仙台

地域探訪 杜の都・仙台1 -街並みと商業施設-

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当ブログは皆さんご存知の通り神戸の変化をテーマの主体としていますが、これまで三宮駅前周辺再開発を考えたり、JR三ノ宮駅の改築を考慮する上で参考になるはずとして、全国のJR駅ビルや開業したばかりのノースゲートビルを記事で取り上げたことがありました。その延長線的な考えとして他都市を検分することで、神戸の優れている点を再発見したり、見習わなければならない点を分析できたりと、視野を広げることに役立てられると考えています。そんな訳で今後は時々、「地域探訪」と題して国内外を問わず、他都市の様子も取り上げたいと思いますのでどうかお付き合い下さいませ。

まずは第一回目として(先日はおまけ的に台北を取り上げましたが)、この年末年始に一泊だけ訪れた東北最大の都市・仙台です。先の東日本大震災に見舞われたことをきっかけに、震災復興都市として、神戸との関わりは以前より深くなったのではないかと思われます。以前はJALや全日空が神戸-仙台便を運行していましたが、現在は二都市間を結ぶ便はありません。スカイマークが運行を検討しているようですが、神戸空港の一日の発着最大枠30便が埋まってしまったので、国交省に規制緩和を許可して貰わなくてならない状況です。

これから3回に分けて仙台の街並みや再開発の状況等をお伝えしたいと思っています。まず今回は都心部や商業施設の様子を中心にご紹介します。

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さて、まずは簡単に仙台市のデータ上スペックを覗いてみましょう。

人口:1,052,039 (H23年12月)
面積:785.85km²
行政区数:5 (青葉区、宮城野区、若林区、太白区、泉区)
市施行:明治22年(1889年)
政令市移行:平成元年(1989年)
都心区域:青葉区
中心駅:JR仙台駅
地下鉄:一路線(南北線) 二路線目(東西線)建設中

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中心駅の仙台駅は一日の平均乗降客数は約27万人(仙石線あおば通駅・地下鉄仙台駅を含む)。東北新幹線、東北本線、常磐線、仙台空港アクセス線、仙山線、仙石線、地下鉄線が乗入れる東北最大のターミナル駅です。今回、仙台三大祭と称される「仙台・光のページェント」開催期間であり、年末休みも手伝ってか、駅内外を問わず多くの利用者で溢れかえっており、駅周辺は非常に活気がありました。

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駅西口が市の表玄関となっており、巨大なバスターミナル及びロータリーと広域に渡って整備されたぺデストリアンデッキが駅前を取り囲むようにして林立する各再開発ビル群を連結しています。この大きな駅前広場からは都心部に聳え立つ各エリアの超高層ビルを見渡すことができ、駅を降り立つとひと目で街のスケール感を肌で味わうことができます。

仙台は伊達政宗の築いた城下町であることは誰もが知る事実ですが、こうした歴史ある日本の大都市のほとんどが玄関口となる鉄道駅と中心商業地区を別としていますが、仙台は駅を中心とした都心部が駅前の集積度をそのまま維持した形で拡大していったような街でした。

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街の歴史は古いですが、大都市としての仙台はやはり高度経済成長時より始まり、最大のきっかけは東北新幹線の開通ということで、「日本の大都市」という教科書に従って忠実に形成されたような感があります。

神戸でも80年代より三層ネットワークをコンセプトとしてJR三ノ宮駅を中心に駅周辺の各中核商業施設間を触手を伸ばすように空中回廊が整備されてきました。しかしながら仙台駅西口デッキの充実度と比較するとまだそのアクセス性は不十分であることを痛感させられました。それもそのはず。仙台駅西口のデッキは日本一の規模を誇り、さらに将来的には更に拡大される計画のようです。

三宮もこれから延伸されるミント-日本生命ビル間のデッキから更にそごう-マルイ間までを整備し、仙台のように駅周辺の商業施設間全てを回遊できるようにされるべきです。

仙台のぺデストリアンデッキがここまで発達した背景には、この巨大な駅前広場には地下街が整備されていないという点がキーになっているのかもしれません。

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駅周辺エリアの再開発も活発です。再開発が次の再開発の呼び水になっているような状況が続き、エリア一体が再開発ビルで埋め尽くされています。これらのほとんどが民間投資のビルであることも特徴です。三宮東地区も旭通4丁目を中心にこうした再開発の連鎖が起こることを期待したいです。

