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先日、熊本市中心部の桜町において進行中の大規模再開発についてレポート記事を掲載しましたが、陸の玄関口となるJR熊本駅周辺でも今後大きな開発が進められる予定です。主要事業者となるJR九州が駅周辺の保有地等を活用し一帯の再開発に乗り出しており、熊本駅ビルの建設工事に着手しました。
着工した熊本駅ビルの建設現場です。三点式パイルドライバとクローラークレーン、セメントサイロが確認できます。杭工事に着手しているものと思われます。設計は日建設計、施工は大林組が受注しています。
熊本駅ビルの規模は地上12階 地下1階 延床面積10万9,000平方メートルで商業施設、ホテル、複合映画館、結婚式場が入る予定です。施設の内容的にはサクラマチクマモトと重複しています。
名称 | 熊本駅ビル(仮称)新築工事 |
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所在地 | 熊本市西区春日3丁目15番地他 |
規模 | 地上12階 地下1階 |
高さ | 59.411m |
敷地面積 | 19,067.60㎡ |
延床面積 | 約109,000㎡ |
構造 | 鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造) |
用途 | 商業施設・シネコン 1-8階 (アミュプラザ) 立体庭園 1-7階 ウェディングバンケット・チャペル 8-9階 ホテル 9-12階 (ホテルブラッサム 203室) 駐車場 (800台) |
設計 | 日建設計 |
施工 | 大林組 |
駅前には大屋根を付けたイベント広場が整備されます。屋根の内側は格子状に組まれた木製で熊本城を連想させる和の趣が感じられます。屋根の上は屋上庭園となる模様です。建物外観はモノトーンで統一し、新駅舎と合わせてこれまた熊本城を意識したデザインです。駅ビル内部の立体庭園には水が流れ緑の溢れる空間が地上1-7階まで垂直に構築され、この駅ビルのシンボルとなります。JR九州も自社で開発する各駅ビルにはテーマに沿った設備や仕掛けを与えています。
敷地内にはJR九州が保有・運営していたJR九州ホテル熊本がありましたが、2月に閉館し、現在は解体撤去中です。
10万平方メートル級の駅ビル建設に踏み切ったJR九州の熊本に賭ける意気込みはかなり強いと言えます。九州新幹線の開通によってこれまで福岡に集中していた投資が九州の各県庁所在都市へも分散し始めています。九州におけるインバウンド需要の高さもこれを後押しする形です。
熊本駅では九州新幹線の乗り入れに伴い、在来線も高架化した新駅舎が完成したばかりです。これに加えて駅ビルの開発を機に熊本市も白川口駅前広場の整備を進める予定で、駅周辺が一帯的に再開発される事になります。JR九州は広場を挟んで駅ビル建設地の向かいの土地3,800平方メートルにオフィスビルの建設も計画しています。
「熊本駅北ビル(仮称)」とされた新ビルは地上12階建てで1-3階は商業施設、4-12階をオフィスとし、延床面積は1万7,000平方メートルの大型ビルとなり、着工済の駅ビルより一足早く2020年冬に竣工予定です。
JR九州は更に新幹線口側で駐車場としてJRが賃借して活用していた土地1,690平方メートルを取得し、地上5階建てのオフィス・商業施設の複合ビルも建設する予定です。
現在はアスファルトが舗装されただけのだだっ広い駅前広場です。駅ビルの大屋根の完成と共にこれから大きく変わろうとしています。
駅前広場には既に熊本市が駅前の再開発に伴い、ペデストリアンデッキを整備しました。
歩行者デッキが連結するくまもと森都心(くまもとしんとしん)です。森ビルグループの森ビル都市企画が代表構成員を務めた熊本駅前東A地区第二種市街地再開発事業です。熊本一の高さを誇る超高層マンション「ザ・熊本タワー(地上35階 高さ123m)」を中心とし、図書館やホールの入る熊本市の公共施設「くまもと森都心プラザ」や商業施設から構成される複合ビルで、2012年に完成しました。
熊本市電熊本駅にはしゃもじ型の大屋根がありますが、耐震性に問題があるようで今回の駅前再開発に合わせて一旦、解体された後、バス・タクシープールまで拡大させた新たな屋根が構築されるようです。
11年前に熊本を初めて訪れた際には駅前で目立った建物はこの東横イン熊本駅前のみでした。地上27階 高さ88.15mの高層ホテルで、当時の東横インでは初の高層建築だったと共に前述のザ・熊本タワーが完成するまでは熊本一のノッポビルでした。当時に一度、宿泊しましたが、客室や内装はスタンダードな東横インでした。
駅周辺ではこうした動きに合わせて分譲マンションも増え始めている様子です。
これまでJR熊本駅前には人口75万の政令市の玄関としてはあまりにも貧相な景観が広がっていました。2011年には九州新幹線が全線開通し、博多-鹿児島中央間が結ばれました。新幹線熊本駅が完成し、その後、在来線の高架化と新駅舎の建設は進められましたが、駅周辺の再開発は具体化していませんでした。しかしここに来て一気に複数の計画が動き出しました。大型開発の主要事業主は勿論、JR九州です。最初の駅ビルイメージパースの背後にタワーマンションが描かれていますので、恐らくJR九州の分譲マンションブランドで開発・販売を計画しているのでしょう。
同社がここまで熊本駅前への投資を拡大させる上で、勝算の見込みはあるのでしょうか。JR熊本駅の1日辺りの乗降客数は約2.5万人。これに熊本市電熊本駅の0.7万人を足しても3.2万人です。従って現在の駅利用者のみでは生み出される施設を経済的に満たす事はできません。サクラマチクマモトや中心市街、郊外のショッピングモールとの競合は激化が予想されます。開発に伴って駅周辺に駐車場2,100台分を確保する計画を立てており、熊本駅を一大商業・業務拠点に成長させようと意気込むJR九州のアグレッシブな姿勢の表れです。しかしこの攻めの投資は熊本に限った話ではなく、博多、鹿児島、長崎、宮崎と九州の主要都市全てにおいて積極的に開発を進めています(JR西日本にもこの積極性を取り込んで欲しいですね・・・)。今後、熊本駅前ではオフィスビルやホテルを中心に他民間事業者による駅周辺での連鎖開発も起きてくるのではないかと思われます。従って熊本駅前がこれから大きな変貌を遂げるにはJR駅ビルの成功が鍵を握るのではないでしょうか。
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JR九州は、魅力的な観光列車も多いですし、新駅舎もデザイン性があっていいですね。電車の旅が楽しそうです。
当初、JR九州は熊本駅開発に消極的でした。
商業規模の小さい大分や宮崎よりも貧弱とも思える駅前構想は、今までの熊本の非協力的な姿勢が嫌がられたのではないかと心配もしました。
ただ、消費支出に積極的な県民性や大規模投資となった桜町再開発が、JR九州の考えを変えさせたのではないかと思っています。
個人的には、熊本駅周辺の成功は、中心市街地とのアクセスが鍵を握っていると考えますので、熊本市電を活かして欲しいと思います。
JR九州はホント頑張ってます。
ただ、限界がありますので、熊本には協力して発展していって欲しいと思います。