今年4月より関西エアポートに運営権が委ねられた神戸空港。開港から13年目で神戸市の手から離れて民営化されました。かねてから関西3空港活用論の声が強まりつつある中、同空港のコンセッションは当初の思惑通り、関西空港、伊丹空港をすでに一体的に運用していた関西エアポートの運営下に入りました。搭乗者数は開港前の需要予測には未だに届いていないものの、昨年度は開港以来過去最高の300万人を突破。民営化された今年度の目標利用者数は327万人に設定されています。
ご存知の通り神戸空港は1日30往復便(60便)の離着陸回数制限と運用時間規制が課せられており、すでに上限一杯に達した状況の現在より大幅な利用者数の拡大は難しいとされています。残された道は機材の大型化ですが、就航数の8割を経営再建を果たしたスカイマーク航空が占める為、これもあまり期待できません。また利用者の利便性を考えても機材が大型化するよりも便数や就航先が増えた方が空港の発展に繋がります。よって規制緩和にしか神戸空港の飛躍の道はありません。
関西エアポートによる運営開始から約半年が経過しましたが、半年前から大きく変化した点はまだほとんどありません。エントランスの空港名のロゴやターミナルビル内部の案内表示等が更新された程度です。
関西エアポートによる関西3空港の一体運営は開始されましたが、本格的に3空港の役割分担の見直しや規制緩和には「関西3空港懇談会」の開催が必須です。年内に開催される見通しとされており、井戸知事も早期開催を求めていますが、具体的な開催時期の目途は未だに立っていません。
そんな状況下、台風21号が関西地方を直撃し、各地で大きな被害を与えました。関西空港に至っては空港島が冠水、連絡橋にタンカーが衝突、破損した事で一時は8000人以上が島内に孤立する事態が発生しました。同空港が閉鎖され、復旧に時間が掛かる事はこれまで近畿エリアの経済基盤を大きく拡大させてきたインバウンド効果に歯止めを掛け、物流網にも大きな影響を与え、関西経済全体に大きなマイナスをもたらし始めました。またこの間に成田、羽田、名古屋や福岡シフトも懸念されています。
関西3空港懇談会の開催に理解を示し始めながらも積極的には動こうとはしなかった松井大阪府知事もこの事態を重く見ており、国に対して関空の機能を伊丹と神戸空港が一時的に代替できるよう強く求めるに至りました。また井戸知事や久元市長にも協力を要請。この辺りのアクションの速さは流石です。これに対し、井戸知事は「協力する」と回答。
一方、関西空港では復旧に向けて速いスピードで作業が進められており、被災3日後には被害の少なかったB滑走路と第2ターミナルを活用した一部の国内線運航を再開。国際線についても一部運航を開始しました。しかし完全に被災前の状態まで復旧させるにはまだ時間を要します。
国土交通省は対策プランを発表し、本格復旧までの「暫定運用」の期間中に伊丹空港と神戸空港に国際線の就航を想定するとしました。
3空港懇談会の開催でさえ足踏みを踏んでいた状況から思わぬ形で暫定措置という条件付きではありますが、神戸空港に初めて国際線が就航する可能性が出てきました。ただ国際線の就航には施設内で入出国の審査や税関手続きが必要となる為、ハード面の整備や職員の派遣等、クリアされなければならない課題が立ちはだかる他、関西空港の復旧が想定より速いスピードで進んでいる事もあり、実際に国際線が飛ばす必要性があるのかはまだ未知数の状況です。
また運用時間制限についても伊丹と神戸の時間枠を朝・晩の1時間延長対応による緩和を検討。最終的に関空の一時的な機能代替を行う事が不要になったとしても、今回の台風が関空一辺倒である現況のリスクの大きさを露呈させました。従って3空港の適正な活用法の議論は今後、加速し、早期の規制緩和が実現する可能性が高まるものと思われます。また万一、関空の路線が神戸から飛び始めた場合、これをきっかけとしてそのまま緩和された規制が恒久化するという事も起こり得るかもしれません。
