提言

震災から24年 神戸は持続可能都市への挑戦に挑んでいるか


今年は震災から24年となり、ほぼ四半世紀が経過した事になります。これだけの年月が経過してもその傷が神戸に与えた影響は未だに色濃く残り、経済や都心部の活性化において他都市との競争に大幅な遅れを取ってしまった主要因と考えられます。

今月14日付の日経新聞が珍しく全国版において半面以上のスペースを割いて神戸について取り上げました。

震災24年、街づくりに転機
そして、神戸 人口減に挑む
都市経営 「持続型」を模索

高度経済成長期と人口増加に対して市街地の拡大・拡散を続ける事で都市経営戦略の舵を取ってきた神戸はその転換期に震災を迎えた。今後は拡大した市街地と既存インフラを活用しながら人口減に挑む。同時に都心部では挑戦的とも言えるマンション規制を導入して商業施設や企業を呼び込み、大阪のベッドタウン化を防ぐ再生も行う。これらの施策が成功すれば新たな大都市経営の先行例となる。

上記が記事の概要です。神戸市が検討する都心部全体にタワーマンションの建設規制の網を掛ける事は他の大都市では行われておらず、切り口によっては画期的と見る事もできます。また都心全体を業務・商業地区として活力あるエリアにできればそれは理想的です。また郊外でも再び若い世代の人口を増加させ、これまでの理想的な都市像を再現する事が出来ればそれに越した事は有りません。

しかしこれらはどれも人口減社会の時代の流れに逆行しています。他都市は寧ろ規制を緩和して民間事業者の開発意欲を刺激し、都心居住の促進によって共働き世帯増加に対応し、選択と集中に拍車を掛けています。

神戸は規制の追加と強化を推し進めようとしており、ある意味「逆張り戦術」とも言える方法を採っています。


しかし現実はどうでしょうか。都心部におけるタワーマンションや大規模マンションを規制したからといって、民間事業者がその代わりにオフィスビルや商業施設を建設するとは思えません。寧ろ一層、中小規模な賃貸住宅の無尽蔵な増加を助長してしまうでしょう。最も需要の高い三宮地区が特定都市再生緊急整備地域に指定されているにも関わらず、実際に制度を活用する実例が出て来ません。それ以外のエリアでは尚更、開発の可能性は低くなります。また一方で都心の居住を制限しても神戸市内の不便な郊外に住もうという事にもなりません。であれば周辺市への引っ越しも選択肢に入ってきます。

今後、大阪湾岸線西伸、西日本最大級のバスターミナル整備、阪急の地下鉄乗り入れや北神急行の市営化、神戸空港の規制緩和や国際空港化等、大規模なインフラ整備が相次ぎ行われていく事により、都心部が飛躍的に再生されて活性化する可能性は確かにあります。その為にも開発可能な用地を住宅に占有されないように先手を打つという戦略も理解は出来ます。


しかし選択と集中の必要性が不可避な中、それは都心部においても例外ではありません。都心全域を同じ高度レベルで開発するのは不可能ですし、人口減社会の中でそもそもそのような需要が生まれる事はありません。これからは中枢業務・商業地区として現在以上に高度先端利用を極度に高めるべきエリアと用途を改めて商住を兼ねた複合利用を図るエリアに分け、前者と後者にメリハリを付けて双方向に尖った再生を図るべきではないでしょうか。再開発に成功した阪急西宮北口、JR明石、JR尼崎等の駅前は住宅と商業施設をうまく組み合わせて高い人気を集めています。大阪の都心部もタワーマンションの建設ラッシュが続いています。

せめて三宮、元町は規制を掛けたとしても神戸駅周辺は規制を外し、新快速停車駅のメリットを活かして駅北側や西側の再開発を複数のタワーマンション建設によって行い、新開地や湊川にかけての活性化と人口増加や若返りに繋げるべきです。

関連記事
JR三ノ宮新駅ビル

JR西日本は新三ノ宮駅ビルを単独開発する必要はない 共同開発や定借権での他社開発も視野に入れるべき

2021年7月21日
こべるん ~変化していく神戸~
  地上部の解体が中途半端な形で終わり、コンクリートの簡易広場になってしまっているJR三ノ宮駅の三宮ターミナルビル跡地。昨年度に都市計画決 …

POSTED COMMENT

  1. 摂津国人 より:

