特集・シリーズ

平成29年度予算に見る今後の都心・三宮/ウォーターフロント地区・地域拠点の再整備

toshin052.jpg

神戸市の平成29年度予算案が発表されました。ようやく様々な大型プロジェクトが具体かし始めたとあって、例年になく見応えのある予算案となった感があります。ただまだまだ計画策定・検討に留まったままの項目が多いのも事実です。昨年度、一昨年度も同様に検討とされてきた事柄がそのまま継続されており、一体いつになったら計画が決定されるのか、具体化されるのか定まっていません。今年度こそは決定方針を示し、その計画をどういうスケジュールでいつまでに完了するという目標を明らかにして欲しいと思います。それでは具体的に見てゆきましょう。

都心・三宮の再整備、ウォーターフロント地区の魅力向上
予算額: 54.5億円

crosssquare001.jpg

新バスターミナル整備に向け基本計画の策定

「えき=まち空間」基本計画策定

三宮再整備における行政施設のあり方検討
市役所本庁舎2号館、3号館の建て替え方針の本格的な検討
勤労会館、中央区役所、三宮図書館の移転先を年内に決定

都心道路空間のリデザイン
三宮クロススクエア実現の調査・検討
加納町3丁目交差点改良の推進
三宮プラッツの改修着手
東遊園地活性化の本格的な再整備基本計画策定
新神戸-北野間回遊性改善の検討着手
まちなか拠点の整備(まちなかに“賑わい”や“憩い”を感じられる公共空間を創出・JR元町駅等)

ウォーターフロント地区再整備
BRT社会実験(三宮-神戸空港/三宮-メリケンパーク間で運行)
中突堤活性化(海洋博物館のリニューアル/地区の一体的な管理運営のあり方検討)
民間活力を導入した新港第一突堤基部再開発
波止場町1番地の回遊性向上

29nenyosan.jpg

昨年度、一昨年度は22-23億円程度に抑えられていた都心・ウォーターフロント地区の再整備に割かれる予算が55億円に倍増しました。これは一定の評価に値すると思います。しかしながら主要施策については相変わらず基本計画の策定や検討の文字が並びます。

特に三宮クロススクエア/「えき=まち空間」の実現についてどういった方法で推進するのかはずっと検討中です。基本計画の策定が年度内に具体化案及びそのプランの発表に結びつくのかを注視する必要があります。ただこれが決まらないと、駅周辺で計画されているJR西日本の駅ビル建て替えやそごう神戸店建て替え等も具体化が困難となります。

新バスターミナルについては民間事業者の企画提案会が予定されている事や2020年からの開発着手、これに伴い年内に中央区役所や勤労会館の移転先決定等、具体的にプロジェクトを推進させる為の準備が整いつつある事が分かってきました。後は年度内に具体的な構想を発表するのみです。雲井通地区の行政施設の移転先を年内決定と示しながら、市庁舎2、3号館の建て替えについては「あり方の検討」に留まっている事も気にかかります。

都心道路空間のリデザイン計画の各施策についてはあまりピンと来ません。一点気になるのはまちなか拠点の整備としてJR元町駅が挙げられている事です。これまでどちらか言えば、元町駅は再開発の取り組みから取り残されている感がありました。どういった形での整備を意図しているのでしょうか。

より具体性を以て計画が進められていく可能性が高いのはウォーターフロント地区の整備です。中突堤はすでにメリケンパークのリニューアルが進行中です。すでに集客力や賑わい創出の向上が期待できますが、取り残される懸念のあった海洋博物館もリニューアルの検討を開始する事は有意義です。これを機に施設の在り方自体を含めた大胆な活用法を検討して欲しいと思います。また中突堤中央ビルやかもめりあ等の施設もエリアの活性化により貢献できるよう民間の知恵を導入する等、検討して欲しいですね。BRTの実験については正直、どこまで効果を検証できるのかについては懐疑的に見ています。

今年度の計画で最も注目すべきは第一突堤基部の再開発着手です。1ヘクタール以上の敷地に民間活力導入による再開発が始まります。この計画を進める為に、開発地区内の民間施設撤去に13億円が投じられる予定です。

