神戸市は昨年10月に「新たな神戸の玄関口にふさわしい上質で洗練された空間をつなぐ歩行者デッキ」をテーマとした三宮駅周辺の歩行者デッキの設計デザインコンペを広告しました。デッキのデザインコンセプトを立案し、平面線形や橋梁形式について提案を求めた1次審査、1次審査通過者に、1次審査で提案したデザインコンセプトや歩道橋の考え方を深度化した上で、その施工計画、維持管理計画等について提案や書類及びプレゼンテーションを行う2次審査を経て、予定通り、以下を昨日のプレスリリースにて発表しました。
・最優秀作品及び次点の応募者名及び点数
・3位以降(入選)の作品と応募者名
・講評
最優秀提案
代表企業: 中央復建コンサルタンツ株式会社
構成員: 株式会社安井建築設計事務所
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
コンセプト
えきとまちをつなぐ人にやさしいデッキ
78.4/100点(高得点が5人/9人)
評価
木材を豊富に用いた三角格子の屋根は、自然の木漏れ日を連想させる温かみ のあるデザインとなっており、構造物全体がトライアングルの形状で統一されている。
周辺の街路や三宮クロススクエアから見上げた場合、階段からデッキへと連続した植栽花壇の帯が見え、構造物を穏やかで優しい風景にしている。
税関線横断デッキは、部材や板厚が細く、圧迫感の無いスレンダーなデザインとなっている。
提案内容全体としては、以上の優れたデザインのほか、安定した無理の無い構造が提案されており、総合的な評価として最優秀にふさわしいと判断された。
- 意匠の洗練については、検討の余地があり、デザインのブラッシュアップを行うこと
- 三宮クロススクエアの一層の利活用と整合を図るために、デッキ2階部分による地上への圧迫感・存在感の軽減に向けた大きさや横桁の構造の検討、エスカレーターの向き、配置の検討を行うこと
- 木屋根の存在感がやや大きすぎるため、木材の厚さや幅をスレンダーに調整して、より光が入りやすく、空が見えるようなデザインを検討すること
- 景観形成道路である税関線を横断する部分については、風景が変化したと感じられるよう、さらなる工夫を検討すること
- 木屋根の維持管理を考慮し、材料選定を慎重に行うこと
- バリアフリー処理のために設置する税関線横断部のエレベーターは、スロープの設置など、他の方法と比較検討を行うこと
次点提案
提案者
代表企業:パシフィックコンサルタンツ株式会社
構成員 :有限会社小野寺康都市設計事務所
株式会社 KAP
株式会社 WAO 渡邉篤志建築設計事務所
ナグモデザイン事務所
コンセプト
Urban HANAMICHI 新たな賑わい都市回廊
78.4/100点(高得点が4人/9人)
入選提案
株式会社エイト日本技術開発
株式会社二神建築事務所デザインコンセプト:「Fusion Street_ひととひと、ひととまち、そして未来へ_」
提案者
株式会社長大
y&M design office
Uo.A一級建築士事務所
デザインコンセプト:「神戸散策〜始まりの場所」
このデッキは三宮駅周辺で行われる主な再開発ビル全てと接続・連絡する重要な回遊動線の役割を果たしますが、その中でもJR新駅ビルとは最も接続範囲が大きいため、同ビルを想像しながら、どのような工夫が施されるのかという点に注目が集まるコンペでした。
結果として最優秀案の構成員に駅ビルを建設するJR西日本の傘下企業であるジェイアール西日本コンサルタンツが含まれている点は興味を持ちますが、駅ビルとの連携を考える上では妥当な結果とも言えるのかもしれません。
今後、デッキの整備を進めるにあたっても、肝心の新駅ビルについては現状、どうなるのか全く掴めない状況ですが、予定されていたとは言え、このタイミングでのデッキ設計デザインコンペの発表を行う事で、目標である今年度の新駅ビル及び駅前広場の都市計画決定を実現したいという市の目論見の表れとも言えるのではないかと思います。建設予定地はアスファルト舗装による整地が進み、広場としての暫定利用が長期化しそうな雰囲気がプンプンしていますが、今後の歩行者デッキ及び三宮クロススクエアの整備スケジュールがどのように計画されていくのかに注視が必要です。
