旧そごう・神戸阪急

そごうが描いた幻の神戸店復活プロジェクト

sogo-hankyu17.jpg

読者の方からとても興味深い記事が経済雑誌の日経ビジネスオンラインに掲載されていたという情報を頂きましたので、この内容に関して当ブログでも取り上げたく、今回、記事にしました。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/070600016/071000004/?ST=smart
日経ビジネス「そごう・西武、幻と消えた大型投資計画」

H2Oリテイリングに今秋、譲渡される予定のそごう神戸店。震災後、大丸神戸店に地域一番店の座を明け渡し、そごうの経営破綻後に西武のミレニアルホールディングス傘下に入ったのが2002年。当時、ロフトを新館に入れる等、合併効果を狙う大規模改装を行いました。しかしセゾングループも解散し、2006年にそごう・西武はセブン&アイホールディングスの傘下に。以来、2002年から15年以上もリニューアルのない状態が継続しています。よって、てっきりそごうは神戸店を見放しており、セブン社の下にある限り、神戸店が浮かばれる事はなく、今回の譲渡も当然の成り行きとみていた節がありました。しかしながら、日経ビジネスの記事はなんとそごうが神戸店に対して数百億円規模の大型投資計画を検討していたと伝えています。

kitakan90.jpg

この大型投資の要となる予定だったのが、そごう本館のすぐ裏手にあるアイング三宮パーキングのある土地です。敷地面積3,000平方メートルを越えるこの1等地はかつて、そごうが12階建ての再開発ビルを建設するという条件で、1996年に財団法人「民間都市開発推進機構」へ117億円で売却されました。しかし2000年にそごうが破綻した為、計画自体が頓挫し、契約不履行によって同機構から土地代金の返却訴訟を起こされました。2005年、東京地裁はそごうに131億円の返還を命じる判決を下しましたが、そごう側は控訴を検討。その後、この問題がどうなったのか明らかではありませんでしたが、2006年にセブン社がそごうを傘下に収めて半年後にそごうがこの土地を買い戻したという事です。

develop07.jpg

そごうとしては、かつて神戸地域1番店であり、グループ内でも中核を担う旗艦店だった神戸店を何とかしたいという強い想いがあったに違いありません。その想いに鈴木前会長が応えて土地の買い戻しを即決したそうです。セブン社の幹部は「神戸店は改装すれば売上高1000億円級の横浜店くらいに化ける可能性がある」と考えていたとの事。このリニューアル計画については、長年の投資抑制の中で、久しぶりの大胆な攻めの投資として、そごう・西武の松本前社長の肝入りプロジェクトでした。2016年8月末のセブン社全グループ内戦略会議にてこの全面リニューアル計画が同氏から発表されました。しかしそれから僅か1ヶ月強で、神戸店を含む関西三百貨店のH2Oへの譲渡が発表されたのです。同時に松本氏の社長解任も発表。セブン社内部の内紛によって誕生した新経営陣は鈴木前会長に近かった松本氏を含む鈴木氏側近幹部の一掃を行なったとされます。そごう・西武の社長交代劇によって、そごう自身による神戸店のリニューアルプロジェクトは完全消滅しました。新経営陣にとって、それまで実行されてきたリストラ計画に不満を示す「物言う株主」の米国ファンド・サードポイントも念頭に、新体制発足後100日以内に示すとした中期経営計画の目玉が欲しかった中、この譲渡案件はまさに渡りの船となりました。

sogo17.jpg

アイングパーキングと既存の神戸店の双方を活用したそごう自身によるリニューアル計画も見てみたかったですね。しかし長期的に考えると、ブランド力を大きく欠損したそごうが再び往時の栄華を再開発で取り戻せたのかどうか。心斎橋の大阪本店も建て替えから大丸への売却にさほどの時間はかかりませんでした。また本館の一部は阪神電鉄が保有しているだけに、リニューアル計画自体もスムーズに進んだのかどうかも分かりません。