今年度内に雲井通5、6丁目双方を含む新バスターミナルの開発構想、「えき=まち空間」の具体化、第一突堤基部の再開発構想が完成予想パースと規模を含めた具体的な形で発表されることを期待したいと思います。

地域課題に対応したまちづくりの展開
予算額: 121.7億円

shinagatachosha.jpg

公共施設の整備
新北区役所整備(鈴蘭台駅前再開発ビル)
新兵庫区役所整備(湊川公園内に新築)
新西区役所整備(西神中央駅前に新築)
新長田合同庁舎整備

hyogounga.jpg

兵庫運河周辺地域の回遊性向上とにぎわいの創出
運河沿いプロムナードにおける夜間照明・案内サインの整備
中央卸売市場本場における市場見学会の開催
中央卸売市場本場跡地(2期)土地利用計画調査

老朽化の著しい3区役所が一斉に更新されると共に新長田に合同庁舎が建設されます。鈴蘭台のように各地区の公共施設更新が拠点性の強化に繋がるように進められるべきでしょう。また赤字を抱える地下鉄海岸線沿線の活性化を図り、居住や訪問人口の増加を目指します。これらの施策は和田岬地区を中心に閉鎖工場や遊休地の再開発が促進され、分譲マンション等の建設により、良好な居住空間への転換が図られるかどうかを左右します。

何気に今回の予算案資料でようやく新長田の合同庁舎や運河プロムナード整備のパースが明らかにされました。

神戸医療産業都市の推進
予算額: 42億円

eyecenter.jpg

神戸アイセンターの開設
新たなレンタルラボ施設整備計画の策定
スーパーコンピューティング拠点形成の促進

医療産業都市で進められている再生医療が具体的な効果を生み出し始めている反面、民間企業の撤退や近畿各地にも医療クラスター造りが計画、構想されており、これまでのような神戸の優位性や勢いに衰えが見られるのも事実です。29年度には神戸アイセンターをはじめ、3つの新施設が開設される予定ですが、更なる民間企業の進出や直接投資が促進されるよう、新たな活性化策が必要です。早期に進出企業・団体数500の達成を目指したいところです。

陸・海・空の広域交通結節機能の強化
予算額: 161.1億円

minatomatsuri13.jpg

広域幹線道路の整備促進
大阪湾岸道路西伸部/神戸西バイパス等の未整備区間の整備

国際コンテナ戦略港湾の推進
神戸港への集貨
高規格コンテナターミナルの整備

神戸空港コンセッション推進

湾岸線延伸部の開通は悲願です。早期の着工と完成部から先行開通させていきたいところです。まずは六甲アイランド-ポートアイランド間を開通させることを先決としたいですね。神戸空港のコンセッションについては関西エアポートが関西3空港を一元管理することが事実上決定しました。これにより現行の規制が撤廃されれば、3空港の役割分担と就航便や就航先の再編が図られ、神戸空港の利便性は飛躍的に高まることでしょう。ターミナルビルの規模拡大やアクセス性の向上も必須です。

神戸にとって今後の5年は飛躍に向けて非常に重要な期間になることでしょう。三宮の再開発とウォーターフロント地区の魅力向上、それを取り巻く交通インフラの強化が相まって効果をもたらせることができれば、再び神戸の都市力はV字回復に転じる可能性が高いです。人口減の歯止めも期待できます。裏を返せば、この5年の間にこれらの施策の多くを具体的に始動させる事ができなければ、決定的な神戸の衰退をもう止めることはできなくなるかもしれません。



関連記事
特集・シリーズ

2022年の神戸はこうなる!三宮再整備主要事業や民間開発プロジェクトの完成相次ぐ 複数の大規模開発も満を持して始動

2022年1月3日
こべるん ~変化していく神戸~
新たな年の幕が開けました。2022年も昨年に引き続いて、大きな変革の年となりそうです。進行形の複数プロジェクトが完成を迎える他、大型再開 …
特集・シリーズ

神戸市営地下鉄と阪急との相互直通運転を逃した神戸市政の失態と先見性を持ったリーダーの必要性について

2021年7月15日
こべるん ~変化していく神戸~
昨春、神戸市と阪急電鉄が検討してきた阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互直通運転について、「投資に見合う効果を見込めない」と …

