4年前に横浜を訪れた際には外観の完成が間近に迫っていたJR横浜駅の新駅ビル「JR横浜タワー」。地上26階 地下3階 延床面積98,491.53平方メートル 高さ132mの超高層駅ビルは、計画されているJR三ノ宮新駅ビルとは延床面積で同等の規模であり、現状完成済みの駅ビルとしては最新の建物である事から、三ノ宮駅ビルにも参考にできる点が数多く見受けられます。
5年の工期を経て、2020年6月に開業したJR横浜タワー。1960年代に建築された既存駅ビルのCIALや横浜エクセル東急ホテルを取り壊して建設された商業施設とオフィスから構成された複合施設です。地下及び低層部1-10階が商業施設、12-26階がオフィスフロアになっています。
高層部オフィスのカーテンウォールはみなとみらいに向けた南・西・東方面にのみに採用しており、西口駅前広場には背を向けたようなデザインになっています。
西口駅前広場は駅ビルに面した歩行者空間の拡大が図られており、その上で大屋根が整備されました。
屋根と駅ビルの中心にあたる中央自由通路入口との間にはやや距離が置かれています。
広場の舗装はまだ大部分がアスファルトなので、これから本設の舗装が施されるものと思われます。
中央自由通路へと誘う横浜駅の玄関口。横浜駅と言えばかつては、この西口が表玄関であり、百貨店や商業施設、地下街が集中する大商業ゾーンでしたが、最近は開発が著しいみなとみらいの玄関口となった東口に勢いを持って行かれている様相を呈しており、この新駅ビルは古い西口の巻き返しを図る狼煙的な存在です。
新駅ビルの中央に位置する公共空間。三ノ宮駅ビルでも通路空間が街と駅を結ぶ重要な役割を果たす事を意識しており、駅ビル低層部の中心を占めていますが、横浜駅ビルではどのようにこの公共空間と向き合っているのか。
空間の一番奥は大階段とエスカレーターがあります。巨大な横浜駅は厳密には高架化されておらず、駅舎はホームの下に潜る地下に存在しています。
この大階段に沿ってガラス張りとなっており、ホームや電車を見せる仕掛けは日本の駅ビルでは斬新です。北海道・札幌市で計画されている北海道新幹線の札幌駅でもビルのアトリウムから新幹線駅が見える空間造りが行われる予定です。
駅ビルが駅ビルたる所以を示しているようです。ビルから見えるのは10番線ホームとなります。
アトリウムに戻ります。上を見上げると、頭上に4層に渡る大吹き抜けが広がっています。
アトリウム内に垂直・水平動線が複雑に絡み合う開放感に溢れる空間が構成されています。
2階には板張りのイベントスペースも確保されています。アトリウム内は東西双方から光が差し込み、非常に明るい空間が形成されています。
各フロアのアトリウムを囲むゾーンには来館者がゆったりと寛げるソファーやベンチが随所に数多く配置されています。
ウッドフロアでナチュラルな雰囲気とデジタルサイネージの組み合わせが何とも今風の商業施設感に溢れています。
東側もカーテンウォールを採用し、吹き抜けに燦々と陽光が降り注ぐ空間です。4階はこの木製垂れ天井と板張りのフロアに挟まれて、ウッディな空間になっています。
アトリウムに面して出店しているTHE ALLEY。屋内テラス席も設けられいますが、店内外の双方が快適な温度に保たれています。
アトリウム空間はビルの端から端まで東西方向において完全に公共空間で占められており、非常にゆったりとしたスペースとして設計されています。エスカレーターは互い違いに配置されて、回り込むような動線を描きます。
JR大阪駅ビルのノースゲートビルも中央に内部へと貫通した大アトリウム空間を採用していますが、大阪は半屋外である一方、横浜はこれをカーテンウォールで覆って屋内にしています。
従って季節を問わず、この公共空間を単なる通路動線とせず、人々が集い、滞留できる賑わいの場として提供されています。
三ノ宮新駅ビル内にもかなりの面積を公共通路とし、周辺エリアや施設との快適な回遊動線を構築する設計が施される計画ですが、単なる通過空間ではなく、人々が滞留できる仕掛けも用意する必要があるのではないかと感じました。
それは駅ビル内に人を留める事が目的ではなく、周辺との回遊性を高めながらも、その途上で一息つける空間を提供するゆとりも必要という考えです。何事もギッシリと詰め込み過ぎず、遊びがあるのが望ましいと言えます。Part2に続きます。