金沢

地域探訪 -金沢① 北陸最大都市としての風格ある駅前

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人口47万人を抱える北陸地方最大の都市である金沢市。北陸新幹線の開通で俄かに人気観光都市として活況に沸いている金沢。是非とも一度、訪れてみたい都市と思っていました。短時間ではありますが、念願叶ってこの街の触りの部分を見る事が出来ました。今回はそんな古都・金沢の風格ある駅前地区をご紹介したいと思います。これから進む三宮の再整備の参考という視点で観察しました。

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抽象的な「神戸らしさ」という言葉の呪縛に捉われて明確な方向性が見出せない神戸に対して、「金沢らしさ」とは和とモダンの融合であると感じさせてくれるシンボルが兼六園口の駅前広場にあるこの鼓門。高さ13.7mある和鼓をモチーフとしたゲートは背後に広がるもてなしドームと共に金沢の新たな玄関口を形成しています。北陸新幹線の開通を見越して2005年に完成しました。これまで金沢と言えば兼六園やひがし茶屋街がイメージとして思い浮かべられる事が多かったのが、今やここが「THE 金沢」の代名詞的な役割を果たすようになっています。三宮にも「THE 神戸」的なモニュメントが必要かもしれません。

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北陸新幹線の開通に合わせて金沢駅コンコース内も大規模なリニューアルが実施されました。一昨年前から約1年を掛けて改修工事が行われたようです。

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東口広場と西口広場を結ぶ金沢のシンボルロードとして整備が行われました。改装以前の様子は全く面影がない程、見事なリニューアルが図られました。

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金沢の伝統工芸を活用して和のテイストをふんだんに取り入れつつ、明るくモダンな空間を演出。JR西日本は京都駅ビルにて和モダンの体現の実績はありましたが、金沢駅はその蓄積の応用により、京都よりも優れたコンコース空間の創出に成功しています。案内表示の視認性、色調含めて芸術性も高い完成度を誇ります。

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47万都市の玄関口を越え、大都市圏のターミナル駅のような風格と規模を兼ね揃えている印象を持ちました。乗降客数が約4万人の駅とは到底思えませんでした。勿論、自由通路兼ねているので、駅利用者のみでなく周辺施設の利用者もこのコンコースを通るのですが、広々とした空間に程よい人の往来があり、賑わいと開放感の双方を感じられるようになっています。

JR三ノ宮駅や阪急神戸三宮駅の改修にはぜひとも明確なテーマやコンセプトを決め、その体現を目指して欲しいと思います。阪神神戸三宮駅や周辺地下通路の改修には波をモチーフとした天井パネルの採用が図られました。綺麗になって大変良かったのですが、金沢のような感動を味わう程ではありませんでした。

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次は駅の外です。駅前広場の再整備に伴って、前述の鼓門と共に誕生したのがその背後に聳えるまるでアリーナのようなガラスのドーム「もてなしドーム」です。

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ドームは駅のコンコースに直結する形で建設されました。内部はガラスとアルミのフレームで組み合された巨大な屋内吹き抜け空間。荒天の多い金沢では天候に関わらず、来訪者が駅前から次の目的地に快適に移動できるよう配慮されています。

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駅前広場が完全な観光拠点として機能するように設計されており、向かって左側がバスターミナル、右側がタクシープールと分かりやすい構成になっています。

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開放感のある中央通路。三ノ宮駅も駅ビルの低層部に吹き抜けの半屋内空間を造るという選択肢も考えられます。

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タクシープール側のドームの様子です。ドームに連結して円形状の屋根が整備されています。

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バスターミナル側も同様の屋根が備わります。

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金沢には地下鉄や路面電車が存在しない為、バスが主要な公共交通手段です。金沢駅は最大のハブです。ひっきりなしにバスが発着し、バスの本数も充実しています。都心循環バスも運行しており、効率的なバス路線網が発達しています。神戸も新たな中長距離バスターミナルの新設が計画されていますが、市営バスのターミナル化はあまり議論がされていません。リムジンバスのターミナルを雲井通5丁目に移設後、ミント神戸1階のターミナルを市バス専用にする等、1ヵ所への集約化が必要です。