POSTED COMMENT

  1. sirokuma より:

    ウォーターフロントんぼ開発は進みそうですね。予算も前向きで評価はしています。でもね、本来は都市開発は、もっともっと民間に任せるべきなんじゃないかと思います。臨港地区の指定解除をすることなく最終的な許可権限を手の内に抑えたまま都市計画を主導していくやり方は、もはや限界でそのような手法では、のびやかで面白い街造は難しいんじゃないかな?大枠の都市計画を決めインフラを整備したら、そのエリアの思い切った規制緩和を行い、あとの計画は全て民に任せることで大きな投資を引き出す。これ位やらないと自由でのびやかな街は創れないと思う。
    今時の行政は何でも専門家会議に意見を聞かないと前に進めなない、これが民間の投資機会を無くす原因とならなければいいですけどね。
    ここ数年復調の兆しの見える神戸市です是非とも上昇気流に乗せたいですね。

  2. いまちゃん より:

    神戸市は今まで公共デベロッパー方式を採用して、都市開発を進めてきました。民間に任せるとはいえ、今の日本の経済状況から見ても民間に活力がないのは明らかです。神戸の人口減少と、経済の衰退を食い止めるには、神戸を支える主要産業や企業がないので、やはり神戸市が主導となり、神戸市自体が民間の意識を取り入れていけば良いのではないのでしょうか?具体的に言うと、やはり税金の減税は、鍵を握るのではないのでしょうか。神戸市は税金が高いですから。そういう意味では、国とも掛け合っていかなければいかなさそうですね。

  3. sirokuma より:

    私は公共デベロッパー方式は限界を見せていると思います。PI1期や西部新都心の新長田アスタのビル群が良い例ではないでしょうか?アスタはテナント誘致が計画通り進まず。経営的には行き詰まっているように思います。民間の感覚でしたら破綻状態でしょう。ここに地域浮揚の起死回生策として上記新庁舎を建てるなどお役所発想そのものだと思います。PIも然りです。活性化しない街は次第に魅力を失っていくだけです。同じような構図は、センタープラザやサンパル、RICのファッションマートにもみられます。これらの多くは神戸市の外郭団体が運営しているんですが…自縄自縛と言う言葉しか思い浮かびません。これらの会社は潰れないので厄介です赤字をどのように補填しているのか知りたいものです。一方、民主導で開けていった例としては、垂水・須磨・西区の交差する小束山・舞多聞エリアがあります。ここは20年前は舞子ゴルフ場を中心に殆ど山と空地だったのにすっかり様変わりし、西部の一大商業ゾーンに成長しました。。なかでもコストコの進出は大きかったと思います。コストコを中心に半径約700m位のエリアに、ブルメール舞多聞、ブランチ神戸学園都市など様々な種類の大型店が20~30店舗ひしめき合っており、今も大型商業施設が建設中です。この周辺は、主としてポーアイ埋立と同時に造成された地域ですが従来は周辺人口の割に商業施設が少ないエリアでした。なぜか?都市計画により整備された団地内への出店スペースは限られるからです。でもそこに住む人たちは団地内の消費施設なんてちっぽけで面白くないんです。一方、3区で約70万人と明石・三木・小野・加古川などをふくめた周辺人口は、企業にはとても魅力的な市場だったんですね。そこで目を付けたのが民間が所有する残土処分場跡や山林、高速道路や新幹線を整備した後の残地が広がるこのエリアでした。都市計画区域内でここなら五月蠅い団地内の協定も無く、大店法もクリアしやすかった。企業にとっては自由に計画が出来たからでしょう。駅から遠いこのエリアが、これほど開けるんですから面白いですね。長くなりました。

  4. いまちゃん より:

    今後も、市と民との連携をとって、都市開発(再開発)に取り組んで欲しいものです。
    医療産業都市構想含め、神戸は今、ながれを引き寄せてきています。
    ここで流れに乗せていけるかは、神戸市の手腕と、民間の力にかかっていますね。

sirokuma へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です