    全くもって仰る通りです。
    最低でも、「三宮、元町はビジネス・商業地区、神戸駅、新開地、湊川、大倉山には住宅地(タワーマンション含む)としての開発を認める」とするべきです。
    タワーマンション規制の1点に全てを賭けるのは、リスクマネジメント上の下策です。
    実際、ハーバーランド周辺などのタワーマンションは、ハーバーランドの賑わいに大きく貢献しています。
    先の新開地の再開発の記事で申し上げたように、新開地周辺はまだまだ高いポテンシャルがあります。
    神戸高速鉄道で初乗り運賃が複数発生する問題も早目にクリアすれば、人は住んでくれます。

    本記事内でご指摘のタワーマンション問題も、そもそも三宮の再開発がここまで遅れなければ、それほど大きな人口減少にならなかったでしょう。
    大阪や京都、東京、神奈川でも都心部に住むのはトレンドです。
    そんなに三宮をビジネス・商業地区として集積させたいなら、とにかく三宮の再開発を急ぐべきです。
    JR京都駅やJR大阪駅が新しくなってから何年が経過したのか、その間神戸は何をやっていたのか、JR三ノ宮駅ビル(三宮ターミナルビル)が閉業してからもう1年近く経つのに新駅ビルの計画公開が何も進んでいないのはどういうことか、神戸の人口減少をどう食い止めるつもりなのか。

    10年前はまさか人口で福岡に負けるなんて思いもしませんでした。
    2018年の百貨店売上高でも福岡に負け、広島に追い上げられているとのこと。
    次は広島に人口で負ける覚悟もしなければなりません。

  2. S.Y. Kobe より:

    今の神戸市の施策では目指す成果は全く期待出来ないどころか見事にずれています。
    やはり無能な主管部署と無責任な御用学者と指導力欠如市長と見事に三者が揃った結果の不幸な事態でしょう。
    彼らが現在の街の実態を自分の足で何度も巡り肌で実感して規制内容や区域を決定しているとはとても思えません。
    また自ら汗をかいてリーディングプロジェクトを創出・牽引することもなく、只々民間に机上の空論のような規制を乱発し従わせることが指導力だと勘違いしています。
    神戸市の行政能力はいつからここまで劣化してしまったのか。

    特定都市再生緊急整備地域内で規制をオールフリーにすること、容積緩和を大胆に行うこと、特定の街区について行政も参入して汗をかくこと、これ以外に都心再生は成功しません。

  3. sirokuma より:

    神戸市が、規制緩和ではなく規制強化政策で『今後は拡大した市街地と既存インフラを活用しながら人口減に挑む。同時に都心部では挑戦的とも言えるマンション規制を導入して商業施設や企業を呼び込み、大阪のベッドタウン化を防ぐ再生も行う。』できると言うのなら同時に、この施策の導入により具体的に商業床面積を現行床面積から何㎡、就業人口を何人増やすのか?企業を何十社誘致しようとしているのか?それに折る経済効果を何千億円見込んでいるのか?しかるべき経済研究所に試算を依頼し、実現可能な具体的な数値目標の提示を求めたい。
    ここから、長文になるが許して頂きたい。
    私は、以前から福岡市行政の施策を評価しているがその一番の理由は、プロジェクトの前に、的確な現状把握と課題を洗い出しプロジェクト成功のために何をなすべきかを常に考え具体的な数値目標を立てて実現に向けて官民・市民一体となり事業を行っている点です。推進していくうえで新たに見つかった障害について行政は実に迅速に対応しているのです。固定観念にとらわれず何をしたら企業を動かせるか?誘致できるか?大型の資本投資を呼び込み美しくらい先進の都市を創造できるか?行政に出来る事は全てやると、最大限のサポートをしていることです。
    福岡の成功しつつある事例を時系列に並べてみます。2014年から10年間でやると決めて実現のために何をしてきたかが良くわかります。暇なときに眺めてみると神戸市との勢いの差・熱の違いが歴然としています。
    ●2014年頃 アジアの拠点都市となるべく中心市街地の老朽化したビルの約30棟の建て替え等、経済波及効果等具体的数値目標を掲げ”天神ビッグバーン”が始動します。
    http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/56223/1/tenjinbb0.pdf?20181115140846