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ドームのある地上に加えて地下空間も構築されています。地下街ではなく、地下通路としての空間とイベント広場があります。この地下へアクセスする大階段とエスカレーターは非常に近未来的で格好良いです。

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洗練された駅構内コンコースや優れた景観と機能を持つ駅前広場で十分な風格を持つ金沢ですが、駅前には複数の高層ビルが聳えている事も金沢駅前の都市格を押し上げている要因です。これらのビルは90年代初頭に建設された複合再開発ビルで航空会社系列のシティホテルとオフィスで構成された複合ビルです。また北陸新幹線の開通によって駅前地区にはビジネスホテルの建設ラッシュに沸いています。更に今後、駅前広場に面した一等地にある老朽化した金沢都ホテルをオフィスとホテルの複合ビルに建て替える計画も浮上しており、古都の玄関口は更に進化を遂げる事になりそうです。

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金沢駅前はこれまで先に紹介した中心街に面する東口/兼六園口が表玄関としての役割を果たしてきましたが、西口/金沢港口はこれから大きく変貌を遂げる予定です。西口の駅前広場整備もごく最近完了したばかりですが、こちらも大きな空間を最大限に活用した整備が進められています。

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JR西日本は金沢駅の西口で積極的に投資開発を行っており、既存のステーションデパートを改装した上で、新規に建設した金沢駅西ビルは実質的に金沢駅ビルとして機能しています。JR傘下のビジネスホテルや駅ナカの商業施設が入居。この他にも周辺にNKビルの名称でオフィスビルやビジネスホテルと商業の複合ビルを複数建設しています。

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駅前広場を囲むように近年、地元の有力企業等が自社ビルを建設し、移転する動きも活発化しています。

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北國銀行もその一つ。2014年に新本店ビルを金沢駅前に建設・移転。金沢は全国の主要都市の中でも取り分け、リーマンショック後のオフィスビルの空室率が飛び抜けて高く、最悪期には20%を越える状態に陥りました。最近では10%を切るまで改善しましたが、他都市と比較するとまだ高止まりしています。しかし金沢駅前地区の利便性やポテンシャルに対する評価は高く、高い空室率にも関わらずオフィス需要があり、新規のオフィスビルが供給されています。

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また西口の地位を大幅に向上させる大型開発が駅前一等地で計画中です。駅前西広場に面する約7,400平方メートルの市有地にオリックスグループが地上15階建てのホテル棟と17階建てのレジデンス棟を建設。低層部で一体化され、商業施設やチャペル、屋上庭園等が整備されます。ホテル棟には神戸にも進出を仄めかすハイアットグループのセントリックが250室のホテルを開業。レジデンス棟にはサービス付き高級賃貸マンションを展開する米オークウッドがサービスアパートメントを展開。2020年の開業を目指します。

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西口に投資の軸足を移しているJR西日本ですが、最初に金沢で行った大型投資は東口です。駅前広場に面した約1ヘクタールの敷地に地上7階 延床面積60,320平方メートル、商業床面積45,846平方メートルの大型商業ビル「JR金沢駅NKビル」を建設。核テナントとしてイオン傘下のファッションビル「金沢フォーラス」を2006年に開業させました。駅ビルではありませんが、大型駅近接ビルの誕生は金沢の商業地図に大きな影響を与えました。金沢は多くの地方都市と同様に中心市街地からJR駅の間に1〜2キロの隔たりがあります。金沢でもJRが仕掛けた駅前地区VS既存中心街の流通戦争の構図が展開されています。

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これに加えてJR西日本傘下の金沢ターミナル開発は駅高架下の駅ナカ商業施設100番街を2011年に大改修。RINTOと名付けらた新施設は北陸地区初進出の人気テナントを多く集め、金沢駅地区はフォーラスと共に若い女性向けブランドの一大集積地となりました。