H2Oはそごうの屋号を数年継続させる事を示唆していますが、神戸店の建て替えと共に阪急に変更されるのは既定路線かと思います。気になるのはこの譲渡プランにアイングパーキングの土地が含まれていたのか否かです。譲渡されるのであれば、本館の建て替え前にこの土地が再開発されて、建て替え中の営業を代替できますし、建て替え完了後には百貨店とは競合しない優良大型専門店の誘致(例えばヨドバシカメラ等)も可能になります。また高層階はオフィスやホテルに活用できます。建て替えには本館の一部と新館の二棟を保有する地権者との合意が必須ですが、アイングパーキングの開発手法によっては、新館との契約は解消される事も有り得るのではないでしょうか。しかし継続してそごうがアイングパーキングを保有する場合、セブン社がこれをどう取り扱うのか。同グループは一等地にある不動産を活用して、再開発を推進する方針を示しています。まさか自社で運営する新たな商業施設を計画する事はないかと思いますが、ビルを建設して賃貸する可能性はあるかと思います。どちらにせよその他の三宮の再開発プロジェクトに呼応する形で開発が進むのではないでしょうか。



関連記事
旧そごう・神戸阪急

神戸阪急リモデル 本館1階のリニューアル店舗の開業が進む インターナショナルブティックスのブランド店は今月順次オープン予定

2022年12月5日
こべるん ~変化していく神戸~
新館の全面改装を終えた神戸阪急。残る本館も各フロアのリニューアルを順次進めているところです。2-3階の大規模改装を終えていますが、現 …
旧そごう・神戸阪急

サーティワンアイスクリーム 三宮フラワーロード店が10月10日に閉店 10月21日(金)にさんちかへと移転オープン

2022年10月11日
こべるん ~変化していく神戸~
サーティワンアイスクリーム 三宮フラワーロード店はリニューアルが続く神戸阪急新館の入るSヨシマツビル1階にて、そごう神戸店時代から長 …
旧そごう・神戸阪急

神戸阪急新館にLOEWEがオープン インターナショナルブティックスが完成 葺合南37号線でも初のイベント開催

2023年12月20日
こべるん ~変化していく神戸~
今年10月に本館・新館を含めてフルリニューアルオープンを果たした神戸阪急。しかしその仕上げとしてまだ改装中の部分を本館、新館それぞれに一 …

POSTED COMMENT

  1. よこはま市民 より:

    そごうは、阪急阪神HDに譲渡されたほうが絶対に良いと思います。
    セブン傘下の百貨店でうまく再建された店舗が一つも無いことからも明らかですね。
    阪急梅田店に匹敵するくらいに大化けすることを願っています。

  2. 夢想家 より:

    H2Oへの譲渡が決まった今となっては、幻で良かったと言うのが率直な感想です。アイングパーキングの立地はオフィス+ホテルというのが理想的ですね。ヨドバシ等大型商業施設は周辺道路事情からいってもちょっと難しい気がします。ヨドバシには是非バスターミナルのキーテナントになってほしいですね。

  3. H3O より:

    明日第1回三宮再整備推進会議が開催されますが、そごう神戸店の建て替えはほぼ決定しているようです
    アイングパーキングは残念ながら予定にないですが、さんセンタープラザ、マルイの三宮南街区と注目なのは交通センタービルが予定に入っていることですね

  4. kh495 より:

    三宮南地区はさんセンタープラザの建て替えだけでなく、センター街挟んで南側も整備対象に入ってますね
    トアロードのところは一本南に道が移動してセンタープラザ西館用地が大きくなりそうです。マンションやホテルが構想されてるようですね
    京町通からの山への視界確保とかでまた高さ規制の話がでてるようですが…

  5. しん@こべるん より:

    阪急梅田店は年商2000億の全国2位の百貨店ですが、それと対になる阪急神戸三宮店になって欲しいですね。

  6. しん@こべるん より:

    バスターミナルビルの商業施設がどういう構成になるのか非常に興味をそそられますね。ヨドバシが出店する可能性は大いにあると思います。かつてはそごうの跡地を狙っていたようですね。ヨドバシとイオンモールの新業態でしょうか。

  7. しん@こべるん より:

    更新が意味する事が何なのかが示される必要があります。交通センターは外観のリニューアルに留まる可能性もあります。ただJRが神戸地下街の株主になったので、駅ビル建て替えと共に何らかの手が入る可能性はありますね。敷地面積が狭いですが、JRの敷地の一部とみなされれば、規模拡大は見込めるかもしれませんね。

  8. しん@こべるん より:

    新情報ありがとうございます。センタープラザ西館が南側のビル街と一体化されれば、かなり大規模な再開発が可能になります。センター街がいよいよ大きく変化を遂げる事が実現しそうですね。神戸の街が大きく作り変えられそうです。

H3O へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です