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ここから駅前地区の商業ビルに触れておきます。地区内で最も真新しい再開発ビルがこちらの仙台マークワン。地上19階建て・延床面積約50,000平方メートル。地下1階-地上9階にはパルコが中核施設として入居し、地上10-19階はオフィスフロアとなる複合ビルです。規模的にも立地的にもミント神戸を彷彿とさせます。

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お次は仙台ロフト。旧セゾングループの商業ビルが続きますが、この建物も80年代に建設された再開発ビルです。三宮で言えばサンシティビルといったところでしょうか。仙台も百貨店再編の煽りを大きく受けた街の一つです。この建物もかつては「ams西武」が核テナントでしたが、2003年に撤退。その後、ロフトが開店したそうです。この再開発ビルも2-8階にロフトが入居し、1階にはパチンコ店があったりするので(ぺデストリアンデッキが地上1階として機能している面も大きいかと思われますが)、かつての神戸そごう新館のようで親近感が沸きました。

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さくら野百貨店は東北地方を中心に展開している地方百貨店です。かつては仙台ビブレだったそうですが、マイカルグループの経営破綻によって同百貨店へと衣替えしたようです。他、仙台駅前には十字屋も存在したそうですが、これもダイエーグループの破綻によって撤退。西武、マイカル、ダイエーとかつては一世を風靡した流通大手が多く進出していた分、そのしっぺ返しの影響も大きく受けたという点はダイエーの企業城下町的存在であった神戸も同社の破綻に大きく揺さぶられたので、ここでも共通点を見出すことができます。西武の撤退した都市という点も同じですね。駅前百貨店としてはそごう神戸店の位置付けです。

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最後はJR駅ビルです。東北新幹線の開業に合わせて建設された駅ビルでJR東日本の子会社である仙台ターミナルビル株式会社が所有しています。核テナントに地元ファッションビル・エスパルが入居しています。神戸ではOPA的な存在ですね。その後、バブル期には仙台初の高層ホテルとして仙台ターミナルホテル・現ホテルメトロポリタン仙台(中央の高層タワー)が隣接して開業。300室を抱える大型シティーホテルです。

この他、駅前地区にはE-beensと呼ばれる複合商業ビルや十字屋跡に開業したLABI等もあり、同地区の大型商業施設の総売場面積は10万平方メートルを優に越えます。

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さてここからは仙台駅を離れて各大通りの様子や商店街に目を移したいと思います。西口駅前に接続し都心を東西に貫く大通りは青葉通、広瀬通、南町通と少し外れて定禅寺通があり、南北は駅前を愛宕上杉通、中央に勾当台通が縦断しています。基本的には仙台駅を中心として碁盤目状に街が広がっている状態です。

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青葉通は神戸にとってのフラワーロードにあたるメインストリートになります。百貨店や銀行や証券会社等の金融機関、オフィスビルが整然と立ち並ぶ風格のある大通りです。ケヤキの街路樹も美しい通りです。

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西口駅前広場から約2キロに渡ってこうしたビル街が続いています。通り沿いの再開発も進められており、メインストリートとしての風格たっぷりです。歩いてみると札幌の駅前通を思い起こしました。道幅や整然とした雰囲気がよく似ている気がします。

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これは青葉通に限ったことではありませんが、仙台の大通りは歩道が非常に広いです。人口密度的なこともあるのかもしれませんが、ゆったりとしているので歩きやすかったです。

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こちらは青葉通ではありませんが、あまりにも歩道が広いので車道側を自転車専用、外側を歩行者専用としても十分な広さが確保されています。

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駅前地区では地下鉄駅へのエントランスが点在し、地下道は仙台駅と駅前にある各線の地下駅を連結しています。

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青葉通沿いに存在する大型商業施設は先程、ご紹介したさくら野百貨店の他、ダイエー仙台店や藤崎が挙げられます。ちょっと話は脱線しますが、私は日経が発行している日経トレンディという雑誌をかなり昔から愛読しています。現在はヒット商品をメインとしていますが、20年程前は現在の週間ダイヤモンドや東洋経済のように地域経済や再開発関連の情報も多く記事にしていました。同誌で仙台の商業戦争特集があった際、このダイエー仙台店の存在を知り、なんて格好良いダイエーなんだろうと驚いた記憶があります。なんとこのダイエー、全盛期は年商200億を越えた日本一のスーパーだったそうです。