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実際に両施設を練り歩いてみると、全国区のブランドが目白押しでこの2施設で多くの事が事足りてしまうと感じました。駅前地区のホテルを宿泊拠点とする観光客にとっても両施設は利便性の高い強い味方です。

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政令市ではない金沢ですが、その堂々たる駅前地区の景観は三宮を遥かに凌ぐ風格を持ち合わせており、今後更にその風格に磨きを掛けていく事になりそうです。新幹線の開業は時にストロー現象によって寧ろ、地方都市を衰退に導く光景が見受けられますが、金沢にとっては今のところ、大きな飛躍をもたらすことになりました。駅前地区の急速な発展は中心市街地の衰退を促進するのが通例です。金沢も例外ではありません。中心街の商業施設から駅前地区へのテナント流出現象も起きています。次回は巻き返しを図る香林坊地区の様子をお伝えしたいと思います。



POSTED COMMENT

  1. kenkenbooboo より:

    JR金沢駅いいですね!駅前、駅ナカが洗練され、外資ホテルも進出して市政が充実しているように感じます。それに比べて我が神戸市は景気のいい話が出てきたかと思うと反対する勢力が水を掛けるイタチごっこの繰り返しでいやはや…です。

    わたしは最近JR三ノ宮駅より神戸駅を大開発すべきだと思い始めています。三ノ宮駅というのはやはり根っから周辺は商業地であり、ゴミゴミとして狭い駅構造で玄関口の立ち位置として不十分な場所だと思うんです。駅前北に湊川神社という地域を代表する神社がデンと構えていて、JR東海道線のターミナルである神戸駅こそやはり玄関口駅としてふさわしいのではないかと。まあ今さらですがね。

    で、希望を言うと京都駅が大階段、大阪駅が大屋根とか次々と大仕掛けを行っているので、JR三ノ宮駅は駅北のグリーンシャポービルまでを取り込み駅北にもビルを建設して南北ビルを跨ぐ人工地盤で駅上空に巨大デッキを作ってはどうでしょう?遊歩道や公園、噴水なども備えて阪急ビルとも繋ぐ。
    「空中楽園三ノ宮パラディッソ」などとネーミングしてみましたがどうでしょう…?

  2. 匿名 より:

    駅前がここまで開発されると逆に片町や近江町市場の衰退がやはり心配になってきますね。

  3. リョパン より:

    バスターミナルを一括化することが本当にいいことなのでしょうかね?? 逆にそれが混雑を生み出す要因にもなりかねません。中長距離バスのターミナル一括化は断然賛成ですが、市営バスについては一括化よりも分散すべきです。三宮駅周辺のあの道路で一括化なんてしてしまえばただでさえ混雑しているのを助長させかねないと思います笑

  4. 横浜市民 より:

    神戸らしさって何でしょう・・・・・・・
    難しいですね。

    まさか、駅ビルにポートタワーを持ってくる訳にもいかないし(ラスベガスパリスホテルのエッフェル党のように)・・・・(ちょっと面白いかも。)

    三ノ宮駅ビル再開発では、駅前広場?に巨大な時計塔(洋館風な外観で)を作っててっぺんに風見鶏をつけて、駅前広場の街灯はすべてガス灯にして1時間毎に汽笛を鳴らすなんてどうでしょうか?

    無様な横浜駅前では夢も何もないので、是非 神戸には日本中が参考にできるような良いものを作ってもらいたいです。

  5. kh495 より:

    金沢駅いいですね!シンボリックなものがあるとやはり違いますね
    駅前はやはり顔となりますから、こういった開発はすばらしいですね
    神戸らしさが旧居留地だけではないと思います。ポートタワーのような当時ハイカラと呼ばれてた神戸らしさだってあると思うんです