経営再建を果たしたスカイマークは再び国際線の運航に意欲を示し始めています。神戸空港は同社にとっても羽田と並ぶ最重要拠点空港として位置づけており、神戸から国際線を飛ばしたいという目論みを抱いている事は明らかと思われます。
神戸空港の運営権を取得した関西エアポートは空港ターミナルビル内の店舗フロアを一部再編して集客性や利便性を高め、関空や伊丹で一部導入済のスマートレーンを神戸にも導入して保安検査のスムーズにし、利用者の満足度向上を図る事を想定していますが、規制緩和が実現に至るまでの同空港のテコ入れは既存施設の改修に留まざるを得ません。それでも今後、5年間で39億円の投資を図り、ターミナルビルの大規模改修を実施するとしています。
ターミナルビル3階の飲食店フロアです。現在、5区画にレストランやカフェ等が営業していますが、一番奥の1区画はテナント撤退後、休憩スペースになっています。まずはこのフロアの再編を行い、テナント構成や区画の見直しを行って、空港の集客性を高める事が先決です。すでに関空や伊丹で蓄積しつつある経験とノウハウを活用して、関西エアポートの腕前に期待が掛かります。
土産物店についても仕切りを撤廃してより広いスペースでスムーズに買い回りができるよう改修が施される予定との事。伊丹空港のターミナルビル中央エリアに登場した「関西旅日記」が導入されるかもしれません。
現在の神戸空港の各種施設・設備は将来の拡大を見据えて設計されています。ターミナルビルは東西に拡張用地が残されており、現在の倍以上に拡大が可能です。ビルも増築が可能な設計となっており、潜在力は高い状態です。関西エアポートもこういった点を見越して運営権を取得しており、規制緩和に弾みがつけば現在想定している投資を既存施設の大規模改修だけに留めず、施設増築という形に拡大する可能性も出てくるでしょう。
就航便数が拡大されれば、経営再建の為に撤退してしまった日本航空JALの再進出もあるかもしれません。
政府は東京オリンピック開催の2020年までに年間4,000万人以上の外国人観光客受け入れ突破を目標としており、これから2年で30%以上の増加が見込まれる為、関西空港のキャパシティは絶対的に不足します。加えて万博の大阪開催が決定し、IRの舞洲誘致も進めば更に需要は膨れ上がります。
今回の台風被害によって伊丹の暫定的な運用枠拡大を周辺自治体が容認する事になりましたが、住宅地にある伊丹は騒音面でも安全面でも恒久的に受け入れる事は困難です。よって溢れる需要を受け止められるのは神戸しかありません。
また今後も自然災害や今回のタンカー衝突のような想定外の問題が生じた場合、関空依存によるリスクの大きさや同空港がいかに脆弱な状態に晒されているかも露呈しました。リスク分散を図る為にも神戸に一部の機能移管を行う事はすでに必須になったと思われます。
関西3空港懇談会では地元自治体の意向が強く反映される事になりますが、関西経済及び日本経済全体という大義で関西3空港の活用を本格的に図っていく必要性の大きさと切実性が今回の台風被害で明らかになりました。よって今後は国交省が積極的にリーダシップを発揮・介入し、関連自治体をまとめていくべきかと思います。
関西エアポートがすでに3空港を運用しており、その土台はすでに出来ています。また神戸空港自体も災害リスクに対して対策強化を図り、災害発生時の影響を最小限に食い止め、運航に影響・支障が出ないような体制・耐性作りを行っておく必要があります。
東日本大震災の歳もそうでしたが、東京一極集中・首都圏依存リスクを危ぶむ声が高まりましたが、震災から時間が経過するにつれ、首都機能の代替や補完を進めようとする熱は薄れてしまいました。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」です。今回の台風被害による関空閉鎖も同様です。関空の早期復旧・再開を進めつつ、関西3空港懇談会の日程を迅速に決定し、リスク分散と今後の需要対応策についてできるだけ早く協議を始めるべきかと思います。
関空代替で神戸空港にも国際線想定!関西3空港本格一体運用の道が開けるか!?