選考評の『木屋根の存在感がやや大きすぎるため、木材の厚さや幅をスレンダーに調整して、より光が入りやすく、空が見えるようなデザインを検討すること』って何なのでしょうね。
存在感が大きいから良いのでは、これでもインパクトに欠けると思います。この辺りにも金沢駅の鼓門くらいの圧倒的なシンボルが欲しいくらいですから。
何よりも、この事業はJRの再開発ビルとは不可分で整備すべき事業と考えますので予定していたとはいえ、計画概要すら見えない状況での発表に改めて神戸市の事業推進能力の欠如を感じます。
提案者にJR関連企業が入っているので、本体も木材を利用した意匠が施されるのかな?なんて思いますが何だか、官民バラバラの状態を象徴する出来事ですね。
予定通り歩行者デッキの設計競技が行われ、審査結果発表に至ったこと自体は歓迎すべきことです。歩行者デッキは公道上に設置される公共施設ですので国道管理者の国交省兵庫国道事務所との必要な調整も終了し、一旦ゼロレベルから検討すると表明したJR西日本の新駅ビルにおいても、水面下では少なくとも建物とデッキ接続位置については大きな変更をしないことなど擦り合わせは出来ているものと推測します。
また2026年以降に開業予定のバスターミナルビルまでの歩行者デッキネットワークを完成させる必要もあり、三ノ宮新駅ビル及び駅前広場の都市計画決定を今年度に行うためにこの歩行者デッキの設計競技もオンスケジュールで盛り込んだと思われます。
ただ公表された最優秀案は秀逸だとは思いますがデザインは想像の範囲内であり、大人しくて少しインパクトが弱いところが残念です。私自身は次点案の方がデザインにインパクトがありワクワク感があります。最優秀案はトレンドワード「地球環境」を意識させるように環境素材である木材の多用や階段部分まで植栽花壇を設けるなど現在の神戸市の審査メンバーの選考嗜好に合わせすぎといっては言い過ぎでしょうか。
どうも神戸市の政策や嗜好は学識者メンバーの固定化・マンネリ化を反映し、景観規制の視点や規制内容については固定概念が極めて強く、良く言えば教科書的、悪く言えば大きな変容を認めない硬直思考であり、進取の気概や未来空間への期待感は希薄です。
この歩行者デッキが完成すると、北に阪急ビル、東にバスターミナル再開発ビルと合わせ、JR西三宮駅ビル計画は外堀を埋められた本丸の状況になりますね。いやでも本丸の意地を見せてほしいですね。
まあ本丸というより天守閣を作る覚悟でやってほしいです。このデッキが、その天守閣のデザインに合わせたデザインなら神戸市はあまりとやかく言うのは控えた方がいいと思います。
sirokumaさんの言うように景観審議会は、学者ばかりでこれといったビジネス畑の審議員がいないので、今度のパブコメでは思い切ってビジネス畑の審議員を追加選任してもらうコメントをするつもりです。
商業デザインをやっていない学者に上から目線で言われるのは正直、実戦で活躍する商業デザイナーはカチンとくるでしょうね。
今回の都市景観形成基本計画の更新に対するパブコメには、この学者さんたちに、パブコメでは同じように一般市民も上から目線でコメントできるので、ある意味痛快です。
あと人口減少と企業の流失、倒産、観光など社会的経済的問題も鑑みて、人間行動学や大衆心理など人間心理学の分野の人選も問うつもりですし、デザインやファッション分野の有名デザイナーの招聘も提案したいです。
とにかく建築関連の学者や市内商業組合員、ド素人の市議会員で構成されているので、もっとマルチな人選で神戸市の現状と将来に分析提案できる景観審議会になってほしいです。
あくまでも本丸はJR三ノ宮駅ビルとバスターミナルビルなので、デッキはある意味で付属品。
あまり自己主張しすぎると、駅ビルのデザインにも影響を与えかねません。
実際、駅ビルとバスターミナルビルが完成すると、ビル同士の接続や地下通路も改良されると思いますので、動線的にこのデッキを歩く人がそんなに多いとは思えません。(この付近を良く歩く一人として)
個人的には駅ビルの邪魔にならない程度に、機能的ではあってもちょっとオシャレな歩道橋程度で丁度いいと思います。
ビルのデザインはもうできているのかもしれませんね。