    ●最大の弊害は、中心部全域に航空法による高さ制限67m(15階相当迄)の網がかかっていることでしたが、福岡市は国家戦略特区を利用し高さ制限を76m(17階相当)まで緩和することに成功しました。これによる建替第1号が福岡地所で建築デザインをニューヨークで活躍するOMAの重松正平をデザイン手掛ける延床約6万㎡の天神ビジネスセンターです。
    http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/56223/1/tenjinbb3.pdf?20181115140846
    続いて、西鉄の福ビル建替え、延床10万㎡のビッグプロジェクトです。こちらも外装デザインは米国の有名事務所Kohn Pedersen Fox Associates(KPF)が手掛けています。
    http://www.nishitetsu.co.jp/release/2018/18_076.pdf
    news
    ●但し、民間からは更なるかんっを求める声が高まり、福岡市は再度内閣府と交渉しエリア単位で高さ制限の特例承認を認めてもらうことに成功します。これにより、76mの制限が最大で115m(26階相当)まで緩和されることになりました。そして、そのエリアは民間の要望により天神ビッグバンエリア外の博多湾ウォーターフロントにまで拡大して再開発のエネルギー源となっています。
    http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/56223/1/170926_takasaseigengakanwa_tennjin_wf.pdf?20181115140846

    つづく

  4. sirokuma より:

    ●その成果の一つが、大名小跡地開発で、Daimyo Garden Square:国内外のチャレンジャーと企業が集い,新しい価値を⽣み成⻑するグローバル創業都市の新たな拠点を創出する事を事業コンセプトとして、こには、リッツカールトンが進出を決めハイグレードオフィスとグローバル企業向けの国際⽔準のレジデンスの他、様々な施設が整備されます。
    http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/56223/1/180928_daimyo_jigyokeiyaku.pdf?20181115140846
    ●これだけのプロジェクトが動き出すと企業の仮事務所・移転先が必要になりますがそれを支援する動きも生まれています。
    http://aeon-kyushu.info/files/management_news/1617/pdf.pdf

    ●お気づきのように、著名建築家・事務所の作品が多い事も特徴ですがこれは未来に向けた高品質の街づくりとして平成36年12月31日(ビッグバン期間中)に竣工予定のビルに限定した期間限定のインセンティブ制度によるものでしょう。低層部公開空地を含めた魅力あるデザインの計画には最大容積率+50%の容積割増しがあるのです。
    http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/56219/1/160325btenjin_bbb_besshi_kai2.pdf?20181113224155
    福岡市の市政は実にわかりやすいですね。
    ●実はこれらのプロジェクトを下支えするエネルギーはソフトの面からも湧いてきていると思います。福岡市は2014年に日本で最初のスタートアップカフェを開設しベンチャーと有能な人材のマッチングに力を入れていましたが、そこから上場した企業もあります。そして今は、福岡市内で起業する個人だけでなくその輪を外国人企業への支援にまで広げつつあります。さらに最近50歳以上の起業家に対する資金融資も始めています。上限が3500万・10年返済・金利1.2%・融資保証料0円、保証人原則不要…これだけやったら移住者・参入者には魅力的でしょう。これは“福岡100”と言って人生100年時代のモデルを作る100のアクションにより実践されているもので、2025年までに100のアクションを見つけ実践する事を目標に掲げたもので現在29プランを実践しているようです。
    http://100.city.fukuoka.lg.jp/about
    ●同じく、Fukuoka Next Bookというものがありますが、そこには、(「FUKUOKA NEXT BOOK」に描かれている「未来のイメージ」の実現には,福岡市の取組みだけでなく,個人,地域,企業,NPOなどみなさんのチャレンジが必要です。未来に向けた設計図が市民のみなさまと共有されることで,ともに考え,語り合い,動き出す。次のステージに向けたチャレンジが始まっていくことを期待しています。未来に向けて,レッツ・チャレンジ!)というメッセージが添えられています。
    http://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/kikaku/shisei/next_challenge/fukuoka_next_book.html

    数年間ウォッチングしていますが、今の福岡市は、留まる事を知らないようです。次々と新しい課題を見つけ現状を分析し、何時迄に、どのようかえれば、どのような効果が出るか?を考えて突き進んでいます。

    翻って神戸市の施策を見ると空虚なお題目が並んでいるだけに思えてなりません次々と浮かんでは有耶無耶になる計画を見るとプロジェクト実行能力が欠如しているとしか思えません。時間という意識が無くあまりにスローで何も決まらない。ヴィーナスやタワマン規制といっても、プロジェクトに期間・数値目標が無く効果予測の提示もない…誰が責任をもってプロジェクトを成功させるのか?規制をつくりどのような街が出来上がるのだろう。おそらく多くの人はマイナスイメージしか思い浮かばないだろう?BRTやLRTの検証は?同時期に社会実験を開始した福岡市は既に1日70便前後のBRTを走らせている。
    福岡や大阪・横浜,お隣の明石も定めた目標を着実に実行し成果を上げている。これらの成功事例を見ると誰の目にも規制強化では民間企業を呼べないことは明らかだ。雁字搦めの土地に喜んで投資する企業がいる訳がない。規制で民間の企業投資や経済活動をプラスに誘導できると考えているようなら、傲慢であるとしか言いようがない。
    このような神戸市の未来に係る政策転換を実行するのなら先ず、神戸市民に選挙で信を問うべきででしょう。

