提言

トリドールが本店を東京に移転 企業本社流出を防ぐには魅力的な新築オフィスビルが必要



丸亀製麺などの飲食店をグローバル展開するトリドールホールディングスが三宮に置いていた本社を東京・渋谷に移転すると発表しました。

同社は加古川発祥の企業でその社名が示す通り、当初は炭火焼鳥店トリドール三番館の展開からビジネスを開始し、讃岐うどん風手打ちうどん店の丸亀製麺所が火付け役となって企業規模が急拡大しました。現在は従業員数約3,800人を抱え、資本金は40億円を超えます。



規模拡大と共に2007年に神戸・三宮の一等地にある日本生命三宮駅前ビルに本社を移転。その後、全国展開を進める中で東京本部を開設。更に海外進出を図る為、同本部を品川周辺で拡大していました。

そして5月末にはこれらの都内の本部各所と本店の集約を目的に新築ビルの渋谷ソラスタに新本社を設立する事となりました。三宮の本社は神戸オフィスとして継続し、管理部門として機能させます。

成長著しい企業が神戸に留まらず、ステップアップの為の1ステップとして巣立っていったと言えば聞こえは良いですが、もし神戸に同社の新本社として相応しいオフィスビルが存在さていたら、流出は防げていたでしょうか。勿論、グローバル展開を掲げる企業は優秀な人材を求めて、やはり東京に拠点を持つ事は避けられません。神戸に本社を置く上場企業やグローバル企業もやはり東京本社があったり、重要なマーケティング拠点を持ったりと、純粋に神戸本社のみの展開にはなっていません。P&Gでさえも首都圏で人材募集を行う際に神戸本社勤務と分かると内定を辞退される位です。



人材の獲得を鑑みた場合、人口流出政令市ワーストの神戸は企業活動にとっても環境はますます悪化を辿っています。更には業績好調な企業が規模を拡大したくても優良で希望する面積を提供できるオフィスビルがなく、必然的に東京に目が向いてしまうのです。

こうした悪循環を断ち切るにはやはり新規のオフィス供給が必要です。先日も三宮プラザビルイーストにはウィーワークジャパン、富士通、F.O.インターナショナル等の優良企業が入居した点を挙げましたが、高グレードビルに対する需要が高い事を証明しています。再来年に竣工する神戸阪急ビルのオフィスフロアは高稼働するのではないかと思われます。



三宮の好立地の低度利用地や老朽ビルの開発が促進されるよう天神ビッグバンならぬ三宮ルネッサンスを始動し、企業流出を防ぐどころか、流入を増やし、人材の転入超過へと転じさせるべきです。これには三宮エリアに課された景観条例による高さ規制は即時撤廃し、特定緊急再整備地区指定による容積率緩和と税制優遇に加えて市独自の開発補助や迅速で協力的な許認可、開発ビルへの企業誘致アシスト等、手厚いサポートを行うべきなのです。さもなければうかうかしているとP&Gやネスレでさえ東京に移転しかねませんよ。

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  1. 某京都府民 より:

    仰る通りだと思いますが、丸亀製麺の場合は、営業成績が伸び悩むタイミングでの東京移転、という最近よくあるパターンのように思えてなりません。

    オフィスの多い東京では心理的に働きやすいのは確かだと思いますが、「弘法筆を選ばず」というように、決して東京に行きさえすれば成績が上がるわけでもない。それなのに安直に移転する企業は多い。

    もちろんオフィスの量も重要ですが、神戸としては、薄利多売型の古いビジネスの企業に対して必ずしも一喜一憂すべきではないでしょう。これから成長が期待される新しいビジネスの企業に対して、実質を伴った本社を神戸に設けることを基本条件にして、大胆に支援を行うべきです。

    現状、神戸の地価はあまり高くないですが、今なら地価の安さで逆手に取ることも可能だと思います。

  2. hk より:

    このニュースを見た時すごく残念な気持ちになりましたが、今の首都一極集中には敵いませんし今の神戸市の都市としての魅力の無さを考えると仕方のないことと諦めもつきます。
    一極集中型で中央集権国家の首都を持つ国の地方都市は大変ですよ本当に

  3. H3O より:

    次はまさかのアシックスではないですかね?
    東京は人口が多いので、とにかく商売がやりやすいです。
    神戸ならマニアックな人間しか行かない店でも、人口が1桁違うと日に100人しか来店しない店でも単純に1000人来店する店になるので、営業が成り立つんですね。
    それも繁盛店として認識されてしまう。

    政治、経済、ビジネス、文化、エンターテイメントあらゆる分野の中心という東京の魅力は大きすぎます。
    東京は、一度住んだら二度と抜け出せない魔都です。

  4. ピクニック より:

    今更なんですが、この国は東京と神戸で握るとは一体なんの事だったんでしょう…?