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藤崎は仙台に本店を置くご当地百貨店で売上高486億円の地域一番店であり、東北地区でもトップの売上高です。売場面積は30,447平方メートルで仙台三越に次ぐ規模を誇ります。

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藤崎は近接した再開発ビル「仙台ファーストタワー」の低層部にもファーストタワー館を出店しています。

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南町通の地下は現在、地下鉄東西線の建設工事が行われています。地下鉄東西線が開通すると仙台駅前から一番町を経て観光地である青葉城址のある青葉山や東北大学へ一本で行けるようになるので非常に便利になります。

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広瀬通は青葉通と平行する大通りです。通りには地下鉄南北線の広瀬通駅やファッションビルのフォーラスがあります。

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オフィスビルやビジネスホテルも数多く存在するのが広瀬通です。

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お次は南北を走る大通りのご紹介です。まずは愛宕上杉通から。夜間にはガス燈が灯る洒落た大通りでどことなく三宮中央通りに雰囲気が似ているような気がしました。

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ガス燈の上にはなんと政宗さんが!なんて小粋な演出でしょうか。

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この通りの一直線上の絶妙な位置に高層ビルのNTTドコモ仙台ビルがあります。この建物があるお陰で通りの奥行き感に締まりが出てとても良い感じです。建物設計時にはこの通りからの景観まで考慮に入れられたのでしょうか。三宮でも中央通りから眺めるHAT神戸の高層タワーがスケール感を演出しているので私のお気に入りの景観です。

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次は勾当台通です。恐らく都心部では最も幅員のある大通りではないかと思われます。ただこの通り、広瀬通を境に東二番丁通となり、名前がコロコロと変わるようです。

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再開発によって大型オフィスビルやホテルが林立する大都会仙台を象徴するかのような大通りです。駅前地区に次いで高層ビルが多く立ち並んでいる通りでもあります。

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そんな勾当台通/東二番丁通には先程ご紹介した仙台ファーストタワーや仙台三越があります。三越は勾当台通と定禅寺通の交差点角に存在する仙台唯一の大手資本百貨店です。白い本館と煉瓦色の141ビルに入居する定禅寺通り館の二館体制で営業しており、売場面積は31,735平方メートルと東北地方最大規模のデパートです。立地や雰囲気、存在意義等も含めて仙台の大丸神戸店といったところだと思われます。

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この通りで真新しいビルの建設現場が見受けられました。もうすでに竣工寸前のようですが、平和不動産が進めている複合ビルプロジェクト「一番町平和ビル」です。地上10階建で1-5階が商業フロア、6-10階がオフィスフロアの予定。今月中旬に竣工だそうです。テナントにはBEAMSやFranc francが入居する他、我等がUCCの上嶋珈琲店も東北初出店するようです。建設中に震災に見舞われ、竣工時期が半年程遅れたようですが、無事完成するようで何よりですね。真横にはアーケード商店街「「マーブルロードおおまち」のエントランスとなっており、神戸・元町のVEGAのような存在でしょうか。三宮センター街のエントランスにある銀泉ビルもこんな建物に建替されて欲しいものですね。

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仙台でもアーケード商店街は第一線で健在です。東西南北をキロ単位に渡る形でアーケード街が整備されています。主に駅前から東西を貫くのがハピナ名掛丁商店街、クリスロード商店街、マーブルロードおおまち商店街。上の写真はこの3つの商店街の集合体です。先程、ご紹介したマーブルロードおおまち商店街入口の平和ビルが右上に確認できます。南北はサンモール一番町商店街とぶらんどーむ一番町商店街の二つです。東西と南北の二つのアーケードは一番町にて交差します。

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クリスロードは明るく割と庶民的な雰囲気を持った商店街でした。幅員も大きく開放感があり、アーケード商店街内に天然の街路樹が植えられているのは新鮮でした。

