、非常にバラエティ豊かな都市開発事業を展開しています。



大和ハウス工業は、住宅メーカーの枠を超え、物流施設、商業施設、データセンター、再生可能エネルギー事業へと事業領域を劇的に広げており、多角的なポートフォリオを作り上げる総合デベロッパーへと成長し、その過程で、神戸の街づくりにおいての貢献度合いを強めている企業でもあると評価できるでしょう。

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