熊本市の都心中枢商業エリアである下通に商店街エントランスにあったランドマーク・熊本パルコが閉館し、その建て替えプロジェクトとして計画されたのが、「(仮称)下通GATEプロジェクト」です。
土地・建物を保有する山陽は、老朽化したビルの再開発にあたり、再びパルコとして建て替えるのではなく、ホテルと商業施設という組み合わせの複合用途の建物を計画しました。
地上3階〜11階には星野リゾートを誘致。同社が展開する都市型観光ホテルブランドの「OMO5熊本 by 星野リゾート」が開業しました。地下階及び低層部2フロアについては再びパルコが運営する商業施設「HAB@」として、今年4月下旬に開業しました。
通町筋に面したメインエントランスです。
OMO5熊本の客室数は160室です。
HAB@も、パルコが全国で展開している小規模商業施設のゼロゲートの一環ですが、敢えてゼロゲートの名称は使用せず、新たな施設名を与えています。
約3,400平方メートルの床面積に20店を誘致しました。開業時期としては、コロナ明けにあたり、テナント誘致も含めてタイミングは悪くない状況だったかと思います。
ただテナントの大半は飲食店であり、その他はサービス系のテナント及び一部物販店といった構成で、かつて一世を風靡したパルコの面影は見受けられません。しかしながら全国のゼロゲートがテナント誘致に苦戦し、業種や内容に関わらず、なりふり構わず受け入れる状況から鑑みると、満床稼働で開業できた事は立地の良さが評価されたのかもしれません。
熊本もサクラマチクマモト、アミュプラザ熊本等の大規模再開発による大型商業施設が近年、相次いで誕生した事により、流通戦争が激化しており、オーバーストア感は否めなくなってきています。
今後、更に再開発が進められる場合、物販系テナントの誘致はかなりハードルが高い状況にある事が垣間見えます。山陽やパルコもこの事を理解しているからこそ、熊本パルコの建て替えはホテルを主要用途としたビルへと転換を図りました。
東京や大阪等の大都市圏とは異なり、再開発ビルの箱が無尽蔵に増えると、それらを埋める為のテナントを集める事は非常に厳しくなりつつあります。
熊本城というインバウンド向けにはキラーコンテンツとなるハード・ソフトの双方を持つ熊本。そのポテンシャルを買ってのこのビルへの星野リゾートの出店かと思いますが、福岡、長崎、鹿児島と外資系ホテルの進出が相次ぐ九州において、熊本だけは何故か高級ホテルの新規開業計画がありません。
地域一番店の鶴屋百貨店。直近の売上高は454億円。コロナ禍からの回復途上にありますが、サクラマチクマモトやアミュプラザ熊本等の新たな施設施設との競合に対して今後、どのような戦略で一番店の座の死守を図るのか。
商業戦争は激化していますが、熊本には明るい話題も多く、世界最大の半導体メーカーTSMCが構想する日本こ国内第2工場についても、第1工場と同様に熊本県内で建設を進める意図を示しているようです。こうした県内経済活性化が消費活動に繋がれば、商業施設の需要も再び高まる事になるでしょう。
地域探訪: 熊本・熊本パルコ跡地に下通GATEプロジェクト 「Shinsekai下通GATE」が開業
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熊本に外資系ホテルが建設されない理由は、福岡から近すぎることが原因ではないでしょうか。
以前、どこかで「熊本からは熊本空港よりも福岡空港のほうが便利」との記事を拝見したことがあります。残念ながらその記事は見つからなかったのですが、調べてみるとやはり熊本駅-博多駅間が九州新幹線みずほで30分程度であるとの記事がありました[1]。福岡空港のWeb siteでも福岡空港から博多乗り換えで乗り換え時間など含めて60分程度との記載があります[2]。一方で、熊本駅から阿蘇くまもと空港へのアクセスについては、電車で60分、自動車で45分とあるものの自動車だと交通渋滞で60分から90分と注釈が記載されています[3]。外資系ホテルを含む企業からすると、「熊本は福岡から近すぎる。鹿児島や長崎は福岡から90分以上にかかるのでホテルがあった方が良さそうだけど、熊本は日本に入国するのに福岡空港直接入国して新幹線で熊本まで行けばいい。東京・大阪経由の場合でも熊本空港よりも福岡空港の方が本数が多くて利便性が高いので、福岡にホテル(あるいはオフィス、店舗)があれば熊本も十分に賄えるだろう」と考えるのが妥当だと思います。これは九州新幹線開通による一種のストロー現象で、九州新幹線開通により最も恩恵を受けたのは福岡であるとの言論もあります[4]。熊本県もこのまま福岡の影響範囲にとどまるのは避けたいので、空港アクセス鉄道の建設を進めていますが、費用などの関係から遠回りになる肥後大津駅を経由しての空港アクセス線に決定したようです[3, 5]。開通すれば阿蘇くまもと空港のプレゼンスは多少向上するかもしれませんが、熊本駅からの所要時間は44分で[3]、開通は2034年を予定しており[5]、まだ10年以上かかる上に所要時間の短縮も目を見張る程度ではないので、どうなるのか予断を許さない状況です。阿蘇くまもと空港が福岡空港に比べてどれだけの便を誘致できるのか、TSMC効果がどれほどになるのかにもよると思います。
[1]利便性で他県を圧倒、福岡のご当地鉄道事情 通勤通学から観光まで路線ネットワークが充実(5ページ目に博多駅ー熊本駅間がみずほで30分程度との記載あり)
https://toyokeizai.net/articles/-/370049
[2]福岡空港(アクセス)
https://www.fukuoka-airport.jp/access/
[3]空港アクセス鉄道整備に向けた取組み状況(熊本県。PDF。5枚目)
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/215590.pdf
[4]九州新幹線で「最も恩恵を受けた地域」は? 開業から5年、地震乗り越え経済効果は大
https://toyokeizai.net/articles/-/118441
[5]ルート決定「熊本空港アクセス鉄道」肥後大津駅から分岐に 決定打は「JR直通」
https://trafficnews.jp/post/124990