鯉城通りと相生通りが交わる神屋町交差点から程近い立地にあった中四国地方最大の金融機関である広島銀行本店及び同行を含むグループ会社であるひろぎんホールディングスの本社ビルの建て替えプロジェクトが21年5月に完成。新ランドマークは地上19階 地下1階 高さ94.89m 延べ面積約47,460㎡の規模です。
ファサードは水平のラインを基調とし、ルーバーを狭い間隔で配置したガラスのタワーとなっており、地方銀行本店ビルとは思えない洗練されたデザインの最新オフィスビルです。
基壇部のピロティの庇上は緑化して、今風のモダンな建物です。
低層部は街の賑わいを生み出す事を念頭に置いた造りになっており、従来の金融機関ビルとは一線を画す内容になっています。
エントランスは街に開かれた大きな開口で、道行く人が気軽に入れる、立ち寄れる事を意識して設計されており、1階は賑わい機能となる「トゥモロウスクエア」、2階に広島銀行本店営業部・総合受付を設けた空中店舗化を採用。
1階のトゥモロウスクエアの様子です。広々とした空間には木材パネルの天井と優美な曲線を描いた照明や柱等が採用され、暖かみのあるとても銀行本店の1階とは思えないインテリアが広がっています。
エントランス横には大型のデジタルサイネージが設置されており、広島で行われているイベント等の告知にも使用されているようです。またこの前はレンタルイベントスペースや収録スタジオとしても活用されています。
トゥモロウスクエアのにぎわいエリアにはカフェスペースもあり広島発祥の有名ベーカリー「アンデルセン」がカフェを出店。他にも物販店舗として、生活雑貨の「BANCART」が営業しています。ライフサポートエリアには、VRやARを駆使した生活情報の提供や行政サービスも受ける事が可能です。
銀行本店ビルの低層部をにぎわいの場に仕立てたひろぎんの懐の深さは今後の金融機関の在り方を見直すキッカケとなるのではないでしょうか。
金融機関の建物は都心の一等地に立地する事が大抵のケースですが、1階を銀行の店舗としてしまうと、平日の業務時間のみ営業し、土日祝日はその立地を殺してしまいます。ひろぎんの存在は、神戸ではかつての神戸銀行。旧居留地の三井住友銀行神戸本部ビルがこのひろぎんの本店ビルにあたりますが、三井住友銀行ビルも大きな低層部や広場を抱えるものの、一般に広く公開されている訳ではありません。以前からカフェを誘致して欲しいとずっと思っていました。
広島銀行本店ビルは紙屋町のランドマークとして、業務機能と賑わい機能を提供する新しい街中拠点として、広島都心部の活性化に貢献する大きな存在でした。
所在地 広島県広島市中区紙屋町一丁目3番1他
規模 地上19階 塔屋1階 地下1階
高さ 94.94m
敷地面積 4,452.71㎡
建築面積 3,281.96㎡
延床面積 47,877.41㎡
用途 事務所
構造 鉄骨造
設計 日建設計
施工 広島銀行新本店ビル新築工事共同企業体(竹中工務店、増岡組、鴻治組、大之木建設、山陽建設JV)
竣工 2022年3月
そのひろぎんビルの隣に立つアールの美しいガラスのオフィスビルは「広島トランヴェールビル」。紙屋町交差点に面して立地していた「広電ビル」、「広電ビル別館」、「さくら広電ビル」を集約して建て替えたプロジェクトで、広島電鉄、広電不動産、中央三井信託銀行、CMTBファシリティーズ、もみじ銀行、三井不動産が共同開発を行いました。
地下階から地上3階までは店舗、4-14階がオフィスで、延床面積は29,000平方メートル。その隣で解体中のビルはSMBC日興証券広島支店の入っていた「広島日興ビル」。建て替えが進められています。その更に隣の白亜のビルは20年に完成した「損保ジャパン日本興亜 広島紙屋町ビル」。紙屋町交差点周辺はまさに建て替えラッシュが続いています。他にも明治生命広島ビルも建て替えが計画されています。
交差点内で最大の建物はそごう広島店本館や広島バスセンターの入る巨艦ビル。そごうは近隣ビルに入居する新館の閉店を決定。本館はリニューアルし、営業を継続します。周辺の再開発や広島駅周辺の変化が著しい中、旧そごう神戸店・現神戸阪急と共に古めかしい百貨店の建物が一等地を占有する状況がまだ暫く続くようですが、老朽化からいずれほ建て替えが視野に入ってくるものと思われます。