  5. 匿名 より:

    兵庫県、百歩譲って関西が商圏の企業なら、神戸を拠点とする合理性は有ります。しかし全国を商圏とし兵庫神戸は人口なりの売上しかないような企業は、神戸に拠点を置くメリットは有りません。これは厳然たる事実です。

    その上で駅近の最新オフィスが存在しない、都心型職住近接を根本否定、子育てしやすいわけでもない、新幹線が不便とくれば尚更です。

    まあ伊丹空港が近いのと地価が安いのは魅力ですが、その程度なら全国に掃いて捨てるほどあります。

  6. 某京都府民 より:

    東京が魅力的すぎるというなら、損して得取れ、とりわけベンチャー企業に対して飛行機あるいは新幹線代を補助するのも作戦のひとつだと思います。

    いざというときは気軽に東京に行けるなら、神戸に本社を構えても良いという企業も多いはず。神戸空港の発展を考えれば、飛行機を手厚くしたほうが良いかもしれませんが。

  7. よよよ より:

    トリドールの場合は、すでに実質的な本社機能は東京に移っていたようなので、神戸は名ばかりの本社だったようですね。もちろん名ばかりの本社すら神戸からなくなってしまうのは残念です。
    工場新設における新規従業員採用は、日本のある程度人口のいる町であれば問題なくできるようですが、本社に必要とされる高度な人材採用は、東京でないと難しいというのが現実です。また知財や法務、ITなど専門性の高い分野で、国際的に通用できるレベルのビジネスサポートができるカンパニーはほぼ東京にしかなく、成長企業の本社はそのようなブレインとのやり取りが必須です。その現状理解がないまま、東京の真似をして起業支援施設を作る自治体がありますが、見通しが甘いとしか言いようがありません。
    かつて神戸市には、神戸にゆかりがない会社でも他市から本社が移転してきた時代がありました。しかし現在神戸市に本社を置くメリットはほとんどなくなり、既存の本社機能の流出を防ぐことが命題となりました。神戸市はこの現状にどのくらい危機感を持ち、どのような対応策を考えているのでしょうか。

  8. より:

    日本ほど一極集中の国は他にないでしょうね。アメリカだとサンフランシスコの郊外に巨大な本社があったりするんですがね。合理性機能性を追及すると東京以外の選択肢はないんでしょうか。

    「東京は一度住んだら2度と抜け出せない魔都です」

    全く同感です。しかし欠点もあります。とにかく人が多いし鉄道高速道路は混雑しています。水道電気ガス地下鉄などの地下インフラは網の目を通す様に複雑です。

    東京以外の都市は住環境オフィス環境の整備、アフターファイブエンターテイメントの充実などが必要だと思います。神戸は巨大都市大阪や古都京都に近いので、アイデンティティーの確立というか神戸の売りは何かと言うところに行き着くように思います。

    エキゾチックな旧居留地、美しい景観のウォーターフロントなど売りはあるのにうまく生かされていないように思います。

    三宮再開発と旧居留地ウォーターフロントは三位一体それぞれの特徴を生かしながら連続性を持たせる必要があるように思います。

  9. 摂津国人 より:

    上で、某京都府民さんたちが仰ってですが、私もトリドールは業績の低下のため、東京に本社を移して打開を目指した可能性を支持します。

    武田薬品工業が似たような感じで大阪から東京に拠点を移しています。
    武田は一時は世界でも有数の製薬企業でしたが、近年では新薬の特許もあまり残っておらず、子会社の売却、大幅な人員削減を実施していました。
    十三にある大阪工場ではリュープリンくらいの生産で、研究所も湘南に集積したようです。
    その結果、近畿圏で就職したい近畿圏の優秀な人材(主に京大、阪大卒)にも見切りをつけられていて、大阪に残った小野薬品工業に人材が流れています。
    トリドールも丸亀製麺で成功しましたが、最近では業績が下がり株も下がったようです。
    https://kabunews.club/market/toridoll/
    https://kabu.home1990.net/entry/toridoll
    予想にすぎないので何とも言えませんが、同業他社との競争が激化して、打開策として東京への集中を決めたのではないでしょうか。

    それと東京一極集中については、最近その効果に疑問が呈されてきています。
    あれだけ官製の一極集中をしていながら、成長率が全国平均を下回ってきているのです。
    https://r.nikkei.com/article/DGKKZO39687100W9A100C1NN1000?s=3
    http://osaka-landscape.com/2019/01/15106031/
    東京の場合、人口が多すぎて繁華街に行くのも一苦労ですし、通勤時間も片道2時間かかる人が普通に存在します。
    人口の極度な集中に疲弊してきているのかもしれません。
    逆にインバウンドの後押しもあり、大阪、京都、福岡をはじめとした地方が最盛期を迎えています。
    あまり申し上げたくないのですが、神戸がその波に乗れていないのが残念でなりません。

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