  5. 匿名 より:

    ヨーロッパは昔から都心部に人が住み続けています。
    金持ちは都心に住み、貧乏人は郊外に追いやられています。
    住居とオフィスの分離(ゾーニング)という考えを広めたのはアメリカです。
    金持ちが郊外に住んで、都心に通うという文化を確立させました。
    しかしそのアメリカですら、職住近接が進んでいます。
    NYやロスの都心部では高級マンション建設ラッシュが起きています。
    神戸市長は20世紀の古きアメリカ像に憧れているのでしょうか。

  6. windforest より:

     久元市長は、以前、「作文行政からの脱却」として、〇〇計画、○○プラン、**ビジョンというものが役所には多く存在することを挙げ、それらは机上の作業であり、このような、「作文行政」が本当に市民のための仕事になっているのかどうか大いに疑問がある、と指摘しました。そして、計画策定の組織を廃止し、計画を簡素化あるいは改定を取りやめ、以後、「作文行政」からの脱却が、市役所の中に広がっていくようにしていきたいとの考えを示しました。(2014.9.4 久元喜造ブログ)
     そもそも、「計画」を策定する意義としては、単に主観的な目標を示すだけのものではなく、現状を客観的、総合的に把握し、利用可能な人的物的資源を洗い出し、その上で合理的かつ理想的な目標を示すことにあります。さらに、その計画が、行政だけでなく、市民や企業等の各主体に対しても活動の指針となって、それぞれが同じ方向に向かって進み、全体として理想的な状態を相乗的に実現していくという効果があります。
     計画策定作業は、一見、無駄な作業に思えるかもしれませんが、その作業の過程で、計画というフォーマットをなぞることで、現状の総合的・客観的把握、方向性の共有という点において一定の効果を果たしていたのだと思います。
     その一方で、神戸市が打ち出した「三宮将来ビジョン」には、現状の客観的把握という計画の基本的要素が欠けており、それを「計画」と見るならば致命的な欠陥だと思います。正しい現状の把握なくして正しい施策はありえません。
     神戸市が、本来、大都市に求められるレベルの施策が今なお打ち出せず、「村おこし」のような施策が生まれては消えていく現状は、この「作文行政からの脱却」と無縁ではないのではないでしょうか。

  7. こう区民 より:

    ペンシルアパートしかりペンシルマンションの集約化って実際難しそうですがね。
    所有者に経営者としての気概がないとね、
    彼等は投資なんて考えじゃなく、
    利回りを重視してそれ以外は考えないのですよ。
    私はタワマンは良いと思うのですが、
    まぁ区域について一定は規制すべきですね。

    行政は駒を持っていて利用規制の緩和はエリア毎建物毎に出来るわけだから、居住数の減少も進んで小学校の受入も出来る余裕のあるとこを選択するなら大体場所は決まってくるでしょう。
    高さ規制の発端って一体何なのか…。

    と、書いていくとなんだか戦略が防戦一方なんですよね。まぁこれって平成以降
    実はどこもそうだとおもいますけれど。
    私が良いなと思ったのは広島です。
    広島駅前の商業施設の力の入れ方は
    多分伸びとして神戸を越しているかと。
    観光客も集まる、何よりマツダという自動車産業の
    お膝元です。本社ビルは東京の方が高いでしょうが…。

    野心のある経営者が中々おられない、
    大規模資本のあるオーナー企業が少ない
    神戸の苦さであり、限界なのだと思います。

  8. 匿名 より:

    ペンシルの集約化は出来ると思いますよ、今の市場環境は家主にとって非常に厳しく妙味がなくなっている…どころか赤字化している家主さんも多く、疲れたと本音をこぼす方もいる。この状態は残念ながら解決のめどが立たない。一方、水面下では不動産再生(地上げ)の動きは根強いのですが、行政が発表する都市計画は規制の話ばかり、これじゃぁ動けない。妙味の無い市場では何も動きません、利用規制の緩和を行政がコントロール…経済を統制?やはり市場原理に任せるべきでしょう。小学校は校区再編と増築その他でクリアできるでしょうし、必要なら、昔の制度…学校分担金などの再用もありかもです。

    神戸の苦さ限界については同じ思いを強めています。
    ダイエー中内さんやワールド畑崎さんがいたころは、大きく動いていましたもんね。

こう区民 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です