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神戸空港はポテンシャルの高い空港です。
これを気に神戸空港の規制緩和、国際線就航の動きが進めば良いと思っています。
ただそうなると、
現状輸送力が限界に達しているポートライナーについて8両化計画がありますが、
8両化しても焼け石に水になる可能性がありますね。
そうなれば、三宮付近から神戸空港までの標準軌鉄道路線を敷設し、
阪急阪神山陽地下鉄北神急行が乗り入れる
巨大総合ターミナルを作る···とか、
妄想が捗りますね(笑)
こべるんさんの意見に100%賛同します
来年のG20サミットや東京オリンピックのためにも関西三空港の補完強化は喫緊の課題です 神戸市の対応の遅れや井戸知事が代表を務める関西広域連合の動きが鈍いです
中央から言ってきたら慎重に検討するのでしようか?
今回の件で関空一極集中の弊害が出たのは間違いない。
数年前に羽田で国際線が本格的に復活したように、やはり関西でも分散の必要性があるのではないでしょうか。
また、一部では関西エアポートの対応の悪さ(ベイシャトルなど)も叫ばれているようです。
これをきっかけにどちらの問題も上手く解決して欲しいところですね。
>三宮付近から神戸空港までの標準軌鉄道路線を敷設し、
>阪急阪神山陽地下鉄北神急行が乗り入れる
阪神が乗り入れるべきかと思います。
春日野道駅手前で線路を分岐させ、旧JR貨物線沿いに地下線を作って、みなとのもり公園付近から高架にして、ポーアイを通って神戸空港乗り入れ。
岩屋以東の阪神沿線の方は阪神電車で神戸空港へ。JR沿線、阪急沿線の方や三宮以西の方は今まで通り三宮でポートライナーに乗り換えてアクセス。
梅田、難波方面への特急を設定し、場合によっては近鉄奈良行や西九条駅・中之島線延伸線経由で京都方面とも繋がる可能性もあります。
インバウンド考えると、梅田、難波、奈良、京都と繋がれば、神戸空港の魅力は計り知れないものとなります。
こういうの考えるの楽しいですよね。
今回の件で神戸市の対応に疑問があります。神戸市は運用時間の延長を求めていたと記憶していますが、報道をみる限り地元が運用時間の延長に難色を示しているとなっています。こんな時こそ、すんなり要求を受け入れて、対応能力を示すべきだと思います。
伊丹ばかり報道され、神戸のニュースが殆どない為、本当に30便が振り分けられるのか心配です。
1度規制が外され増便や海外線就航出来れば、
そもそも神戸空港の規制には何の意味も無い事が露わになるわけで
暫定的とはいえ実績を作ることが重要でしょう
http://news.kobekeizai.jp/blog-entry-2505.html
神戸市としては時間拡大に対応できる旨国土交通省に回答したとのこと。
神戸空港での増便を希望している航空会社が現時点でスカイマークのみなので、できればANAにも増便を検討して欲しいのですが。
準備しているうちに関空がある程度復旧してきそうな気もしますが。
神戸空港が本格的にそのポテンシャルを活かして能力を発揮し始めれば必然的にポートライナー以外の輸送方法整備が必須になってきますね。広域ではリムジンバス網ももっと今以上に充実してくるのではないかと思います。
ひとまず受け入れ体制は整いつつあります。あとは本格的に運航が開始されるかどうか。関空の復旧がかなり速いスピードで進んでいます。
やはり関空一辺倒はリスクである事はよく認識されたのではないかと思います。3空港をうまく活用して関西一円で外国人観光客の回遊性が高まればと思います。
本音を言えば全ての利用者が三宮を経由して神戸空港入りが理想ですが、やはり関西一円の広域空港としての機能を果たすには空港ダイレクトのアクセスは重要ですね。リムジンバスもスムーズに空港入りできるように整備も必要かと思います。
初動の神戸市の対応は良くなかったですね。その後、軌道修正してきましたが。格好や体裁を気にし過ぎです。
そうですね。新たに神戸に乗入した航空会社からも継続を希望するような話が出てくるかもしれません。
スカイマークが便を増やしたいのはデフォですね。ANAももっと便数や就航先を増やして欲しいと思います。