    三ノ宮ターミナルビルですが、解体後の新ビル計画は市の方ではほぼ白紙のようです。
    なんとポートライナー三宮駅に関しては、拡張・改札口新設は行っても、建替えを行うつもりはないそうです(あの位置のままで拡張ってのもどうするのか疑問ですが…)。あの駅前一等地の低利用地がそのままだそうです。驚きました。

    kenkenboobooさんのおっしゃるとおり、開発しやすい土地の残っている神戸駅をこれからの玄関口として整備するほうが未来はあるかもしれませんね…

    なにがともあれ、神戸の参考としても、観光としても金沢は一度行ってみたいとおもいました

  6. 夢想家 より:

    金沢駅は乗降客数が約4万人だからこそ、逆にあそこまで大胆にできたんでしょうね。
    あれほど待ちの望んだ三ノ宮駅ビルの建て替えが決まった喜びの余韻が冷め切らぬ前に、三ノ宮駅より神戸駅ですか?
    神戸駅の話は三ノ宮駅ビルが建て替わってからでも遅くないと思いますよ。
    神戸市、JR西には三宮に全力を傾けてほしいですからね。

  7. sirokuma より:

    駅前以外にも参考になる事。
    過日、金沢市街地をバスの車窓から眺めながら気が付いたのは、新旧・大小・ビル戸建が混在しているのに街並みに落ち着いた統一感がある事でした。暫くなぜかなと思い眺めていたのですが”屋根”でした瓦や板金等々これまた様々な顔をしているのですが、みんな頭の部分が”黒色”でした。古い家屋も瓦屋根が黒色に真新しく塗装されていました。これだけでも統一感を演出できるんだとその効果に感心した次第です。調べたわけではありませんが景観形成区域か美観地区に指定して塗装代に補助金でも付けたんでしょうね。金沢は行政と市民が一体になって街づくりをしている一旦ですね。

  8. returner より:

    金沢にはかなり以前に行った事はあるんですが駅がどうなっていたかは全く記憶がありません。また一度新幹線開通のブームが済んでから一度訪れてみたいとは思っていました。ここで見せて頂く限りかなり素晴らしい駅になっているみたいですね。
    さて、我が三宮なんですが私もkenkenboobooさん同様、駅の南北を同時にビルを建て替えて上空でつなぐ案に大賛成です。
    大阪駅の規模までとは行かないでしょうが全く違う意味での斬新さ、美しさを見せてほしいと思います。

    何はともあれ神戸市の提唱する30年先を見据えてという再開発ならばポートライナーの駅をあの低層のまま置いておくなんて事は考えたくもないですし、事実ならば非常に残念です。

  9. カン より:

    ポートライナー三宮駅はあのままですか。
    あそこをどうするかが三ノ宮再開発の大きな試金石になると言ってきましたが
    予想どおりですね。現市長はなんせやる気が有りませんから無理なんです。この街の生死を決する再開発事案を練っている時に絵本なんて書いてる場合ではない
    なんの為の都市特別再生指定地域なのかわかりません。

    とは言え愚痴っていても仕方ありませんから、どうするか。まずはこの秋に現市長にはっきりノーを突きつけることは当然として
    今のポートライナー三ノ宮駅が低利用なのを逆手に取って、空中権取引を行うのです。
    東京駅前再開発では活発に空中権が売買され、東京駅が低い代わりに周辺に高層ビルが密集する事が可能となりました。

    あの土地自体に価値があるという場合は、これも特殊ですがポートライナー三ノ宮駅上空まで、駅を覆うようにターミナルビルの建設を認めてしまって、
    駅上空に関しては新交通からJRが賃借するという形を取る。
    これでもポートライナーの駅移設なしにターミナルビルの規模拡張を図ることが可能です。

    とにかくこういった案の一つも出ないようでは現市政は終わっています。
    早期の改善を望むばかりです。

  10. 灘区民 より:

    神戸の中心駅にも関わらず大阪駅と京都駅に比べ余りにもボロくてショボい駅ビル…
    建て替えは一体いつになるのか20代の内に新しい三ノ宮駅が見たい…

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