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代わってマーブルロードおおまちは照明を落として少しシックで上質感のある雰囲気を持っていました。床面や柱、梁等は白で統一され、百貨店のフロア内を思わせます。通り沿いには老舗百貨店の藤崎やセレクトショップが多く存在します。

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サンモール一番町はマーブルロードと藤崎前で交差します。重厚感はマーブルロードに近い形です。老舗アーケード街としての貫禄があります。

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マーブルロード、サンモール一番町に接するぶらんどーむ一番町は最も開放感溢れるアーケード街で、クリアなドーム状ガラス屋根からは青空が望め、大きな街路樹が二列に渡って植栽されていました。沿道沿いにはフォーラスを中心にファッションビルやブランド店が集積するエリアとなっています。地域一番店である藤崎が中心となって、神戸の旧居留地のように周辺エリアに高級ブランド店の路面店誘致を行い、仙台のブランド街を形成しています。ちなみに仙台七夕祭りはこれら一番町商店街を中心に行われるそうです。

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最新のアーケード街はアーケードであることを感じさせずガラスを採用することで自然光を多く取り入れて、植栽も豊富に行われており、アーケード街は薄暗いというこれまでの概念を完全に払拭して、明るく開放感に溢れた形に変化を遂げています。私が今、最も訪れてみたい商店街の一つに香川県高松市の丸亀町商店街がありますが、この商店街は高松三越と一体となってアーケード商店街の再生と再開発を行っており、目からウロコが落ちるような壮大でお洒落な街並みに変貌を遂げつつあります(いずれ一度、取材に行ってみたいと思います)。

http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/photo.aspx?id=20110430000160&no=1
(四国新聞社・香川ニュースより)
http://www.fujitaka-arcade.jp/marugame1.htm
(株式会社FujitakaHPより)
http://yomibito.at.webry.info/201105/article_1.html
(詠み人知らずの不定期ブログより)

ちょっと話が脱線しましたが、こうしたアーケード街の「新しい形」の「原点」もしくは「走り」的な存在となったのがこのぶらんどーむ一番町ではないでしょうか。高さ18mの現・高層アーケードが整備されたのは1993年。

三宮センター街のアーケードが再生されたのは1997年。完成後15年が経過し、当初は自動開閉システムによって自然光を取り入れる等、斬新なアイディアを駆使した同アーケードも現在は常に閉じられたままになっており、さん・センタープラザの建物老朽化によって、将来的には抜本的な再開発は必須です。

センター街の在り方を考える上で、アーケード街の維持を選択するのであれば、仙台や高松のこれらの商店街はおおいに参考になるかと思います。

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最後に仙台は「杜の都」と呼ばれるの相応しく街中の大通りにはこれでもかという程のケヤキ並木が存在しています。今回は真冬の訪問ということで葉はすでに散ってしまっていましたが、葉が芽吹いた時期から青々とした真夏には恐らく街がまさに森へと変貌するのではないかと思います。

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メインストリートが青葉通という位ですから、もし仙台に地下街があれば地下にでさえも植樹しそうな気がします。

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神戸も旧居留地を中心に街路樹の多い地区は点在しますが、街全体をここまで植栽で統一するというのはすごいと思います。殺風景なエリアでも街路樹が覆い茂るだけで景観は一変します。特に真夏にはアスファルトに陽が落ちなければヒートアイランドの軽減にも寄与しますし、歩行者も直射日光を浴びずに済みます。神戸の街中でももっと積極的に街路樹の量を増やしていくべきかと思います。

仙台市の街造りは戦後の復興計画が功を奏しただけでなく、常に統一性を持った形で官民一体となって開発を進めているという印象を受けました。これ程までに仙台が発展を遂げている理由を考えると、東北地方には各県の県都を含めてこれといった都市が存在せず、東北のヒト・カネ・モノが全て仙台に集中しており、また首都圏から1時間半という距離も東京資本が流入しやすい環境を生み出しているのではないでしょうか。

コンパクトで美しい街並みが広がる仙台ですが、反面、画一的で街並みにあまり変化がないので、神戸のような多様性は感じられません。神戸は都心の各エリアが持つ多様性の魅力をより引き立たせつつ、仙台のような統一性を導入することでより魅力的な街へと発展させていくことが必要ではないかと感じました。

次回の地域探訪では仙台の高層建築、観光名所をご紹介したいと思います。



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